子どもの頃から慣れ親しみ、大人になってからも穿ける普遍的な魅力があるジーンズ。とはいえ、時代によって、ブランドによって、技術の進化によって、デザインや素材、ディテールは大きく異なります。近年はストレッチ素材やスリムフィットなどが増えていますが、デザイン的にはスタンダードな5ポケットが主流。
そんな中、ひと際デザイン力の高さで個性を主張しているのが、ジーンズで革新を起こしたヨーロッパのデニムブランド「G-Star RAW(ジースター ロゥ)」です。デニム生地を立体的に裁断することでフィット感を大幅に向上させ、動きやすさと丈夫さとを両立した「3D(立体裁断)デザイン」ジーンズは、瞬く間に世界へと広まりました。
世界に700店舗以上、日本に上陸して14年。創業30年を迎える今、“デザイン”と“機能”の両方を兼ね備え、誰にとっても穿き心地がよく、時を超えても愛されるデザイン主義を標榜する「G-Star RAW」の魅力に、改めて迫ります。
■USジーンズの良さを独自解釈しヨーロッパに広めた「G-Star RAW」
G-Star RAWは、1989年にオランダ・アムステルダムで設立された、「伝統を大切にしながらも新しい価値を生み出す」デニムブランド。ヨーロッパに、USジーンズ誕生の歴史とその良さを理解したブランドがなかった時代に創業しました。
ジーンズの発祥といえばアメリカですが、G-Star RAWはそんなUSジーンズをリスペクトした“オーセンティックなモノづくり”を展開。それは、本来ワークウェアだったジーンズに求められる頑丈さを追求した素材や生地選び、個性的な色落ちを楽しむための洗いの加工といったクラシックな“本物志向”にあふれたディテールに現れています。
そして、常にジーンズに対する可能性を探求し、常識を覆す“革新的”デザインを打ち出してマーケットを牽引。3Dデザインはその最たる例で、新しい発想からジーンズという普遍的なアイテムにイノベーションを起こし続けています。さらに、作業服や工業製品からインスピレーションを受けてデザインしたり、異素材を組み合わせたりする“禁断のコンビネーション”で、デニム市場だけでなくファッションシーンを牽引。従来のウェアの概念を打破するプロダクトを手がけているのも特徴です。
工業デザインと職人の手作業によるクラフツマンシップが融合することで誕生した、武骨さを備えながらモダンでスタイリッシュなジーンズは、ヨーロッパ全土に広まりました。欧州ブランドのジーンズには、USジーンズとは一線を画すラグジュアリーなイメージがありますが、この礎を築いたのが「G-Star RAW」なのです。
■ブランドの根幹をなす“ありのまま”の生デニム
ブランドの根幹となっているのが、その名にも冠されている「生デニム(=RAWデニム、リジッドデニム)」です。ストーンウォッシュが主流だった1996年に未加工のジーンズ(生デニム)を発表。特殊な防縮加工を施すことで、ねじれない、縮まないG-Star RAWの生デニムは世界を席巻しました。
G-Star RAWが提言する「RAW」とは“ありのまま”であること。気取らず武骨であっても、魅力的であること。ありのままを受け入れること=個性と多様性を大切にするという理念が込められています。
G-Star RAWのデニムは、まず糸を作るためのコットン選びから始まります。強度のある糸を作るために世界中の産地のコットンを独自にブレンドし使用。昔ながらのリング精紡機をあえて使い、個性的なムラのある糸を紡ぎます。このムラがユニークな表情の色落ちを実現します。
そして糸を藍(インディゴ)で染めた後、生地を織り上げて頑丈なツイル生地に。できあがった生地は、繊維の毛羽を焼き、ローラープレスで引き延ばすスキュー加工、そしてサンフォライジング加工という防縮加工を施し、ねじれない、縮まない生地に仕上げます。その後、作図したパターンを生地に写して裁断、縫製や装飾付けなどプロダクトとしての最終工程を経て、晴れてジーンズとして完成するのです。
単にデザイン優先ではない、飽くなき探究心と強いこだわりを持って作られているからこそ、G-Star RAWのジーンズは世界中で支持されているのかもしれません。
■革新と穿きやすさから生まれた3D(立体裁断)デザイン
生デニムを発表した同年に、G-Star RAWはジーンズに3D(立体裁断)を取り入れたモデル「5620 G-Star Elwood(5620 ジースター エルウッド)」をリリース。新しい発想のジーンズはデニム業界に革命を起こしました。
