さて、Pepperくんはロボットなので、何かをさせるにはアプリが必要です。
Pepperを動かすアプリを作るには、従来「Choregraphe(コレグラフ)」というSDK(ソフトウェア開発キット)が使われていました。しかし、5月19日より新たなアプリ開発プラットフォームとして「Pepper SDK for Android Studio」のベータ版が提供されています。この試みにおける最大のポイントは、「Androidのアプリ開発者がPepper向けのロボアプリに挑戦しやすくなること」です。
ソフトバンクロボティクスによれば、ディベロッパーの数は「Choregraphe」が数千人単位であるのに対し、「Android Studio」は数十万人いるとのこと。単純化して考えても、開発にチャレンジできる人数が、100倍になる模様です。
「Android Studio」というSDKは、筆者も利用したことがありますが、Androidスマホのアプリを作る際に使われる一般的な開発ツールです。プログラムの作成はもちろん、エミュレーター(仮想のスマホ)をPC画面に表示させて、動作チェックやデバッグまで行えます。
「Pepper SDK for Android Studio」を活用する場合も同様に、PC画面に仮想のPepperを表示できます。実物のPepperが手元なくても動作チェックなどが行えるというわけ。「ちょっと挑戦してみたいかも」と思った皆さん、公式サイトをチェックですよ!
Pepperを通して人と通話できる!
さて、今回の発表会では、Androidのプラットフォームで動作するアプリの例がふたつ紹介されていました。
ひとつ目は「テレプレゼンス」です。ざっくりいうと、スマホをHMD(ヘッドマウントディスプレイ)として使いPepper経由でテレビ電話が行えるアプリ。Pepperのカメラを通して映像を見て、Pepperの耳を通して音を聞いて、ユーザーの声はPepperのマイクから発せられます。つまり、遠くから乗り移れるわけですね。
そして、HMDのデザインはなんとPepperの目になっています。これをつければ心も身体もPepperになりきれる!……かもしれません。
遠くにいてもPepperを通じて飲み会にはせ参じるとか実現しそうですね。ただし、Pepperがいる場所に限られますが。あと、HMDを付けている姿はちょっと不気味なので注意が必要です(笑)
ハンドサインでPepperを操る!
ふたつ目は「ハンドイリュージョン」です。ざっくりいうとPepperを操れるアプリ。利用時にはPepperから1mくらい離れて、ハンドサインを出しましょう。
きてます、きてます・・・。
「うごけな~い~」
「か~ら~だが~浮きそう~」
「くっ……くる……しい……、や……めて……」
と、Pepperがハンドサインに合わせていろいろリアクションしてくれます。案外楽しいです。これだけです。
一見すると単純ですが、技術面ではGoogleが提供している機械学習ライブラリの「TensorFlow(テンサーフロー)を応用しているんです。これにより、1万6000以上の手の形を認識・学習しているとのこと。
今回デモで紹介されたアプリも、Androidに対応によって可能となるごく一部の事例にすぎません。今までよりもアプリ開発のすそ野が広がれば、Pepperが活躍できる場が今よりももっと広がるかもしれません。
4年後の2020年、東京オリンピックで「やはり日本すごいな」と世界をあっと驚かせたい、と冨澤社長は語ります。進化し続けるPepperから今後も目が離せません。
(文/井上 晃)
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。
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