地元の方々のお宅や店先でバッテリーの充電をさせてもらいながら、電動バイクで地方を旅するTV番組「出川哲郎の充電させてもらえませんか?」。ガソリンを使わず、ゲストタレントとともに突然地方に現れ、バッテリー切れのハプニングも楽しみつつ人情旅をするというのは、観ていて面白くもあり、中には「自分でもやってみたい!」と思う方もいらっしゃるのではないだろうか?
電動バイクで見知らぬ人の家を尋ねるのはハードルが高いが、電気自動車に乗り、全国津々浦々に配置されているEV充電スタンドを利用するのであれば、充電旅のハードルはグッと低くなる。
とはいえ、いざ電気自動車を購入するとなると「走行可能距離が少ないのでは?」とか「充電場所に困るのでは?」など心配のほうが大きくなる方もいることであろう。ただ、現在世界的に自動車のEV化は加速し、ヨーロッパではEUのCO2排出規制のもと2050年にCO2排出量を実質ゼロにするべく、各メーカーが次々とEVを発表。EVがクルマの次のトレンドであることは間違いない。
そんな中、英国のラグジュアリーカーブランド「ジャガー」が初の電気自動車である「I-PACE」を発表し、2019年には日本でも販売が開始された。このI-PACEは世界中のモータージャーナリストから高い評価を受け、2019年の「ワールドカーオブザイヤー」の受賞をはじめ、世界中で60以上ものアワードを獲得している。
今回は、このジャガーI-PACEで鹿児島から東京まで約1600km(寄り道を入れた結果は1900km)、5日間をかけて走破した。宿泊先にはラグジュアリーなジャガーの電気自動車にふさわしい温泉旅館やホテルを選び、地方のグルメも堪能するという贅沢な充電旅を試みた。
「由布院玉の湯」で温泉と食事を堪能!I-PACEの充電状況は専用アプリで確認可能
初日、鹿児島を正午に出発した我々は、宮崎県を経由して高速道路の急速充電器で充電。寄り道をしながら半日で420kmを走破し、大分県由布院市の高級旅館「由布院 玉の湯」を訪れた。到着時には走行可能距離が42kmにまで少なくなっていたが、旅館でリラックスしている間に宿の普通充電器で充電すれば、寝ている間にバッテリー容量は増えていく。このあたりはスマホの充電となんら変わらない。
65年前に禅寺の保養所として生まれた「由布院 玉の湯」。その駐車場にはフェラーリやポルシェといった高級車がズラリと並んでおり、I-PACEはそうしたオーナーからの視線もすさまじく、撮影時には航続距離や馬力に関するたくさんの質問を受けることになった。
ちなみにI-PACEの最大出力は400馬力、モーターの特性上アクセルを踏んだ瞬間にトルクがMAXにすることが可能なため、スタートはエンジン車と比べると恐ろしく速い(加速性能は0-100km/h 4.8秒)。また、航続距離は今回のI-PACEが満充電時に表示した距離は435kmとなっていた。
宿泊時の充電中はクルマのそばを離れることになるが、「JAGUAR REMOTE」というアプリで現在の充電状況やクルマの位置、セキュリティ情報やエアコンのON・OFF設定ができる。朝食を食べている間や周囲の散策をする間にも充電状況が一目でわかる安心感とともに、ガジェット感も楽しめるのだ。
充電旅のお供は英国製ハンドメイド折りたたみ式自転車「ブロンプトン」がハマる
I-PACEの充電旅で役に立ったのが、折りたたみ式自転車「ブロンプトン」。ジャガーと同じ英国製で、ロンドン郊外の職人たちがハンドメイドで作っているということも魅力ではあるが、コンパクトに折りたたんでトランクスペースに入れておけば、充電している間に取り出して周囲を散策することができる。
今回の旅では、徳山や広島でカフェ巡りをするなど、路地裏の散策で圧倒的な機動力を発揮してくれた。自転車好きであれば電気自動車もきっと好きになるのでは? と個人的には感じられた。
というのも電気自動車は全般的に静粛性に優れており、中でもI-PACEの静粛性は群を抜いている。エンジン音がしないので地方の田舎道や深夜のドライブなど、窓を開けて走るとまるで自転車で滑走しているような錯覚に陥るのだ。聞こえるのはタイヤ音のみで、排気ガスの匂いもせず、風が大変心地いい。
「クルマは排気音がしなくちゃ」という方には、なんと擬似サウンドの排気音をタッチパネルで調節できる。この設定で知らない方がI-PACEを運転すれば、静かなガソリン車と感じてしまうに違いない。
「ザ リッツ・カールトン大阪」で楽しむ18世紀の美術品と極上のおもてなし
