■望遠カメラはないままだが、綺麗な2倍ズームができるように
続いて、背面カメラについて。
iPhoneシリーズのスタンダードモデルでは、メインカメラ+超広角カメラのデュアルカメラシステムが長く採用されてきました。iPhone 15でもこの構成は変わりません。
一方で、メインカメラの解像度が、従来の12MP(1200万画素)から48MP(4800万画素)へと4倍にUPしたのは大きなトピックです。これにより、48MPや24MPといった高解像度での静止画撮影が可能になりました。
また、単純に2倍のデジタルズームをしても、1/4の画素数の1200万画素相当で撮影できることも見逃せません。カメラアプリ上のUIでも、「2倍」のズームが選択できるようになっており、物理的な望遠カメラこそ備えないものの、ユーザーの体験としては、劣化の少ない2倍ズームが可能になったような感覚になるでしょう。iPhone 11〜13のユーザーならば、これだけでも機種変更のモチベーションになるかもしれません。
また、2倍の望遠カメラを備えていた従来の「iPhone 11 Pro」や「iPhone 12 Pro」あたりを使っていた人にとっても、「iPhone 15」ならスタンダードモデルにしてもさほど困らないはずです。価格が高騰している昨今、選択肢が広がるのは嬉しいポイントだと言えます。
ちなみに、撮影関連機能としては、ポートレートモードを選択せずに撮った写真にも、深度情報が記録されて、撮影後にポートレートモードを適用できるようになることに注目です。また、「スマートHDR」のナンバリングも2年ぶりに変わって「スマートHDR 5」になりました。ただし、スマートHDRについては、Apple Eventでの解説や、プレスリリース上の説明では、従来世代から具体的にどのくらいの改良が施されているのかは分かりませんでした。
■USB-Cへの変更と、世代によってはバッテリー持ちもUP
そして、iPhone 15では、Lightningコネクタではなく、USB-C(USB Type-C)が採用されました。この変化自体については、技術が進歩したというよりは、EUでの法規制によって、スマートフォンを含むポータブル電子デバイスが、USB Type-Cを備えないと将来的にEUで販売できなってしまうという国際情勢が大きく影響しています。
なお、「USB Type-C」はコネクタの形状を表す規格名称ですので、対応するデータ転送速度などは、製品によって異なる点に注意が必要。iPhone 15/15 Plusと、iPhone 15 Pro/Pro Maxでも、データ転送速度が大きく異なります。
「iPhone 15」は、データ転送の仕様は「USB 2」(※おそらくUSB 2.0のこと)で、最大480Mbpsまでしか対応しません(有線接続で外部機器に映像を出力するための規格である「DisplayPort」はサポート)。この数値は、従来のLightningコネクタのそれと変わっていません。そのため、USB Type-Cに変わったからといって外部機器とのデータ転送速度が速くなったわけではない点に注意が必要です。
なお、こうした状況は、iPhone 15シリーズでは、USB-Cポートの搭載を考慮していない世代である「A16 Bionic」チップが搭載されていることが影響していると思われます。
一方、上位のiPhone 15 Proシリーズでは、新世代の「A17 Pro」チップを搭載しており、データ転送の規格も「USB 3」(※おそらくUSB 3.0 Gen2のこと)をサポート。最大転送速度は10Gbpsをサポートしています。
もし、撮影機器としてiPhoneをフル活用し、AirDropではなく、有線接続でデータをMacなどへ出力したいような人ならば、この点を踏まえて「iPhone 15 Pro」シリーズを選んだ方がいいでしょう。あるいは、来年のスタンダードモデルがUSB 3をサポートすることを願って、1世代見送るのも英断かもしれません。
なお、バッテリー持ちについては、iPhone 14から15への変化はさほどありません。しかし、iPhone 11や12から久しぶりに機種変更をする場合には、バッテリー持ちの最大時間が数時間伸びます。コネクタ形状よりも、ユーザーにとってのメリットが大きいポイントかもしれません。
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一見しただけでは、「iPhone 15/15 Plus」には地味なアップデートが多いようにも思えるかもしれません。しかし、ユーザー視点では、「屋外でも画面が見えやすく」「インカメラ周りのUIが変更」「望遠2倍撮影が可能」「ポートレートモード切り替えの面倒がなくなる」「コネクタがUSB-Cに」など、体験が改善される部分は案外多くありそうです。
ちなみに、iPhone 15/15 Plusはエッジの加工が変わり、背面素材にも新たに「カラーインフューズドガラス」が採用されました。これは直訳すると「色を注入したガラス」といったイメージ。金属イオンを素材に混ぜ込んで、彩度を正確に制御する手法が取られているようです。画像を見る限り、淡めの色合いが新鮮で、カラーバリエーションを選ぶのが楽しくなりそうですね。
<文/井上 晃>
井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。X(旧Twitter)
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