話題のロボット掃除機がいくつも出揃った2015年。なんとなく興味がありながらも、本当に自分の家には必要なのだろうか? 価格に見合った価値はあるのだろうか? と、まだまだ購入に二の足を踏み続けている人も多いはず。
結論から言えば、どんな家、どんな人にとっても価値があるのがロボット掃除機。そして、数多あるロボット掃除機のなかでも、満足いくレベルで掃除をこなせるのは、ロボット開発四半世紀以上、初代モデルのロボット掃除機を世に送り出してから10年以上になるアイロボットの「ルンバ」シリーズだということ。
とはいえ、今年発売された最新フラッグシップモデル「ルンバ980」以外に、ハイエンドモデル「ルンバ885」「ルンバ875」、スタンダードモデル「ルンバ654」「ルンバ622」と、現在5つのモデルが存在。自分にとってどれがいいのか分からない人も多いはず。
そこで『&GP』編集部が実際に「ルンバ980」「ルンバ885」「ルンバ654」の3台を使って比べてみた。
気になる価格を公式サイト税別価格で比較すると……
- ルンバ980 12万5000円
- ルンバ885 8万4000円
- ルンバ645 5万4000円
価格と性能のバランスをどう見るか? さっそくレポートしてみたい。今回は「ルンバ」シリーズをこよなく愛し、「ルンバ500」シリーズ以来、すべてのルンバを自宅に導入し、他社製品もほとんど試している家電ライターの滝田勝紀氏とともにレポート!
使って分かった、“暮らし”で変わる選び方
今回は「ルンバ980」「ルンバ885」「ルンバ654」の3台の各特徴や違いを知るため、同時に3台を動かしてみた。25畳ほどのフローリングベースのリビングには、ダイニングテーブルのほかに、毛足が長いラグが敷いてある。さて、その結果は?
1.テーブルやイスの周りはどう動く?
編集部:注目のダイニングテーブル周りにそれぞれ直面しました。動きに差が出てくるかも?
滝田:例えばイスの脚周りを、小回りを利かせながら回って行くなど、ディテールに関しては3シリーズとも共通です。
編集部:たしかに、3台ともサイドブラシなどをイスの足側にほぼ密着させるような状態でそれぞれ時計回りで回っていますね、お見事。
滝田:これはルンバ独自の技術「iAdapt」によるものです。「ルンバ980」だけは「iAdapt 2.0 ビジュアルローカリゼーション」を採用していますが、こういった家具周りなどのディテールの行動については、「iAdapt」ベースで動きますので、行動自体は大差はないようです。
「iAdapt 2.0 ビジュアルローカリゼーション」とは?…「ルンバ980」はマップを作成しながら同時に掃除をするため、複数センサーとともに本体上部にカメラを搭載。常に自機の位置を把握しながら掃除する。それに対し、「ルンバ885」「ルンバ654」はマップを作成しないため、カメラは非搭載。平均4~5回同じ場所を通りながら、状況に応じて最適な動作を選択する。
編集部:サイドブラシが脚と床の間に挟まっているホコリをキレイに掻き出して除去していますね! この部分は通常の掃除機でもなかなか取れないのに!
2.違いがはっきりと分かるカーペット
編集部:いよいよカーペットです。
滝田:カーペットや特に毛足の長いラグでは、動きよりも取れるゴミの量が三者三様で違ってきます。まず「ルンバ654」は吸引力と通常のブラシで掻き取ろうとするため、一度で絨毯奥まですべてのゴミを取ることができず、さらに長めの毛が絡まりやすかったり、それをブラシを逆回転して戻したりします。他の2台より、同じ面積でも掃除に費やす時間が掛かると思います。
編集部:「ルンバ885」と「ルンバ980」の違いはどうですか?
滝田:「ルンバ885」と「ルンバ980」の“AeroForce クリーニングシステム”は、カーペットや毛足の長いラグでも、ほとんど絡まることはありません。
「AeroForce クリーニングシステム」とは?…「ルンバ980」「ルンバ885」に採用されているブラシは、特殊素材のローラー。内部に真空状態を作りだして吸い上げるので、「ルンバ654」と比較して、一度で多くの量のゴミを吸い上げられる。また髪の毛やラグの毛が絡まることもない。
ただし、両者は吸引力の強さが倍近く違います。「ルンバ885」は従来機「ルンバ700」シリーズと比較して約5倍の吸引力に対し、「ルンバ980」は約10倍もの大きな吸引力を発揮します。
ただ、「ルンバ885」「ルンバ654」は、様々な角度から同じ場所を何度か通ることで、結果は同じくキレイになります。
3.“いくつの部屋を掃除する?”で異なる3台
編集部:実際、部屋が複数だったらどうなるでしょうか?
