iPodやウォークマンで音楽を楽しんでいる人にとってはバカバカしいと感じてしまいそうなほどの高価格だが、発表会が開催されたポータブルオーディオ展示会「春のヘッドフォン祭2015」(フジヤエービック主催)では試聴のための整理券が早々になくなるほどの注目度となっていた。
AK380の大きな進化ポイントは、プレーヤーの“頭脳”とも言えるDACチップ(デジタル・アナログ・コンバーター:デジタル信号を音声に変換するチップのこと)に旭化成エレクトロニクス製の「AK4490」を採用したことと、“心臓”とも言えるクロックの精度を大幅に向上したことにある。
筆者もヘッドフォン祭の会場で実際に試聴してみた。メタリカの「Enter Sandman」ではバスドラムやベースの芯の強さが感じられた。腹の底に響くような重低音を力強くドライブしながら、同時にディテールを細やかに描き出す解像感を両立していることに驚きを感じた。
マイケル・ジャクソンの「スリラー」のイントロで古びた扉が開く音、風や雷の音、犬の遠吠えなどがリアルに耳に飛び込んできて、PV(プロモーションビデオ)の舞台に入り込んでいるような感覚すらあった。AK240もかなりの音質を実現していたことは間違いないが、AK380はさらに次元を超えた高音質という印象だった。
AK380は充電が可能で外部音声出力(プロ用や本格オーディオ機器に搭載されているXLR端子も搭載)を備えるクレードルや、音声出力をパワーアップするアナログアンプ、パソコンなしでCDのリッピングが可能なCDプレーヤーなどの周辺機器も登場する予定となっている(それぞれ販売時期、価格は未定)。日本での販売価格が40数万円なのか50万円を超えるのかはわからないが、「外出先でも超高音質で音楽を楽しみたい」という人は検討の価値があるだろう。
(文/安蔵靖志)
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