世界初の自動巻きクロノグラフムーブメント“エル・プリメロ”、そして現在も熱い支持を集める“デファイ”コレクションという、ブランドの代名詞というべきふたつの偉大なマスターピースが生まれた1969年。ゼニスの長い歴史において、この1969年が特別な年であることに異論を差し挟む時計ファンは、きっといないのではないでしょうか。
ふたつのプロダクトの誕生は、1960年代半ばより台頭の兆しを見せはじめたクォーツ式時計に対する、老舗マニュファクチュールとしての姿勢を表現するもの。機械式ムーブメントの存在感を体現するかのように発表されたのが、今回の復刻モデルのオリジナルである “デファイ A3642”でした。
フランス語で“銀行の金庫”や“貸金庫”を意味する“coffre-fort”の愛称で親しまれていた “デファイ A3642”ですが、その特徴は多彩な仕上げを駆使して形作られた美しいラインを持つ八角形ケースに14面ベゼルを合わせるという、大胆かつ堅牢なデザインにありました。ゲイフレアー社によってデザインされたスチール製ラダーブレスレットをはじめとする幾何学的でアーティスティックな意匠は、60年代という時代の空気を感じさせるものですが、さらに現行モデルのデザインにも通じるものがあります。
今回復刻された「デファイ リバイバル A3642」は、1969年当時の設計図に基づき、極めて正確にオリジナルを再現したもので、当時としては珍しいブラウンのグラデーションダイヤルや水平方向の溝を備えたスクエア型アワーマーカーなど個性的なディティールを備えます。
幅の広い剣型の時分針もオリジナルを忠実に再現したものですが、オリジナルの“A3642”で用いられていたトリチウムに代えて色調を似せたスーパールミノバを使用。このほかオリジナルと異なる点として、ムーブメントに50時間以上のパワーリザーブを備えた自動巻きムーブメント“エリート 670”を搭載していることと、そのムーブメントを目で見て楽しめるようケースバックがサファイアクリスタルによるシースルー仕様となっていることが挙げられますが、それ以外の要素はすべてオリジナルと同じもの。
人気コレクションの原点となる名品を、先進の機能とともに腕に巻けるなんて、なんとも贅沢。60〜70年代の雰囲気を愛する人であれば、ぜひその手に巻いてみてはいかがでしょう。
>> ZENITH
<文/&GP>
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