フライフィッシングの聖地、イングランドのテスト川でテンカラに挑戦!

▲テスト川中流の悠々としたチョークストリーム

今回の釣行は新作小説『RAINBOW』の取材で、イングランドの鱒釣り文化とライフスタイルを体験するためだ。新作小説のあらすじはこうだ。

19世紀大英帝国全盛の頃、イギリス人たちは植民地へ3つのものを持ち込んだ。芝生と噴水と午後の紅茶だ。しかしもう一つ運んだものがある。それは北半球の冷水域にしか存在しなかったトラウト(鱒)だ。

鱒釣り文化発祥のイギリス人たちは植民地においても鱒釣りがしたかったのか…。運んだ先の一つが南アフリカ。だが、鱒を南アフリカまで運ぶことには大変な労苦を要する。水温22度を超えて鱒は生きられない。果たして、どうやってイギリスから海路で南アフリカまで運んだのか…。

現在では南アフリカの内陸地にもレインボートラウト(虹鱒)やブラウントラウトが棲息する。百年以上前に彼らが運んだ子孫たちはいまでもアフリカの高地で生きている。物語はその鱒を運んだ男たちの冒険活劇譚なのだ。

■日本とは違う釣りのシステム

さて、取材先のテスト川中流域はロンドンの西、車で1時間半ほど行ったところ。川の近くにあるストックブリッジという町はイギリスで最も小さい町のひとつで、多くのアングラーたちが立ち寄るところでもある。我々もこの町でガイドのロロ・グランディさんと待ち合わせた。

ロロさんは、このテスト川の近くで生まれ、幼いころから釣りを楽しんだ。一時はロンドンでカメラマンをしていたそうだが、釣りが忘れられずにフィッシングガイドとして地元に戻ってきたという。

▲趣があるストックブリッジの古い町並み

イギリスの釣りは日本とは大きくシステムが異なる。日本では川へは誰でも入ることができ、漁協の管理区域では入漁料を払って釣りをすることになるが、イギリスではまず国のフィッシングライセンスが必要になる。期間や年齢などで金額は異なるが、我々は8日間で1人12ポンドを払ってゲストの許可を得た。

さらに川に行くには、その川の両岸の土地を所有しているところ(フィッシングクラブなど)の入漁料が必要になる。川は国の所有でも両岸は貴族や大金持ちの所有であり、昔からイギリスでの釣りには所有者の許可が必要になるのだ。所有者は川の管理にリバーキーパーを雇って行っており、入漁料は彼らの給料の一部になる。だから、川は常にしっかりと管理されていて、ゴミなど全くない美しい流れが維持されている。

許可される場所は、区間を区切り、入れる人数が制限されていて、多くがチャッキ&リリースだ。それだけに魚影は濃く、ヒレピンの鱒たちが目視できるほどたくさん泳いでいる。

▲きれい整備された川岸に立つ夢枕獏さんとガイドのロロさん

 

■大物ブラウンがヒット!

チョークストリームとは石灰岩地帯を流れる川のことだ。川底には大きな石がなく、水草が生い茂るゆったりとした流れ。テスト川は透明度も高く、水草のへりに沿って魚影が確認できる。

獏さんは、まずはフライロッド(5番)でチャレンジ。そっと川べりを歩きながら魚を目で確認する。偏向グラスを掛けてよく見ると、流れの中に50センチを超えるようなブラウントラウトが悠々と泳いでいる。

ロロさんがキャストポイントを指示する。フライはドライフライの16番。ベストポイントに流すも魚は見向きもしない。すると、ロロさんは「フライを替えましょう」とニンフにチェンジ。魚の鼻先にキャスト、ニンフが沈みながら流れる。ブラウンはニンフを確認して若干反応を示すも、捕食はしない。

ここでさらにフライチェンジ。今度はビーズヘッドのニンフを選択、キャスト。すると、ブラウンはビーズヘッドの光に魅せられたのか、フライをくわえた。

すかさず、獏さんがアワセを入れる。ブラウンは川上に走り、一気にラインが出ていく。かなりの大物だ。ラインのテンションをゆるめないように、リールを巻き上げていくが、何度も走られてやりとりが始まる。数分の末、ようやくランディングに成功!

▲ロロさんのアドバイスから工夫しながらトラウトを狙う獏さん

▲ヨーロッパで鱒といえば、このブラウントラウト。見事な魚体の60センチ級

【次ページ】ガイドもビックリ、テンカラ竿のポテンシャルの高さ

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