1991年に迎えたデザイナー、ピエール・モリセットが、バイカーの穿くモトクロスパンツから3Dの着想を得てデザイン。モトクロスパンツの立体的な膝の構造とワークウエアの機能美をミックスし、ふくらはぎや太もも、ヒップなど部位ごとに生地パーツを細分化。頑丈なジーンズでありながら、人間のカラダに自然とフィットする美しいシルエットと動きやすさを実現しました。
G-Star RAWの立体デザインはその後も進化を続け、新たな技術も開発されています。シームにねじれを加えることでアーチを形成し、脚周りを包み込むフィット感を生み出した「ARC(アーク)」など、そのDNAを継承した革新的で穿きやすいジーンズが数多くリリースされています。
■ワークウェアを現代的にアレンジした「D-Staq(ディースタック)」ジーンズ
最初に発売した生デニムの「3301」や3Dデザインの原型となった「5620 G-Star Elwood」など、数あるG-Star RAWのジーンズの中でも今、穿きたい1本が、ワークウェアとしてのデニムを現代的にアレンジした「D-Staq(ディースタック)」ジーンズ。
G-Star RAWの証である3Dを受け継ぎながら、同社に保管されている膨大なアーカイブを研究し、伝統的なデニムパンツとチノのディテールを組み合わせたハイブリッドなデザインが特徴です。前後左右それぞれにジーンズポケットとチノポケットを併せ持つラギッドなデザインと、細身でエレガントなストリームラインフィットを融合させた「D-Staq」は、穿きやすさと旬なルックスを備えた注目シリーズ。G-Star RAWの次なるアイコンへと期待されています。
■体の動きに合わせて緻密にフィットする細身のカット
「D-Staq 3D スキニージーンズ」(2万7000円)は、ストレッチデニムを使った細身のカットを採用することで、体の動きに沿った緻密なフィットを実現。腰回りにゆとりを持たせたフィットになっているので、細い方だけでなく、ヒップや太ももがしっかりしているゆえスキニーを敬遠していた方でも穿きこなせる万能なスタイルです。穿きこなしのポイントは、少し腰で落として穿くとバランスよく着こなせます。写真の生地は、ストレスを感じさせない伸縮性抜群のスーパーストレッチ素材にヨーロッパブランドらしいウォッシュ具合が絶妙の“Medium Aged”。オーセンティックな使い込み跡が刻まれ、絶妙な濃淡を表現した味わいのある色合いが特徴です。
■地球に優しい素材で作られた1本
G-Star RAWは地球環境に配慮した、サステナブルなモノ作りに取り組んでいることでも知られています。この「D-Staq 3D ジップ スリム ジーンズ」(3万4560円)は、環境への負荷を最小限に抑えたプロセスで作られた1本。再生ポリエステルやユーカリの木から作ったテンセルなど、地球に優しい素材が用いられています。もちろん、素材を絶妙にブレンドしたマルチ繊維を使うことで、高い伸縮性や優れた復元力、ソフトな手触りを実現。環境面だけでなく、機能面にも優れています。
■機能性の高い力強いディテールは印象的なルックスも演出
シリーズの中でも定番人気の「D-Staq 3D スリムジーンズ」(2万8080円)に新しいウォッシュとダメージを加えた新商品。「D-Staq」の特徴であるデニムとチノを融合したデザインが、前後のポケットに顕著に表れています。この力強いディテールが機能性を高めると同時に、印象的なルックスも演出。1点1点異なった絶妙なダメージ加工なので、好みの1本に巡り合える楽しさもあります。また伸縮性に優れ、型崩れしにくい、8回染めのミッドウェイト10.2オンスインディゴデニムを使用している点も見逃せません。
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時代の先を行く「ねじれず縮まない生デニム」を大々的に展開し、ジーンズに「3Dデザイン」を採用したG-Star RAW。近年では、「RAWサステナブル」と称した地球に優しい製品づくりに取り組むなど、常に革新性に満ちあふれています。
そんな世界中で支持されるG-Star RAWのコレクションの中でも、今回ピックアップした「D-Staq」ジーンズは、見た目も穿きやすさも文句なし。ジーンズとチノのディテールを組み合わせたデザインは、大人にぴったりのジーンズといえます。またウォッシュ加工にも力を入れ、ダークからライトまで幅広いカラーを選べるのも魅力。サイズやレングスのバリエーションも豊富なので、自分に似合う1本がきっと見つかるはずです。
(文/津田昌宏)