■上品なガラスの光沢感は波立つ水面のごとし
「HTC U」は、2017年からグローバルで展開されているシリーズ。1月には「HTC U Ultra」および「HTC U Play」が発表されています。今回発表された「HTC U11」は、同シリーズの最新機種です。
OSはAndroid 7.1.1を搭載。プロセッサには、最新のSnapdragon 835(64bitオクタコア、最大2.45GHz)を内臓します。メモリはグローバルでは4GB RAM/64GB ROMモデルと、6GB RAM/128GB ROMモデルの2種類を展開。外部メモリはmicroSDXC(最大2TB)に対応します。
なお、日本向けには前者のみが提供される見込みで、外部ストレージは最大200GBまでのmicroSDXCをサポートする模様です。
国内向けの従来機「HTC 10」などは、金属質な筐体が特徴的でした。しかし、HTC U11では、ガラス背面を採用。上下左右の側面が緩やかにラウンドし、角のあるエッジは存在しません。両面ガラスとフレームがシームレスに曲面を形成しているので、手のひらにしっとりと馴染みます。
グローバルで公開されたカラーラインナップは5色。「Brilliant Black(ブリリアント ブラック)」「Sapphire Blue(サファイア ブルー)」「Ice White(アイス ホワイト)」「Solar Red(ソーラー レッド)」「Amazing Silver(アメイジング シルバー)」を展開します。日本市場向けにはソーラーレッド以外の4色が投入される見込みです。
同社が「Liquid Surface(リキッドサーフェス)」と表現するデザインは非常に神秘的。複数層の構造により、角度によって色の見え方が変化します。水滴や水面を透過・反射する光のように、陰影が揺らめきます。静止画では分かりづらいかもしれませんが、優しい光沢と色合いは、非常に上品な仕上がりです。
こうした色味は、身の回りにある自然な色合いを再現しているとのこと。例えばアイスホワイトは角度によって、まるで氷河のような青緑に反射します。
■ギュッと握る操作はシンプルかつ斬新な体験
HTC U11の左右側面下部には、感圧センサーを搭載。端末を持った状態でギュッと握ると、アプリの素早い起動や操作が行えます。同社はこの機能を「Edge Sense(エッジセンス)」と表現し、握る操作はグローバル向けには「Squeeze(スクイーズ)」と紹介されました。
端末を短くギュッと握ると”ブルっ”とした反応があります。手を緩めたタイミングでカメラアプリが起動。カメラアプリが起動した状態でもう一度握れば、シャッターが切れます。
実際にスクイーズ操作でカメラを撮影してみると、握ってからシャッターが切れるまでに若干のラグがあります。そのため、握る動作によってカメラがぶれるということはありません。
また、長押しならぬ「長握り」にも対応しています。2回振動するので、その後手を緩めれば、背面・前面カメラが切り替えられます。
例えば、雨粒がディスプレイを濡らし、操作しづらいとき。ウィンタースポーツをしていて手袋をしているとき。画面操作を一切せずにカメラを起動し、撮影できるというわけです。
最初触った瞬間こそ新しい操作感に戸惑いましたが、握るという動作は非常に自然なもの。すぐに操作には慣れましたし、使い勝手は非常に良いと感じました。
ちなみに、スクイーズを活用すれば、グーグルの音声入力も起動できます。いちいち「OK Google」と話しかける必要がなくなるわけです。そのほか、7月にβ版がリリースされる予定の専用アプリケーションをPlayストアからインストールすれば、任意のアプリ起動を割り当てられるようになるとのこと。「カレンダー」「Facebook」「Spotify」など、頻繁に使うアプリを素早く起動できるようにカスタマイズ可能です。
■カメラは光学手ぶれ補正に対応しHDR撮影も高性能化
背面カメラはデュアルピクセル方式の1200万画素。F値は1.7で、明るい撮影が可能です。新たに5軸の光学手ぶれ補正をサポートしているので、暗所で手持ち撮影を行った際にも、ノイズやブレの少ない撮影が期待できそうです。
同機のカメラは「DxOMark Mobile」(画像処理ソフト・エンジンを作成するDxOによるスコア)ではGoogle Pixelの89を超える最高スコア90を獲得しています。ちなみにiPhone 7は86、Galaxy S8は88、HUAWEI P10は87。カメラの総合力はかなり良いと言えそうです。
