歌舞伎、日本舞踊、数寄屋造りとまぁ何でも良いが、日本古来の伝統文化は残したい、受け継いでいきたいと、おそらく多くの人が思っているだろう。
だが、実際は減少する一方である。欧米諸国に追いつけ追い越せとガムシャラに駆け抜けてきた現代の日本人にとって、合理的でないものを続けることは難しく、伝統文化を生活の一部に組み込むことができない。
筆者も年越しくらいは着物で、と数年頑張ったことがあるが、やはり手間が面倒で続かなかった。下駄でコンクリートの道路を長時間歩くものじゃないな、と痛む足をさすりながら思ったものである。よほど思い入れのある方なら続けられるだろうが、「風情があって、ちょっといいじゃない」くらいの意気込みでは、スニーカーとジーンズの気楽さを手放すことはできなかった。厳しい条例を施行したところで、景観の悪化を食い止めることが出来ずにいる京都の街を見ても、その難しさがうかがい知れる。
こういうときは、歩み寄りが必要である。この場合、伝統と合理性が半歩ずつ歩み寄るわけだが、その一例がこのセパレート浴衣。見た目はまったくの浴衣。そこに疑いを持つ人間はいないはずだ。だが、上下で分割したことにより極めて脱ぎ着が簡単に。要はシャツと巻きスカートである。普段着の洋服と変わらない感覚で着ることができるのだ。
これならば、祭りのときに気張って着るだけでなく、普段使いも可能ではないだろうか。元々の形とは少し違うかもしれないが、生活の一部に組み込みやすいというメリットは大きい。一般大衆に根付いてこその文化である。そして、これがきっかけとなり、従来の浴衣の普及率もアップすれば言うことなしだ。
チャイハネ
セパレート浴衣
7344円〜(メンズ)
7127円〜(レディース)
(文/太田史郎)
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