2008年の発売から10年を迎え、すっかりお馴染みとなったパナソニックの乾電池「エボルタ」シリーズ。その名を世に知らしめたのは、毎年行われる過酷な挑戦“エボルタチャレンジ”による効果も大きいのではないでしょうか。そんなエボルタですが、昨年にはアルカリ乾電池で世界No.1(※1)長もちという新製品「エボルタNEO」がデビュー。そのパフォーマンスを試すエボルタNEOチャレンジも、ますます過酷さを増しています。
エボルタチャレンジでは、これまでもグランドキャニオンの断崖絶壁登頂や東海道五十三次の走破、有人飛行チャレンジ、そして昨年のフィヨルド1000m登頂と、さまざまな難関に挑んできましたが、今年の舞台に選ばれたのは、なんと『海』。昨年に続き、乾電池を動力源とする小さなロボット「エボルタNEOくん」が挑戦者となり、遠泳に挑むことになったのです。
よくぞ毎年、乾電池にとってツラい環境が思い浮かぶものだな…、というのはさておき、エボルタNEOくんが泳ぐことになったのは瀬戸内海。コースは広島県廿日市市の宮島口から、宮島にある世界文化遺産、厳島神社の大鳥居までの約2.5kmとなりました。
■チャレンジの詳細とエボルタNEOくんのご紹介
今回の遠泳チャレンジは「乾電池を動力にしたロボットが泳いだ世界最長距離」への挑戦となっており、見事に泳ぎきればギネス世界記録™に認定されるというもの。実は、これまで同種のチャレンジが行われたことがなく、初のチャレンジ=ギネス世界記録™への挑戦という、なんともスケールの大きな話でもあるのです。
もちろん、チャレンジにあたってはギネスワールドレコードによるルールが定められているのですが、そのルールの概要はというと…
- 市販の単3形電池を動力とするロボットが泳ぐ最長距離の記録である
- ロボットは人体または海洋生物のいずれかを模して作られた体型の、水中で腕、ボディ、ヒレを動かすことによって推進するもの。スクリューで推進することは認められない。
- 動力は単3形電池のみ。挑戦では単3形電池を3本までロボットに装着することができる。挑戦中の再充電、交換はできない。
- 挑戦中にロボットの部品交換や修理はできない。
などなど、じつに詳細に定められています。
一方、挑戦者となる「エボルタNEOくん」は、世界的ロボットクリエーター高橋智隆さんによって生み出されたロボットで、その身長はわずか約17cm。
チャレンジは2本の乾電池を背負い、各部に防水処理が施された“スイムタイプ”が行います。全長約35cmのサーフボードに乗って、パドリングで進む仕様です。人間サイズに換算するならば、身長170cmの人が25kmを泳ぐようなものですから、これはなかなか過酷といえるのではないでしょうか。しかも動力源は単3形乾電池たったの2本だけなのです。
また、2018年はエボルタ誕生から10周年、そしてパナソニック創業100周年という記念すべき年ということもあり、エボルタNEOくんは日ごろのご愛顧に感謝して、なんと大阪府守口市の乾電池工場からチャレンジスタート地点の宮島口までの約400kmを自力で旅をすることに…。
9月25日に出発したエボルタNEOくんは、44日間を掛けて無事に歩き抜いており、その頑張り屋さんぶりには、遠泳チャレンジ前から胸を打たれたというファンも少なくなかったようです。
■いよいよ本番。いざ、快晴にして波穏やかな瀬戸内海へ!
迎えたチャレンジ当日。11月10日の広島は、秋晴れと呼ぶに相応しい見事な青空。キラキラと朝日を映す海面も穏やかで、まさにチャレンジ日和というところ。予定されたスタート時刻である9時を前に、関係者だけでなく、応援団も続々と集まり始めます。
関係者の挨拶、生みの親である高橋智隆さんによる挨拶に続き、ギネス世界記録™公式認定員による説明が行われると、早々にチャレンジへと移ります。
ちなみに、海上では自力で進むエボルタNEOくんですが、方向制御に赤外線誘導方式を採用しており、伴走するカヤックには高橋智隆さんが乗り込みます。
準備も順調に進み、迎えた9:00。
カウントダウンとともに、高橋さんの手から離れ、いよいよ海面へ! 波打ち際の小さな波に翻弄されなつつも、順調に泳ぎ始めました。
「天気もいいし、沖の波も穏やか。これは難なく記録達成かな…」 じわりじわりと、しかし確実に沖へと進んでゆくエボルタNEOくんを見送りつつ、誰もがそのように思ったことでしょう。
しかし、10分ほどで、思いもよらぬアクシデントが発生!