また、4つのマイクを搭載しており、録音機能も秀逸。動画は、周囲のサウンドを方向を反映して録音できる「3D Audio」撮影が可能で、ズームに合わせて録音も被写体にフォーカスする「Acoustic Focus」も利用できます。
ちなみに3D オーディオで撮影した動画は、ステレオサウンドのフォーマットで記録されるので、ほかの端末やパソコンで再生しても楽しめるそうです。
■AI機能でユーザーごとに最適な提案を
今年のトレンドとも言えるAI機能も搭載されます。HTCが独自に開発した「HTC Sense Companion」では、利用者のスタイルを学習しつつ、ユーザーをサポート。例えば、バッテリーの最適化を図る「Boost+」機能や、付近が渋滞している際に迂回路でナビゲートする機能、行き先の天気に合わせた服装の提案する機能などが利用可能となります。
こちらは、タッチアンドトライ会場ではあまり検証できませんでしたので、今後のレポートも期待したいところ。
なお、「Googleアシスタント」や「Amazon Alexa」も利用可能になっています。両者が利用できる端末は同機が初めてとのこと。ただし、両方とも執筆時点において国内では未配信のサービスです。Alexaについては、今後の対応予定が明かされたのはアメリカ、イギリス、ドイツの3国となっています。
■サウンドと同梱イヤホンにも注目
またチャンバーを内蔵することで、画面全体から臨場感のあるサウンドが再生されます。従来のようなフロントデュアルスピーカーは搭載されていません。
同機専用のハイレゾ対応イヤホン「HTC USonic earbuds」も同梱されます。イヤホンを耳に装着すると、ソナーの仕組みを使って、耳の構造を検出。聴こえやすくなる音域をメインにすることで、個人にあわせたチューニングを自動で済ませてくれます。なお、接続はUSB Type-C経由。イヤホンにはボタンが一つ付いていて、1度押しで再生・停止のアクションが可能です。
音質の変化については、やや低音域が強くなり、全体的に迫力がました印象を受けました。
ちなみに従来機の「HTC 10」でも近い機能は搭載されていたものの、手動でカスタマイズする仕様でした。全自動にも対応したことで、より多くのユーザーが手軽に恩恵を受けられるようになっています。
なお、同イヤホンのDACはイヤホン側のアダプター部分に存在するとのことで、コネクタはUSB Type-Cですが、他機種で使用することは想定されていません。一方で、3.5mmの出力端子に接続できるUSB Type-C変換アダプターが同梱品として用意されています。お気に入りのヘッドホンがある場合には、こちらを利用すればOKです。
■その他のスペック
HTC U11のバッテリーは3000mAhで、連続通話時間は3G/4Gで最大24.5時間。連続待受時間は約14日間。急速充電(QUICK Charge 3.0)もサポートします。防水・防塵性能はIP67相当。ネットワークはCAT.16をサポートし、最大1Gbpsの通信が可能。グローバルモデルはデュアルSIM仕様ですが、国内向けはシングルSIMに。国内向けにはFeliCaも搭載するので、おサイフケータイもサポートするようです。
直販価格は台湾ドルで定価2万2900ドル(64GBの場合)〜。日本円だと8万6000円相当となります。詳細な発売スケジュールは明かされていませんが、発表会のアナウンスによれば、来週から6月上旬にかけてディストリビューション(流通)は完了するとのことでした。
HTCの最新フラグシップは、デザイン・機能ともにチャレンジングな一台となりました。「Liquid Surface」や「Edge Sense」、「Acoustic Focus」など、記事では100%を伝えきれない面白い要素が満載です。特に背面のデザインには、HTCならではの洗練さを感じました。気になる人は、国内市場に登場した際に、ぜひ一度生で触れてみてください。
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(取材・文/井上 晃)
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。
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