完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ際、重視するポイントはどこですか? 音質、サイズ、接続性、デザイン、ノイズキャンセル機能(以下ノイキャン)など要素はさまざまありますが、個人的にいま最も推したいのはマイク性能です。
モノメディアでオーディオを担当していると、新製品を視聴する機会が多くあります。発表会で数分だけの場合もあれば、数日、ときには1カ月程度借りて使ってみることも。その中で気付いたのが「マイクの良し悪しはかなり重要」ということでした。
通話やオンライン会議での自分の声だけでなく、外の音を拾って打ち消すノイキャンでもマイクは使われます。外音取り込み機能も同じ。そもそも高音質だとしても、ノイキャン機能でノイズを抑えなければその音を十分に味わえません。
そして先日、1週間ほど借りて使ったJabra(ジャブラ)の最新完全ワイヤレスイヤホン「Elite 85t」。もうね、借りてる間の稼働率がハンパなかった。移動時だけじゃなく、在宅勤務時も、会社でも使いまくり。なぜこれほど使っていたかと考えると、そこにはマイク性能の高さがあるなと気付いたんです。
■アプリで手軽に調整できる強力ノイキャン!
事務関係の手続きがあり出社した日。いつものように乗った地下鉄で威力を発揮したのがANC(アクティブノイズキャンセリング)機能。地下鉄ホームの騒音はかなりのものです。もちろん騒音を完全に消せるわけはないんですが、左右にある外側と内側に向いた4つのマイクがしっかりノイズを拾い、気にならないレベルにまで打ち消してくれます。
しかもこのノイキャン、「Sound+」という無料のスマホアプリを使えば、5段階でレベルを変えられます。最強にすればかなり静か。同じく、外音取り込み機能 “HearThrough(ヒアスルー)”も調整できます。
そして、この「Sound+」がかなりイイ! 細かな設定もできるんですが、それよりも、よく使う機能にすぐにたどり着ける。ちなみに一番上にある「マイモーメント」「通勤」「フォーカス」という3つのボタンは、それぞれにノイキャンかヒアスルーのレベルを設定しておけば、1タップで切り替えられます。
初見ですんなり使えるアプリって実はあまりなかったり。シンプルだけど、必要な機能はしっかり入っている。これなら日々ちょいちょい設定を変えようという気にもなりますね。
■仕事時に役立つ機能がたくさん!
会社に着いたらフリースペースで仕事。もちろんこの時も「Elite 85t」は着けっぱなし。“ヒアスルー”にしておけば声を掛けられても気付けるし、通話だってこのままでOK。
そして、かなりうれしいのが“マルチポイント接続”できること。同時に2つのデバイスとつなげられるので、会社ではいつもスマホとPC(※)両方に接続しています。オンラインでのコミュニケーションが増えた今、この機能は本当に助かる。PCでオンライン会議をしたあと、外出時にスマホで音楽を聴くとなった場合、PCとの接続を一度切ってからスマホに繋がなければいけないという手間が必要なくなる。イチイチ切断や接続をしなくても、通話にもオンライン会議にも使えるのは本当に助かる。
※PC接続はメーカー推奨ではないので、不具合についてのサポートは行われていません。またPCによっては接続できないこともあります。
そうそう、会社にいる時は音楽ではなくアプリ内にある「サウンドスケープ」を流してました。これかなりオススメ! 自然音をループで流してくれるんですが、集中できるんですよ。仕事を短時間で一気に仕上げたい時なんかには、「ノイキャン+サウンドスケープ」を使いまくってました。
さらにケースはワイヤレス充電対応。イヤホンだけでもノイキャンONで5.5時間(OFFの場合は7時間)と十分なスタミナです。とはいえ、これだけヘビーに使っていると充電はマメにしてバッテリー切れを避けたいところ。でもイヤホンの充電ってつい忘れちゃうんですよね。だからそのハードルを下げてくれるのは本当に助かる。充電ケースを使えばノイキャンONで+19.5時間(OFFで+24時間)だから、すっからかんになることはありませんでした。
■左右合計6つのマイクで声もノイズもしっかり拾う!
