先日、ガジェット好きの友人から「なにか新しい腕時計が欲しいんだけど」と相談を受けました。モノメディアの編集者なんてやっていると、よくある相談なんですが、最近は外出の機会が減ったこともあり、スーツスタイルを気にせず趣味の腕時計が着けられるようで、ひとクセあるアイテムを探している模様。
「機械式? クォーツ? どっちがいいの?」と聞いたところ、何やら「どっちも普通っぽくて嫌だ」とのこと。いや、大別するとそのふたつしかないぞワガママ言うな、と思ってピーンときたんです。
「あるある、飛び切り珍しいやつ(腕時計)が!」
■世界初の“静電誘導”搭載ムーブメントを採用!
そこで友人に紹介したのが、アメリカの老舗腕時計メーカー・ブローバが発売したばかりの「アキュトロン」。フルスケルトンで、コイルやタービンが見える特徴的なデザインを持っており、誰に見せても「えっ、なにその時計?」と言われること間違いなしなアイテムです。ガジェット好きの友人はひと目見てワクワクが止まらない様子。
「めちゃめちゃサイバーパンク感あるね! なんかタービンみたいのが回ってるけど。どういう仕組みなんだ?」(友人)
「これね、5時と7時位置に静電誘導発電タービンがあって、その電極間で腕の動きに連動してツインタービンが高速回転するの。そこで生まれた電力を蓄電池にためて、時分針を動かしてるんだよね」(編集)
「ちょっとイメージわかないけど、手を振るとタービンが回って動力になるってことか。10時位置の大きいタービンは?」(友人)
「それは秒針用だね。あと、10日間くらい動かさないと“パワーセーブ機能”が作動して電力消費を抑えてくれるよ。だからクォーツ式だと通常は約2年で切れる電池も、一日約60分以上(約6000歩以上)身に着けて歩くことで発電されて、ずっと使い続けられる優れものなんだよ」(編集)
「すごく賢いね。そう考えると機械式っぽいけど、電力で動くわけだからクォーツとしての機能もあるってことか…。こりゃマニアックだな(笑)」(友人)
「ちなみにこの“静電誘導”腕時計って世界初なんだよ」(編集)
「マジ! あ~ワクワクが止まらないな」(友人)
■10年の歳月をかけて開発された新機構
ファーストインプレッションで「アキュトロン」が気に入った様子の友人。そこでダメ押しにと、ブランドの歴史を語ってみました。
「実はこのアキュトロン、1960年にブローバから発売して、生誕60周年を記念した新ブランドなんだよ。といっても、初代は“静電誘導式”じゃなくて“音叉式”だったんだ。音叉って、あのギターの調律なんかで使うやつで、当時、世界初の機構としてセンセーションを巻き起こしたんだよね。で今回、生誕60周年を機にブローバから独立したブランドになったという経緯がある」(編集)
「へ~。デザインも今回の文字盤に近いんだな。いや逆か(笑)」(友人)
「そう、初代アキュトロンのデザインを踏襲して作られてる。だけどデザイナーは見た目を似せるのではなく、当時と同じく“世界初を成し遂げること”を目標にしたんだって。基礎研究から10年、量産開発を始めて5年が製品開発にかかってる」(編集)
「なるほど、じゃあ今回の“静電誘導”ってのが世界初になるのね。機械式、クォーツ式、あとはソーラーがあるけど、聞いたことないはずだわ」(友人)
「ちなみにアキュトロンって名前だけど、当時機械式が主流だった時代に月差±1分という精度が驚異的で、その正確さと電子時計という特徴から、“Accuracy=正確”と“Electron=電子”からできた造語になってるのよ」(編集)
■新生アキュトロンは特徴の分かれる全4モデル
「アキュトロンを見てると思うけど、ブローバって面白いメーカーだね」(友人)
「そうだね。ブローバは時計メーカーでは初の国内ラジオコマーシャルを展開したり、NASAに協力したりといろいろ話題に事欠かない。アキュトロンの計時装置は有人宇宙船アポロ11号に搭載して、月面の『静かの海』に設置されたらしいよ」(編集)
「壮大すぎ! もう買おうと思うんだけど、今回のモデルは1種類なの?」(友人)
「はい、待ってました!(やれやれ、ようやくか…)」(編集)
■1960年のオリジナルを彷彿とさせるアイコニックなデザイン
「アキュトロン スペースビュー 2020」
(36万円/税別)
■ラバーストラップでスポーティな3モデル
「アキュトロン DNA」
(35万円/税別)
「モデルはこの4つだね。一番、オリジナルに近いのが『スペースビュー 2020』で、現代らしいスポーティさを持つのが『DNA』シリーズの3種類。どれも機構的には同じだから、あとはデザインの好みで選ぶといいかも」(編集)
「これは悩ましいな~。『スペースビュー 2020』一択でしょ! と思ったけど、たしかにスポーティな『DNA』シリーズも捨てがたい…」(友人)
「うんうん、わかるよ。で、結局どれにするの?」(編集)
「う~んダメだ、決められない! 誰か選んで(笑)」(友人)
「いい加減にしなさい(笑)」(編集)
>> アキュトロン
(文/三宅隆<&GP>)