さて、贅沢旅である今回、大阪では世界的に著名なラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン大阪」に宿泊した。このホテルのインテリアコンセプトが「18世紀英国の伝統的ジョージアンスタイル」ということで、英国生まれのジャガーI-PACEとも親和性が高く、ホテルのロゴにはイギリス皇室のシンボルである王冠があしらわれるなど、英国流・本物のおもてなしが息づいている。
随所に飾られる絵画や美術品の数はなんと450点。中でも絵画は18~19世紀ヨーロッパ作家の作品を中心に集めているとのことで、それらが放つオーラが伝わって、英国のマナーハウスでくつろいでいるかのようだ。
ちなみに部屋のサイドテーブルにはなんと、ジャガー柄のたこ焼きをモチーフとしたスイーツがメッセージカードとともに置かれていたのだが、中身は一流のチョコレートスイーツ。ミシュランの星を獲得しているレストランが2つも入るこのホテルでは、食事のみでの利用もオススメだ。
全国の急速充電スタンドが旅をサポート。日産ディーラーは地方の充電に安心
充電旅4日目は大阪から伊東まで440kmを移動。この日は高速道路の移動が中心であったが、I-PACEにはステアリングアシスト付の「アダプティブクルーズコントロール・ドライビングアシスタンス」がついているので、運転時はハンドルに手を添えているだけ。運転しているというよりは「I-PACEが運んでくれる」という感覚だ。
また、高速道路の長距離移動ではパーキングエリアに整備された電気自動車の急速充電スタンドが役に立つ。充電時には「NCS(日本充電サービス)カード」が便利で、これさえあれば日本中の提携充電器で充電し放題となる。また、充電場所はI-PACEのナビに表示されるので、周辺の充電スタンド情報も一目瞭然だ。
I-PACEは急速充電を30分すると、走行距離で約100km分を充電できるが、今後はEV用急速充電器の出力も上がり、充電時間はますます短縮されていくはずだ。急速充電スタンドは高速道路以外に、全国の道の駅や自動車販売ディーラー等に設置されているが、とくに便利なのが日産の急速充電スタンドである。日産のディーラーは全国津々浦々にあり、リーフを2010年から販売しているため、急速充電器の設置率が高い。
はじめはみな勘違いしがちなのだが、たとえジャガーのEVであっても日産はもちろん三菱、トヨタの充電スタンドで充電することがほぼ可能だ(設置機器の種類によっては充電できない場合もある)。
温泉旅館「星野リゾート 界 アンジン」に宿泊。旅の最終夜は帆船と船旅に思いを馳せる
こうした急速充電を使いながら、充電旅4日目の夜に宿泊したのは静岡県伊東市の「星野リゾート 界 アンジン」。
伊東市は「青い目のサムライ」と呼ばれた英国人・三浦按針が日本初の西洋式帆船を造船した場所ということで、この温泉旅館はその名前にちなんでおり、館内には海や船旅をテーマにしたデザインが取り入れられている。ジャガーI-PACEと三浦按針は同じ英国生まれ同士、充電旅最後の夜を16世紀末の船旅と重ねるのも、趣がある。
「星野リゾート 界 アンジン」で特筆すべきは、電気自動車での充電旅に必要不可欠なEV充電コンセントが、2台分用意されているということ。今回の充電旅では夜のうちに充電して、朝には満充電になっていることがいかに重要か身に染みてわかったが、宿に到着と同時にすぐ充電を開始できる安心感は、何物にも代えがたい。
またEV化はラグジュアリーカーから進んでいくので、こうした高級温泉旅館にEV充電コンセントが整備されていくというのはまさに時流に乗っており、理にかなっているのだ。
伊東ならではという海の幸を満喫し、温泉に入り、オーシャンビューの部屋でクラフトビールを飲んで眠りにつく。翌日は周辺をブロンプトンで散策し、ライカM10でスナップを撮影しながらゆっくりとチェックアウト。その間にI-PACEは満充電となり、最終日は東京へとラストスパートをかけた。
こうして鹿児島から東京まで約1900kmを走破してみたが、不思議なことに肉体的には驚くほど疲れがない。普通クルマで1900kmも移動すると2〜3日は疲れがとれず、それは新幹線であっても同じだ。しかし、I-PACEは乗っていて疲れないどころか、乗っていることが、充電も含めて楽しかったのだ。世界中が評価したジャガー初の電気自動車I-PACEをみなさんにも是非一度体感していただきたい。
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(文:隂山惣一/写真:近藤浩之)