今や映像を中心としたAVエンタメの主役は、YouTube、Netflix、Amazonプライム・ビデオといったネットサービスです。視聴デバイスの主戦場はスマホやタブレットではあるのですが、映像サービスは世界的にリビングで視聴される割合も大きく、Amazon、Google、Appleら米ビッグテックにとって、薄型テレビへの進出は各社共通のテーマになっています。
とはいえ、薄型テレビは今なお家電量販店による価格競争が激しく、直販ストアによる販売を重視する米ビッグテックの苦手分野とされてきました。
リビング視聴に対しては、AmazonやAppleはFire TV、Apple TVといった外付けデバイスを中心に進出。Googleも、自社製テレビこそありませんが、薄型テレビメーカーにAndroid TV/Google TVという自社プラットフォームを提供し、リビングへの進出を進めてきました(外付けデバイスのChromecastも販売)。
そして今回のヤマダ/FUNAIブランドによるFire TV搭載スマートテレビは、Googleが先行している自社プラットフォーム提供型によるリビングの薄型テレビ戦線にAmazonも参戦した、と捉えるべきものになります。
Amazonは、米国では2021年9月より自社ブランド「Fire TV Omni/4-Series」を立ち上げていますが(ちなみに東芝ブランドで知られるTVS REGZAの米国法人が製品を発表済み)、日本市場参入にあたっては、第一弾製品を日本の家電量販店1位のヤマダと組みFUNAIブランドとすることでセールス面でのバックアップを得た形です。
アマゾンジャパン社長ジャスパー・チャン氏は発表会にて、ヤマダの1000以上の国内店舗、数万人に渡るセールスエンジニアの存在にたびたび言及。たしかにヤマダであれば、設置サービスと共にWi-Fi接続やAmazonアカウント開設などのサポートも提供でき、ネット通販では届きにくい消費者層への普及戦略が見えてくるなど目的はわかりやすい。Amazonとヤマダの名前が前面に出た今回の発表も、FUNAIのブランドがさほど強くないからこそ、与し易いという側面もあるのでしょう。
そしてヤマダ側は、独占販売権を持つFUNAIブランドのテレビ販売の起爆剤ともなります。そのため、双方の思惑が一致する形での協力だと考えられます。
家電販売ではライバル関係にある両社ですが、ヤマダの山田昇会長は、周りから「Amazonと組んだほうが得ですよ」とアドバイスを受け、実務者レベルで話し合いが行われた結果、「うちから(持ちかけた)」ことで協力に至ったと発表会で記者の質問に答えていました。
もちろん、Amazonのサービスがより多くの家庭に入り込んだ先には…と勘ぐりもしてしまいますが、今回の両社の記者発表では、その先のAmazonアカウント活用等の言及はほとんどなかった、ということだけは先に断っておきます。
すでに当たり前の存在になりつつある、テレビによるネット動画視聴。そして最有力デバイスであるFire TVシリーズの視聴体験をテレビ一体型で得られるのであれば、消費者にとって魅力なデバイスとして映ることは間違いありません。ヤマダのFire TV搭載テレビ国内発売によって、Amazonによるリビング薄型テレビ攻略が、日本でも加速していくことになりそうです。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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