■Androidスマホだけど、Googleアプリが使えない!?
Mate 30 Proは、カメラ性能に加えて、もうひとつ、別のことでも話題になっています。9月19日にお披露目されたMate 30 Proには、Googleのアプリが入っていなかったんです。「Gmail」も「Chrome」も「マップ」もプレインストールされておらず、「YouTube」も見当たらず…。「Playストア」も入っていないので、自分でダウンロードすることもできません。「設定」のアカウントの登録画面にも「Google」という項目は見当たらず、そもそもGoogleアカウントを設定できなくなっていました。
OSはAndroid 10をベースとする「EMUI 10」を搭載。これは、ファーウェイの従来モデルと同じで、ファーウェイ独自のUIは導入していますが、「Androidスマートフォン」と呼べる仕様です。つまり、Mate 30 Proは「Androidだけど、Googleアプリが使えない」という、ユーザーにとっては不都合な仕様になっていました。
Googleアプリが入っていないのは、米国商務省が米国企業がファーウェイに製品やサービスなどを提供することを禁止しているからです。この禁輸措置には猶予期間があり、現状、11月まで延長されたと報じされていますが、ファーウェイとしては、米国企業のサポートを受けずに製品を作ることが急務となっています。なお、アメリカがフェーウェイに制裁を加える理由は、スパイ疑惑など安全保障上の問題とされていますが、ファーウェイは疑惑を否定しています。
新たに発表されるMate 30 Proには、Androidではない新しいOSが搭載されるのでは? という噂もありましたが、Androidはグーグルだけで開発したものではなく、誰もが使えるオープンソースなので、搭載には問題なかったようです。しかし、グーグルがメーカーとライセンス契約をして提供する「Google Mobile Service(GMS)は入れられなかったということです。
■ファーウェイが注力する「HMS」とは?
Mate 30シリーズの発表会の最後に、ファーウェイは、GSMの代替として「Huawei Mobile Service(HMS)」を充実させていくことを力説しました。HMSは、昨今の米中摩擦を受けて急遽始めたサービスではありません。中国ではそもそもGoogleサービスを利用できません。そのため、中国で販売されているファーウェイのスマホはGMSは入っておらず、HMSのアプリやサービスを利用できる仕組みになっています。ファーウェイには、GSMが使えずとも、ユーザーの国・地域に合わせたサービスを提供できるという自負があるのかもしれません。
とは言っても、日本のユーザーにとって、ファーウェイのアプリマーケット「App Gallery」から入手できるアプリはまだまだ充実しているとは言えません。日本でのGoogleサービスの普及は周知の通り。iPhoneのユーザーでもGメールを使って、Googleマップを使うほどです。GSMを使えないことに不便を感じる人は少なくないでしょう。
■Mate 30 Proのグローバルでの発売は11月頃か!?
現状では、Googleのアプリを使えないMate 30 Proが、日本で発売されるかどうかは、まだわかりません。しかし、発表会に日本のメディアも招待したわけですから、現時点では「日本で売りたい」という気持ちはあるはずです。
発表会の直後にグループインタビューに参加しましたが、Mate 30 Proのグローバルでの発売は「1〜2か月後になるだろう」とことでした。発売は少し先ですが、ミュンヘンの街には、早くもMate 30 Proの広告が掲出されていました。欧州ではファーウェイのユーザーは多く、今年発売されたP30 Proも大ヒットしているようなので、Mate 30 Proを待っている人は多いでしょう。発売までにどんな動きがあるのかを見守りたいと思います。
■日本で発売されるのはSIMフリーモデル?
筆者は政治には詳しくないので、米中摩擦がどうなるかは予測できません。しかし、Mate 30 Proの日本での発売については、下記の可能性があると考えています。
1. 米中摩擦が解消されて、Googleアプリがインストールされて、キャリアモデルとSIMフリーモデルが発売
2. Googleアプリがインストールされないままで、SIMフリーモデルが発売
3. キャリアモデル、SIMフリーモデルともに発売が見送られる
理想は「1」ですが、筆者は「2」でも発売してほしいと思っています。Mate 30 Proは、Googleが使えなくても魅力的な端末ですし、カメラ性能を重視する人は満足できるはずです。スマホを2台、3台と持っているギーク層には「GSMが使えないスマホってどうなの?」と、逆に物欲を刺激をする要素もあるでしょう。Mate 30 ProはAndroid端末なので、Googleアプリは動くはずです。なにか手段があるのでは? そんな話題も広がるかもしれません。
■今後発売するスマホには、新しいOSが搭載される可能性も…
ファーウェイは、中国で8月に開催された開発者向けのイベントで「HarmonyOS」というオープンソースの独自OSを発表しています。さまざまなデバイスでの利用を想定したOSで、今後発売されるスマホに搭載される可能性も高いでしょう。
これまでにもWindows MobileやTizen、Firefox OSなど「第3のOS」として注目されたOSはありますが、広く普及するには至りませんでした。5G時代に向けて、Androidよりも、さらにオープンなプラットフォームがあってもいいのでは? 激戦のスマートフォン市場で躍進を遂げたファーウェイの新しい挑戦に期待したい気持ちもあります。