■CX-30は世界の道にマッチするジャストサイズSUV
ーージュネーブモーターショー2019で世界初公開されたCX-30は、マツダのコンパクトSUV「CX-3」の後継モデルかと思いきや、全くのニューモデルみたいですね。ちょっと驚きでした。
岡崎:マツダはCX-30が登場した後も、CX-3は継続販売する、としている。今となっては後の祭りだけど、CX-3は「デミオ」=「マツダ2(ツー)」をベースに開発されたクルマだから、「CX-2」とネーミングしていた方が分かりやすかったかもしれないね。
新しいCX-30のボディサイズは、「CX-5」とCX-3のほぼ中間。CX-5だと大き過ぎるけど、CX-3はリアシートやラゲッジスペースが狭いと感じていた人にとって、ジャストサイズといえる。
実際、マツダのディーラーでは、CX-3を見に来たお客さんが、後席や荷室が狭いという理由から、ボディの大きなCX-5を買ったり、他社のクルマを選んだりするケースがあったみたい。そういう点でCX-30は、これまでマツダが取りこぼしていたユーザーを、確実に獲得する使命を与えられたクルマともいえるね。
ーー今回の試乗会に用意された車両のスペックをチェックしてみて、絶妙なサイズ設定だな、と感じました。
岡崎:CX-30は、全長4395mm、全幅1795mm、全高1540mmで、トヨタの「C-HR」やホンダ「ヴェゼル」といった他社の売れ筋SUVとほぼ同じサイズ。でもそれは、単に人気モデルをトレースすることで導き出された数値ではないんだ。
まず4395mmという全長は、欧州市場で多い縦列駐車へのニーズを踏まえてのもの。欧州では、フォルクスワーゲン「ゴルフ」を始めとする“Cセグメント”と呼ばれる2ボックスカーが人気だけど、これまでそうしたCセグメントカーを停められた場所へもスムーズに縦列駐車できるよう、開発陣はCX-30の全長を抑えたいと考えた。
とはいえ、ラゲッジスペースなどの広さや利便性を考えると、リアのオーバーハングを極端に短くすることは難しい。だから開発陣は、大型のベビーカーを余裕で積み込める430Lのラゲッジスペースを確保しながら、プラットフォームを共有するマツダ3よりホイールベースを70mm短くすることで、4395mmに全長を抑えることに成功している。
一方、1795mmという全幅は、狭い道やタイトな駐車場の多い日本市場の要請を踏まえたものだし、1540mmという全高も、1550mmという高さ制限が多い日本の機械式立体駐車場を考慮したもの。つまりCX-30のボディサイズは、グローバルマーケットのニーズを上手に読み解き、バランスさせた結果、導き出されたものなんだ。
ーーCX-30はマツダ3よりもホイールベースが短いんですね。となると、室内が狭いのでは? と不安になります。
岡崎:もちろん、単にホイールベースを短くしただけでは、乗る人の居住スペースは狭くなってしまう。その点、室内高にゆとりのあるCX-30は、前後方向に余裕のあるマツダ3に対し、フロアからシート座面までの高さを50mmほど高くして、よりアップライト(直立した)な姿勢で座らせるようにしている。だから、リアシートの足下を始め、室内が狭いと感じることはなかったよ。
しかも、地面からフロントシート座面までの高さを600mm前後に設定しているから、どんな人でも乗り降りがしやすいし、リアシートの幅はCX-5に匹敵するサイズが確保されている。大勢でのロングドライブも、かなりラクだと思うな。
■CX-30があるから実現したマツダ3の攻めたデザイン
ーー先行したマツダ3、特に5ドアハッチバックのファストバックは、かなり攻めたデザインが印象的でした。それに比べると、CX-30はやや無難なデザインだな、と感じました。
岡崎:マツダは、マツダ3のファストバックとセダン、そして、それらと基本構造を共有したCX-30による3台の“商品群”で、このクラスをカバーする考えみたいだね。
CX-30は、グローバルマーケットで歓迎されるサイズ設定だから、当然、セールス面でも有利に働く。しかも現在、世界的に人気絶頂にあるSUV。つまり、このクラスのマツダ車で売れ筋となるのは新しいCX-30であり、マツダ3のファストバックやセダンは、CX-30ではカバーできないニーズをフォローする役目に回る。
そういった背景や商品戦略があるから、マツダ3、中でもファストバックは、ものすごく個性的なデザインを採用できたんだと思う。ファストバックのデザインは、ハッチバックというより、もはやクーペやスペシャルティカーのようだからね。
ただしその分、マツダ3のファストバックは、これまでのようには万人ウケしにくい。だから強い個性を生かし、マツダデザインやマツダブランドのアイコン的な存在になるんだと思うな。
そうはいっても、CX-30だってかなり個性的なルックスだと思う。確かに、マツダ3のようにアクは強くないけど、プロポーションや磨き込まれた面の表情は、とても美しく感じられたよ。
■マツダ3を上回る重厚でしなやかな乗り味
ーー走りの評価も高いマツダ3と基本構造を共有するCX-30だけに、当然、走りの完成度も気になります。
岡崎:SUVはハッチバックやセダンに比べて重く、重心高が高い上に、タイヤとホイールが大きくて重量がかさむこともあり、走りにおいては不利な面が多い。しかもCX-30は、マツダ3よりホイールベースが短いから、乗り心地の面でも不利だよね。ところがCX-30の乗り心地は、評価の高いマツダ3と比べても、全く悪くなっていない。それどころか、むしろマツダ3より上質に感じられたほどで、より重厚でしなやかな乗り味だったよ。
それでいて、ハンドリングフィールも上々。ハンドルを切ったらシュッと素早く向きを変える、といった分かりやすいスポーティ感こそないけれど、ドライバーがハンドルを切れば切っただけ、正確にしかもスムーズに曲がっていくんだ。このフィーリングは、乗れば乗るほどカラダに馴染み、良さをジワジワと実感できると思うよ。
ーーCX-30はマツダ3と同じく、同社の新世代車両構造技術である“スカイアクティブ ビークル アーキテクチャー”を採用しています。後発のメリットを活かし、マツダ3より開発に時間を割くことができた点も、フットワークの好印象につながっているんでしょうね。
岡崎:そうだね。ちなみに今回、現地でドライブしたのは、欧州仕様のマイルドハイブリッドが付いた2リッターのガソリンエンジン“スカイアクティブG”と、同じく欧州仕様の1.8リッターディーゼルターボ“スカイアクティブD”の2種類。
欧州仕様のスカイアクティブGは燃費を重視したチューニングのせいか、パワフルさという点でイマイチだったな。その点では、スカイアクティブDの方が断然、印象が良かったね。でも、日本仕様のスカイアクティブGは、おそらくマツダ3と同じスペックになるだろうから、さほど不満を感じないと思うな。
そして、“HCCI(予混合圧縮着火)”という世界初の燃焼方式を実現した話題のエンジン“スカイアクティブX”も、間違いなく用意されると思う。マツダ3のスカイアクティブX仕様は、エンジン周囲をカバーで覆うフルカプセル化によって驚きの静粛性を実現しているけど、そのエンジンが好印象のフットワークを備えたCX-30に乗るというのは、かなり楽しみだよね。
(文責/&GP編集部 写真/マツダ)
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