トースターというと「今さらなぜトースター?」「進化しようがない製品じゃないの?」と思われる方も多いかもしれない。筆者もそんな予断を持っていた。しかし実際は、トースターというカテゴリーを“リデザイン”したような驚きのある製品に仕上がっていた。
BALMUDA The Toasterは上下のヒーターに加えてスチームを使うことで、外はパリッと、中はしっとりとしたトーストを焼き上げることができる。付属の小型カップで本体上部に5ccの水を入れ、モードと時間をセットするだけで自動的に焼き上げてくれる。
「トースト」モードの他に「チーズトースト」「フランスパン」「クロワッサン」の自動モードを搭載。通常のトースターでクロワッサンやフランスパンを焼くと上だけが真っ黒になってしまうことが多いが、スチームと秒単位での温度制御によってこれを解決した。
4つの自動モードのほか、通常のトースターとして使える300W、600W、1300Wの「クラシック」モードも搭載している。こちらのモードは水を入れてもスチーム機能は動作しないとのことだ。
発表会場で実際に試食してみたが、スチームと温度制御の力をハッキリと感じることができた。細かくヒーターのオン・オフを繰り返すため、庫内が明るくなったり暗くなったりするのが今までのトースターにはない挙動だ。
スチームによって扉の窓が最初に少し曇るが、このときにパンに薄い水分の膜が付くという。これがパンの内部に水分や油脂成分を閉じ込めることで、「中はしっとり」を実現しているとのことだ。トーストモードなどでは、最終的に火力を上げることで、「外はパリッと」仕上げるようになっている。
税抜2万2900円という価格は決して安くはないが、ちょっとした調理機能を持つトースターであれば8000円や1万円といったモデルも少なくない。毎朝のパンをよりおいしく食べられるのであれば、決して高くはないと感じた。
バルミューダ代表取締役社長の寺尾玄氏は開発の経緯について、毎朝トーストを食べながら「このパンはもっと絶対においしくなる」と感じていたからだと語っていた。「なぜなら、今も忘れられない、感動するほどのパンを食べたことがあったから」だという。それは高校を中退して放浪の旅に出たスペイン・マラガの街で食べた焼きたての小さな丸いパンだったとのことだった。
筆者も若い頃にフランス・パリで食べた何の変哲もない「クロック・ムッシュー」(食パンにハムとチーズを載せただけのもの)の味が衝撃的で、未だにその味を超えるパンに出会っていない。BALMUDA The Toasterの「チーズトースト」モードなら、もしかして味わえるのではないか。そんな期待を胸に抱いた発表会だった。
(文/安蔵靖志)
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