滝田:「ルンバ885」「ルンバ654」は、扉をあけておけば外に出て他の部屋も掃除します。「複雑な形の広いひと部屋」と認識します。
効率良く掃除させるために、「ルンバ885」は付属の“お部屋ナビ”を使って、ひと部屋ずつ3部屋まで順番に掃除させることができます。
「ルンバ654」は付属品の「お部屋ナビ」がないので、扉を閉めてひと部屋の掃除に使ったほうが効率がいいですね。ひと部屋をきっちり掃除する、という使い方ですね。
「お部屋ナビ」とは?…「ルンバ855」に付属のお部屋ナビを使うと、ひとつの部屋を掃除し終えるか、約25分掃除すると他の部屋へ移動するように設定できる(=ライトハウスモード。約25分×3部屋で約75分稼働)。「ルンバ980」「ルンバ654」は入ってほしくないエリア「バーチャルウォール」を設定できる。
編集部:「ルンバ980」はどうですか?
滝田:もともとマップを作製し、複数の部屋を掃除するようにプログラムされているため、スペック通りに動いたなら、最大112畳(約185平米)を120分、どこまでもきれいにし続け、最後は迷うことなく別の部屋からでも充電器へと最短距離で戻って行きます。
結論。ルンバを選ぶポイントは“掃除して欲しい場所はどこ?”
実際に使ってみて分かったことをまとめてみた。選ぶポイントは「どこを掃除してもらいたいのか?」ということになりそうだ。
【ルンバ980】
- 部屋がいくつかある家全体の掃除を任せたい
- カーペットブースト機能でカーペットをしっかり掃除したい
- ペットや人の髪の毛もしっかり掃除したい
- スマホで出先から操作したい、スケジュールを手軽に管理したい
例えば3LDKなど広めのファミリータイプのマンション住まいの人、ひと部屋でも複数の部屋でも、とにかく広範囲を徹底的に掃除したい人向け。この機種だけの特徴として、家全体の間取りを把握するマッピング機能、カーペットブースト機能と、スマホでスケジュール管理や出先から操作できることが挙げられる。
【ルンバ885】
- 1LDK+1〜2部屋程度の掃除を任せたい
- ペットや髪の毛もしっかり掃除したい
- フローリング、カーペットどちらも掃除したい
1LDKや2DKなど、一般的なマンションタイプの部屋や、都内の3階建戸建て住宅のような、広めのリビング、15~20畳が1フロアを占めるような建物に住んでいる人向き。ペットがいる場合でも特殊素材のローラーを使っているので問題なし。夫婦共働きのDINKS家庭、シルバー世代の夫婦暮らしなど。自分でササッと掃除機がけをするのが苦にならない人向き。
【ルンバ654】
- ひと部屋など決まった場所を掃除したい
- まずは便利なロボット掃除機を導入したい
- 主にフローリングが多い
ワンルームや、12畳くらいのコンパクトなリビング、8畳や6畳の寝室で、なおかつベッドの下に広い空間がある部屋ならルンバ654。これから導入を考えている人も十分満足できる性能。他の2機種に比べればリーズナブルというだけで、他社のロボット掃除機よりは動き方や清掃能力は高い。あとは自分で掃除機がけをし、併用して使う人向き。
実際に3機種を動かして実感できたのは、機能だけで選べば「ルンバ980」だが、じつは「ルンバ654」で充分な人もいる、ということ。
いいものが欲しいなら迷わず最新型の「ルンバ980」。でもその前に、自分のライフスタイルに合わせて選んでみてはどうだろうか? 必要な機能と自分の使い方を照らし合わせると、「ルンバ885」「ルンバ654」でも十分かもしれない。
ちなみに編集部スタッフは3人家族の2LDK。現実的に「ルンバ885」に決定!
(文/滝田勝紀 写真/下城英悟)