■CFRTP材の採用で30gという超軽量を実現
「ヘキサステーク」の設計・開発を手掛けたのは、ダートフリーク開発グループの水野陽介さん。自身でもキャンプを楽しんでいる経験から、超軽量なペグを作り上げました。
素材として用いられるのは、バイク用のパーツでは馴染みのあるCFRTP材。熱可塑性樹脂にカーボンファイバーを複合させた強化プラスチックで、樹脂の中にリアルな炭素繊維が複合されています。この素材を用いることで、1本30gという圧倒的な軽さを実現させました。
ただ、テントやタープを支えるために使うペグは、あまり軽いと抜けやすいという欠点もあります。そのために「ヘキサステーク」は、長短2本のペグを一体化させたダブルステークと呼ばれる構造を採用し、2本足で踏ん張るような作りとすることで安定性を確保。さらに断面形状を十字形とすることで摩擦抵抗を増やし、その欠点をカバーしています。
「一般的にペグは長い方が安心ではありますが、かさばるし重量も重くなり、地面に打ち込むためには多くの回数叩く必要があります。また、回転したり動いてしまうと土と隙間ができ抜けやすくなりますが、『ヘキサステーク』は短く軽い割に、ダブルステーク構造で回転しにくく抜けにくい作りにできました。また、金属製に比べて叩く音が小さいというメリットもあります」(水野さん)
■携帯に便利なスタッキング機能も実現
もうひとつ「ヘキサステーク」の革新的な点は、複数のペグを重ねて携帯できるスタッキング機能を備えていること。これは「自転車用のタイヤレバーからヒントを得た」(水野さん)とのことで、ペグ同士をくっつけて持ち歩けるので携帯性に優れ、バッグの中でバラバラになってしまうこともありません。
「あと、これは実際に完成品を使ってみて気づいたことですが、使ったペグを全部スタッキングさせてまとめてゴシゴシ洗えます。十字断面は泥が付きやすい欠点がありますが、まとめて洗いやすいのでその欠点をカバーしてくれました」(水野さん)
CFRTP材を使用しているので、洗いっぱなしにしても錆びる心配がないのもメリットです。
■エマージェンシー工具としても使える
製作者の遊び心を感じるのは、ロープやカラビナを引っ掛けるホールの部分が六角形になっていて、10mmのボルトやナットを回すレンチとして使用できること。ホールの横には8mmのレンチも付いているので、バイクによく使われているボルトを回せます。
「エマージェンシー用ではありますが、リアルに工具として使えます」と水野さんが話すように、飾りではない精度と品質を確保しています。掛けられるトルクは10mmが15Nm、8mmは10Nmまでに限られますが、ツーリング先で工具を忘れてしまったような場面で、緩んでしまったボルトやナットを締められます。
特殊な素材を採用していることと、形状的にもかなり複雑なデザインとなっているため、生産できる工場を探すのにはかなり苦労したとのこと。海外では見つけることができなかったため、国内の知識も経験も豊富な工場での生産となったとか。今の時代に国産というのも、使う側としてはグッとくるポイントです。
「テントや焚火台といった主役級のギアでなく、テントやタープを支える地味な道具ではありますが、キャンプする人なら誰もが使ったことがあるのがペグだと思います。主役のようなデザインと機能美を追求したので、無数に種類があるペグですが、その中でも埋もれない存在感と完成度になっていると思います」(水野さん)
実物を手にとってみても、このペグを使うためだけにキャンプに出かけたくなるような完成度。最近は、バイクだけでなく自転車でキャンプに出かける“バイクパッキング”と呼ばれるスタイルも流行っていますが、そうした軽さや携帯性にこだわる人にぜひ使ってもらいたいアイテムです。
MIGRATRAIL「ヘキサステーク」
カラー:ブラック
サイズ:全長190mm×幅40mm×厚さ13.5mm
重量:1本30g
価格:858円(1本)、3300円(4本セット)
>> MIGRATRAIL
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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