1. ディスプレイの違い
まず、ディスプレイの差について確認していきましょう。今年は、スタンダードモデルの「iPhone 15/15 Plus」も、Dynamic Islandを搭載したり、ディスプレイの輝度がProシリーズと同等に上がっていたりするので、新しいUIや直射日光下での視認性の良さなどについては、Proシリーズだけのメリットではなくなりました。この辺りの詳細は既報にてまとめています。
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一方で、Proシリーズだけが備える仕様としては、「常時表示ディスプレイ」や「最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つProMotionテクノロジー」の2点が残っています。
つまり、iOS 17で追加される「スタンバイモード」を使いたい場合には、iPhone 15 Pro/Pro Maxを選んでおいた方が良いでしょう。
スタンバイモードとは、端末を横向きで充電する際に表示されるモードのことです。さまざまなデザインやウィジェットを駆使し、置き時計や卓上カレンダー、フォトフレームのような運用が可能になります。常時表示ディスプレイ非対応のモデルだと、時間経過で画面が消えてしまうので、この機能があっても活かしづらいのです。
また、最大120Hzのリフレッシュレート(画面表示が更新される頻度)に対応しているため、スクロールをしながら文字を読んだり、ゲームプレイ画面をより鮮明に表示させるうえで、Proシリーズのディスプレイにメリットがあります。
2. カメラの違い
続いて、カメラの仕様と機能の差についてチェックします。
スタンダードモデルの「iPhone 15/15 Plus」では、メインカメラが48MPに向上したことで、望遠カメラを備えずとも、12MP相当の綺麗な2倍ズームが可能になりました。ゆえに、“2倍前後のズームまで”ならば、スタンダードモデルでもProモデルでも体験はさほど変わりません。
一方で、iPhone 15 Proは「3倍」、iPhone 15 Pro Maxは「5倍」の望遠カメラを備えています。たとえば、散歩中に見つけた猫や野鳥を遠くから撮影するならば、こうした望遠カメラがあった方が楽しめるでしょう。
また、静止画撮影機能については、「ナイトモードのポートレート」「マクロ写真撮影」「Apple ProRAW」が使えるのがiPhone 15 Pro/Pro Maxのメリットです。動画撮影に関しても、iPhone 15 Pro/Pro Maxなら「マクロビデオ撮影」が利用できます。これらは従来のProモデルでもサポートされている機能なので、今世代で新しく追加されたものではありませんが、スタンダードモデルとの差として覚えてきましょう。
ちなみに、動画撮影機能に関しては、iPhone 15 Pro/Pro Maxの方が、文字通りプロユースな機能をサポートしています。関連するキーワードは3つです。
(A)Logビデオ撮影
(B)アカデミーカラーエンコーディングシステム
(C)最大4K・60fpsのProResビデオ撮影
(A)Logビデオ撮影は、Logエンコード方式での撮影を意味します。一般ユーザーには、プロのカメラマンが静止画のデジタル現像をする前提で「RAW」を使うように、動画ではこの「Log」が使われることがあります。iPhone 15 Pro/Pro Maxは、これに新たに対応したということです。
(B)アカデミーカラーエンコーディングシステム(ACES)は、動画におけるカラースペース調整のワークフローで活躍する規格です。映像作品において、さまざまな入力ソースから素材を合わせると、想定しているカラースペースが異なることで、イメージ通りの出来にならないことがあります。ACESの色空間を使って撮影することで、こうした問題を生じないようにできます。
(C)最大4K・60fpsのProResビデオ撮影については、「iPhone 13 Pro」から対応している機能ですが、iPhone 15 Pro/Pro Maxでは、新たに外部ストレージに直接録画することもできるようになりました。
ただし、この辺りは、“映像作品を撮るためにiPhoneのカメラを撮影機材として使う”というProシリーズらしさの増した機能なので、一部のクリエーターを除き、大部分のユーザーは意識しなくて良い部分だと思います。
3. USB-Cのデータ転送速度
「iPhone 15/15 Plus」も「iPhone 15 Pro/Pro Max」も、すべてLightningが廃止され、USB Type-C(USB-C)コネクタが搭載されました。ただし、データ転送の仕様については、スタンダードモデルとProシリーズで大きな差があります。
具体的には、スタンダードモデルの2機種は、従来のLightningコネクタと同じ「USB 2(※おそらくUSB 2.0のこと)」の仕様であり、Display Port(外部機器への映像出力に必要な伝送規格)には対応するものの、データ転送速度は最大480Mbpsに制限されています。ちなみに「USB 2.0」は2000年に策定されたかなり古い規格ですので、コネクタ形状はUSB-Cに変わったとはいえ、少々がっかり感もあります。
一方で、iPhone 15 ProのUSB Type-Cは、しっかりと「USB 3(※おそらくUSB 3.2 Gen2のこと)」をサポートします。データ転送速度は最大10Gbps。理論的には、スタンダードモデルの20倍以上の速さでデータ転送が行えることになります。大雑把な概算ですが、iPhone 15だと約5分(300秒)かかる有線でのデータ転送が、iPhone 15 Proで20倍のスピードになれば約15秒で済むわけです。
もしiPhoneのカメラで撮影した大容量の動画データを、Macや外部ストレージ接続へ取り出す機会があるならば、iPhone 15 Proを選んでおくことを強く勧めます。
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iPhone 15 ProのApple Storeオンラインでの価格は、最小構成の128GBモデルで15万9800円。少し背伸びして256GBモデルを選ぶと17万4800円もします。iPhone 15の価格から+3万5000円を支払って、上位モデルを選ぶべきかどうかは、本稿で紹介したような、
(1)常時表示ディスプレイ & 120Hz対応
(2)3 or 5倍望遠カメラ/空間ビデオ撮影/プロ向けの撮影機能
(3)USB-Cコネクタが対応するデータ転送速度
などを考えながら検討すると良いでしょう。
ちなみに、ここ数年のProシリーズといえば、「端末が重い」ことがネックになっていました。しかし、iPhone 15 Proでは、筐体素材としてステンレススチールではなくチタニウムが採用されており、かなり軽量化されています。質量でいえば、かつての「iPhone 11 Pro」や「iPhone 12 Pro」と同等です。
iPhone 15 …171g
iPhone 15 Max …201g
iPhone 15 Pro …187g
iPhone 15 Pro Max …221g
iPhone 14 Pro …206g
iPhone 13 Pro …203g
iPhone 12 Pro …187g
iPhone 11 Pro …187g
iPhone 14 …172g
iPhone 13 …173g
iPhone 12 …162g
iPhone 11 …194g
これまで「Proにして重くなるのはちょっと嫌だな」と思っていた人も、今回は安心して選べそうですよ。
<文/井上 晃>
井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。X(旧Twitter)
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