南青山の地下に潜むバー。そこはオーナーバーテンダーのこだわりが詰まった空間だった!南青山「bar cafca.」

レストランや酒場の帰り際、つい次回の予約をとってしまう。そんな経験、誰にでも一度や二度あるのではないでしょうか? 共通して言えるのは、その店がただ “美味しい” 店ではないということ。店の小さなこだわりや心遣いが、“楽しい” と思える時間を演出し、「また来たい」と思わせているのです。そんな繁盛店の人気の秘密に迫りました。

■視覚、聴覚から受ける情報を制限することで生まれる、特別な時間

「探し求める者は見つけることができないが、探し求めない者は見出される」。

そんな言葉を残したのは現代における実存主義文学の先駆者、かのフランツ・カフカだったでしょうか。まさにそんな言葉が似合う、いざなわれた者だけが辿り着けるバーが東京・南青山にあります。偶さかその名も「bar cafca.」。オーナーバーテンダーの佐藤博和氏が己の中にある世界観を如何なく発揮する、知る人ぞ知るバーです。

賑やかな青山通りから少し入った場所に現れるのは、まるで古城に用意された秘密の通路をイメージさせる階段。その先、重厚感のあるドアを開くと、まず驚くのはその暗さ、そして無音の空間。バーという業態の中でも照度をかなり落とした店はいくつか思い付くが、BGMを流さないというのは中々に珍しい。

佐藤氏は「目や耳から入ってくる情報を制限することで、ここでしかできない時間の楽しみ方を提供したいんです」といいます。五感のいくつかを閉じるということは、それ以外の感覚が研ぎ澄まされるということ、つまりは味覚や臭覚も。これには、いやが上にも期待が駆け上って行きます。

時に、前述したフランツ・カフカに影響を受けての店名なのか問えば、「お客様にいろいろと想像していただいて楽しんでいただければ」と、明確な答えには導いてくれません。思えば、“Kafka” に対して “cafca” だったりと謎も残ります。そんなことを考えながら、グラスを傾けつつ謎解きをしてみるのも悪くありませんね。

【次ページ】佐藤氏の美学に迫る!

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