“小さな藻が絡まったようです…” そんな報告が陸で見送る応援団やメディアのもとに届きました。そして、程なくすると高橋さんとエボルタNEOくんは再び宮島口に戻ってきのです。
たしかに、人間から見れば小さな藻かもしれませんが、身長約17cmのエボルタNEOくんにしてみれば、大きな海草なのです。穏やかとはいえ、海はやっぱり大自然。一筋縄では行かないんだな、と感じた瞬間です。
陸上へと戻った高橋さんとチャレンジチームはすぐさま海草を除去。対策を施して、再び海へと漕ぎ出します。そして9:44、エボルタNEOくんは再スタートを切りました。
先導するカヤックに乗る高橋さんの右手は海面の藻をすくう網が握られており、エボルタNEOくんの行く手にある、小さな藻やゴミを丁寧に取り除きながら進んで行きます。そんな様子を陸上から眺めること数分、今度はどうやら上手く沖へと向かっているようです…。
■スタートから1時間半が経過。ふたたび自然の力が進路を阻む。
スタートを見送った後、メディアは船上からエボルタNEOくんを追うチームとゴール地点に先回りするチームの二手に別れての取材となりました。
エボルタNEOくんが泳ぐコースをチェックすると、最大の難関はコース前半の大きな生簀が浮かぶエリアの迂回かな、と思っていましたが、そこは意外なほど順調にクリア。スタートこそ遅れたものの、1時間半ほどで中間地点を通過しました。
当初の計算では直線距離にして約2.5kmを2時間半ほどで泳ぎきるのでは、と言われていましたが、時計が11:30を回ったあたりから徐々にペースが落ちていったのです。船上取材チームの誰もが「なぜ?」という目で海上を眺めます。
実は、前日である11月9日は潮の干満差が大きい大潮。チャレンジ当日は中潮ではありますが、満潮(午前)の潮位は362cm、干潮(午後)の潮位は106cmと、かなり潮の満ち引きがあるのです。そして、この日の満潮時刻は11:12。海面こそ穏やかに見えますが、徐々に、そして大きく潮が引き始めていたのです。つまり、海面の見た目こそ変化はありませんが、“潮に乗っていて進まない”状況になっていたのです。
船上から見えるエボルタNEOくんは頑張ってパドリングを続けますが、その速度はじわりじわり…、という程度。“頑張れ!頑張れ!”と心の中で呟きます。
そんな状況がようやく解消してきたのは、あと少しで12:30という頃でしょうか。
潮の流れからやや離れたのか、ちょっとした風に押されたのか、はたまたコースがやや陸地側に寄ったことで流れが変わったのか、ふたたびペースが回復してきました。海面を一見しただけでその変化は分かりませんが、船上にいた誰もが海の力、その凄さを思い知った1時間だったのは間違いありません。
12:40ごろには宮島、厳島神社から観戦していた人々からも見える位置に到達。陸上からエボルタNEOくんを応援する声も聞こえてきます。
しかし、陸の近くには小さな藻も少なくありませんから、網で海面をさらう高橋さんの表情は真剣そのものです。
そして、間もなく13時という頃、清盛神社の沖を越え、厳島神社の大鳥居が間近に見えるあたりに来ると、エボルタNEOくんの泳ぎも心なしかペースアップ。
ゴール地点である大鳥居を目指してぐんぐん泳いでいきます。よくぞ困難を越えてここまで頑張ってきたね、エボルタNEOくん。あと少しだ、頑張れ!!
そして13時06分57秒、ついにゴールラインである厳島神社大鳥居に到着!!
直前まで険しい表情だった高橋さんからも笑みがこぼれ、思わずガッツポーズも!
ゴール後に見せた安堵の表情と満面の笑みからも、今回のチャレンジが高橋さんとエボルタNEOくんにとって、いかに厳しいものだったのか伺い知ることができました。
■「エボルタNEO世界最長遠泳チャレンジ」(※2)結果
こうして、ゴールまでの所要時間=3時間22分34秒、距離=3.002kmのエボルタNEOくんによる遠泳チャレンジは無事に成功。ギネス世界記録™も見事、達成となりました。
高橋さんをはじめ、エボルタNEOチャレンジのスタッフはきっとこの日に向けて、エボルタNEOくんの開発や改良を重ね、入念なテストも繰り返してきたはず。さらにスタート直後のトラブルや潮の影響といった苦労を乗り越えてのゴールは嬉しさもひとしおだったことでしょう。
そして、潮や風に流されつつも黙々と、力強く泳ぎ続けるエボルタNEOくんを間近に見たことで、乾電池が秘めたパワーを知ることができましたし、選ぶならやはり信頼できる製品を選びたいと強く思ったのです。普段、何気なく手に取る乾電池の性能を外見から判断することはできませんが、家電やホビーグッズ、ビジネス製品など、私たちの生活に欠かせないアイテムの大事な"動力源"ですから。
さて、長もち性能や品質へのコダワリなど、乾電池が秘めた性能を楽しみながら知ることができるエボルタNEOチャレンジ。さて、来年はどんなチャレンジで私たちを驚かせてくれるのでしょうか。エボルタNEO、今後の挑戦にも期待しましょう!
>> パナソニック「乾電池」
■ギネス世界記録™詳細(※3)
記録名:Longest distance swam by a robot on a single set of AA batteries
単3形乾電池を使用してロボットが1度に泳いだ距離
挑戦日:2018年11月10日(土)
遠泳距離:3.002km
所要時間:3時間22分34秒
※1:世界一長もちする単3形アルカリ乾電池として。ギネス世界記録™に2017年10月2日認定。IEC基準における全放電モードの平均値より。250mA1日1時間放電 終止電圧0.9Vなど(温度:20±2℃、相対湿度:(55+20、55-40)%) ※2:Longest distance swam by a robot on a single set of AA batteries 単3形乾電池を使用してロボットが1度に泳いだ距離に2018年11月10日認定。距離:3.002km ※3:ギネス世界記録™はギネスワールドレコーズリミテッドの登録商標です。
(取材・文/村田尚之 写真/村田尚之、&GP編集部)