在宅勤務時の編集部オンラインミーティングでも「Elite 85t」を使っていました。
開始早々「いつもより声がクリアに聞こえるんだけど」。イヤホン自体は小型なのに、しっかり声を拾ってくれる。これにはちゃんと理由があります。それはマイクの位置と数。
イヤホンのちょっと飛び出た部分に網の目のような小さな穴がいくつもあいています。ここがマイク穴で、内部には通話用と通話+ノイズ用の2つのマイクがあり、さらにイヤーピース側にも1つマイクが付いていて、こちらは体から出るノイズを拾ってくれます。
また通話用のマイクは横からの音を拾いやすく設計されているとのことで、大きな声を出さなくてもしっかり声を拾ってくれ、しかも音声品質がかなり高い。さすが、長年ヘッドセットを手掛けてきたJabraだけある!
■ボーカルが心地良く響く高音質!
音質はかなりハイレベル! ドライバーが12mmとかなり大きいので、音に艶と厚みがあります。低音をズンズン響かせるというよりは中音域をしっかり出すタイプで、ボーカル曲にはピッタリ。クイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』を聴いたら、最初のアカペラからもう最高。フレディー・マーキュリーのハイトーンもクリア! 音場が広めなので、ライブ音源にもいいかも。高音も1音1音しっかり聴かせてくれて、かつ刺さるようなキツさがない。全体的にバランスの良いサウンドなので、ジャンル問わず満足できるのではないかと。
しかもアプリにはイコライザー機能付き。6つのモードがセットされているんですが、それぞれのモードも簡単に自分好みに調整できます。聴きながら、低音をもうちょっと効かせたいなと思えばベースをククッと持ち上げればOK。直感的なインターフェイスで複雑な操作は必要なし。いやほんと、このアプリ優秀だわ。
■すべての穴には意味がある!
そうそう、一度外のかなり風が強い場所で着信があって通話したんです。その時、当然ながら風が気になり「こっちの声、聞こえてます?」と相手に確認したところ、「キレイに聞こえてるよ。なんで?」と返ってきました。マイク穴が従来モデルより小さくなったことで風切り音をかなり抑えられていることは知っていました。でも実際にかなりの強風下で、しかも穴の数は増やして声や外の音を拾いやすくした上でこれだけの効果があるとは、さすがの一言です。
そして、ここまでレポートしておいて今さらの告白なんですが、実は耳の穴を密閉するカナル型イヤホンとノイキャンが苦手だったりします。耳が詰まったような感覚や、ノイキャンをONにした時の圧を感じるあの感覚がちょっと…。じゃあなぜ、この「Elite 85t」を使いまくれたのか。それは通気穴があいているから。
「Elite 85t」にはマイク穴だけでなく、イヤホン側面2カ所にも穴があいています。実はこれが通気用の穴。楕円形のシリコンイヤージェル採用でフィット感はかなり高いのに、この通気穴があることで詰まった感を低減してくれるんです。
初めて装着した時は、音漏れしないぐらい小さな穴なのにこれだけ効果があるのかと衝撃でした。イヤホンの耳が詰まった感覚やノイキャン時の圧が苦手な人は、ぜひ一度体験してみてください。
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完全ワイヤレスイヤホンにも、ノイキャンや外音取り込み機能が付いているモデルが増えてきました。高音質をクリアに楽しむには、やはりノイキャン性能は重要です。
さらに外の音が聞こえることで、いちいち着けたり外したりをしなくて済む。さらにマイク性能が良いことで、なにかとリモートが増えた仕事でも活躍してくれる。それを実感できた1週間でした。
Jabraのフラッグシップ機だけあり、機能は盛りだくさんなんですが、その多機能さを感じさせない使い勝手の良さ。もしかすると、それこそが「Elite 85t」(2万6800円)の最大の魅力なのかもしれません。高いマイク性能による各種機能の優秀さを、手にした初日からスムーズに楽しめる。だからこそ移動時だけや音楽を聴きたい時だけじゃなく、あらゆるシーンで着けたいと思える。それって、かなりスゴイことなんじゃないかと。うーん、これホントいいわ。
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<文/円道秀和(&GP) 写真/田口陽介>