■オールドボトルとアンティークグラスが導く、酒の極北
ウイスキー通の方ならば、香りを楽しむためにトゥワイスアップなど水割りを注文する人も多いかもしれません。カフカの水割りはウイスキーと水を1:1で割り、さらに氷を入れたスタイル。ウイスキーは70年代に製造されたジョニーウォーカー赤のオールドボトルを使っています。黄金色の液体をさらに引き立たせるのは、金彩が施されたSaint Louis(サン・ルイ)のアンティークグラス。水割りの価格は2000円。
ウイスキーと水をグラスに注いだら、優しく50回ほどかき混ぜ(ステアとは微妙に違う動きにも注目)、最後に氷を入れます。とろりとした口当たりでカドの取れたまろやかさは、佐藤氏の技術とオールドボトルの力によるものでしょう。
解けていく氷によって変化する味わい、時とともに開いていくジョニーウォーカーの香りを、ゆっくりと楽しんでください。
クラシックなレシピを佐藤氏の感性で再解釈するというカクテルもおすすめ。例えばアイディール・マティーニ(1600円)ならば、一般的なレシピの場合、スタンダードなジンを使うところを、より香りも味もはっきりとしたジンに変えることで個性を際立たせるなど、要所のアクセントが光ります。
そして、ここではイアン・フレミングが書いた小説「007」シリーズに登場する、本物のヴェスパー・マティーニも味わうことができます。今では世界中探しても見つからないというベルモット「キナ・リレ」を使用したもので、あまりにも特別な酒を使うので8000円と値は張るが、ファンの方にこそ飲んでみてほしいものです。
ジェームズ・ボンドが飲んだ酒に思いを馳せる、そんな時間は至福そのものに違いありません。
実は、バーを始めようと思う前からアンティークグラスが好きだったという佐藤氏。むしろ、アンティークグラスを美しく見せる手段として、バーテンダーという仕事を選んだとまで言うグラスの数々は、美しいという言葉では言い表せない存在感を放っています。
Baccarat(バカラ)、Saint Louis(サン・ルイ)、LOBMEYR(ロブマイヤー)、MOSER(モーゼル)など、時を超えて輝きを放つクリスタルガラスにうっとりとしてしまいそうです。