時計は今や、時間を把握するという本来の目的より、自分を表現するツールとしての側面が大きな割合を占めていますが、時計本来の楽しみを最大限味わえる機械式時計は今なお根強い人気を誇ります。とはいえ雲上ブランドへ代表されるように、上を見ればキリがない世界。おいそれと手が出るものでもありません。
そんな中、KARL-LEIMON(カルレイモン)の「CLASSIC 38」は、時計を所有する喜びを満たせる完成度を誇りながらも6万円台で買えるリーズナブルな値ごろ感が魅力。そこで本モデルを、『教養としての腕時計選び』の著者であり、多くの媒体で時計記事を執筆する時計ジャーナリストの篠田哲生さんとともに、魅力を深堀りしていきます。
■“質”と“格”のちょうど良いところ。新進気鋭の時計ブランド「カルレイモン」とは
新進気鋭のブランドであるカルレイモンは、クラウドファンディングをベースに人気を誇り、日本に留学してきたふたりの若者によって誕生しました。“Back To Classic”をテーマとして掲げ、“手頃な価格の高級クラシック時計”を数多く届けています。
特徴的なのは、ブランドのアイコンとして月の運行を表示する「ムーンフェイズ」機構を採用していること。クラシカルなドレスウォッチには欠かせない要素であるとし、リーズナブルかつ高級感のあるムーンフェイズウォッチを模索し続けています。
■カルレイモンのモットー“Back To Classic”を体現する1本がここにある
“クラシックは手に届かない存在になってはならない”という精神のもと、カルレイモンより満を持して機械式時計の新作「CLASSIC 38」が登場しました。これまでクオーツ式のみで展開してきた同ブランドにおいて、チャレンジングかつターニングポイントとなる一品。
正統派のドレスウォッチとしてシンプルな3針、バーインデックス、レザーストラップは価格からは考えられない魅力をたずさえています。そこで今回、カルレイモンのアイコンでもあるムーンフェイズを非搭載してまで機械式時計にこだわった理由やポイントについて、時計ジャーナリストの篠田哲生さんに聞いてみました。
■時計ジャーナリスト・篠田哲生さんは「CLASSIC 38」をどう見るか
「クラウドファンディングから登場した時計というのが現代的な新しいアプローチですよね」と篠田さん。これまでの時計業界に見られたような伝統や有名時計師による価値観とは違い、「ブランドのファンになり一緒に成長していけるような楽しみ方がある」といいます。
ある意味でクラウドファンディングを通じた“体験”も新時代の腕時計の選び方なのです。
■視点1:シンプルゆえに、差がつくダイヤルの完成度
さて、ここからは「CLASSIC 38」のディテールを見ていきましょう。まずはダイヤルですが、針の質感・長さともに美しくバランスのとれたデザインに仕上がっています。
「ムーブメントのトルクを最大限に活かした、いいプロポーションですよね。これで針が短すぎたり、細すぎたりするとバランスがおかしくなる。クラシックウォッチの黄金比をしっかり取り入れてるな、という印象を受けました」(篠田)
「あと、個人的には風防とダイヤルのクリアランスが狭い方が、ドレスウォッチとして好きなんですよね。ここもきっちりと攻めていて好印象です。あとカレンダー機能はナシでもいいかと思いましたが、カルレイモンさん曰く『時計離れしている若者たちに使ってほしい』という思いがあるとのこと。たしかに、カレンダーなしはマニアックすぎるので実用性を優先しているのは納得です」(篠田)
■視点2:ケース径38mmの小ぶりなサイズ感が、クラシカルな佇まいに拍車をかける
ケースサイズについても、今回ドレスウォッチとしてカルレイモンはこだわったといいますが、篠田さんはどう見たのでしょうか。
「実に使い勝手が良いサイズ感ですよね。これより小さいと昨今の時計で自分を主張するには少々物足りないし、40mmを超えるとドレスウォッチとしていいプロポーションを保てないので、ちょうど良いバランスだと思います」(篠田)
スーツでの着用などからも、主張しすぎずエレガントに魅せる高バランスを実現しています。
ただ、コロナ禍も相まってスーツを着る機会も減り、ドレスウォッチの必要性は薄まっているともいわれますが、篠田さん曰く「時計はライフスタイルに寄り添うものですし、靴を履き替えるようにTPOを考えて着けなければいけません。たしかにスーツスタイルは減ったかもしれませんが、結婚式やパーティなどの場にそぐわない時計はかっこ悪い。しっかりとしたドレスウォッチを1本は持っておきたいですね」とのこと。エントリー価格でありつつ、長く愛用できるデザインなのもプラスと話します。
■視点3:本格たる所以。厚さ8mm台を実現する高品質ムーブメント
ケース厚もスクリューバックにしないことで8.8mmという薄さになっています。ここについても、「スクリューバックにしないことでコストを抑えつつ、薄さも両立している。時計はお金をかければかけるほど高級にはなっていきますが、カルレイモンは『どこにコストをかけて、どこにかけないか』がハッキリしている。エントリーユーザーのために価格を抑えるための工夫が随所に見られます」と篠田さんは感じたそう。
「今回、その薄さを実現できた要因として大きいのがmiyotaのムーブメントcal.9015。こうした日本製のムーブメントにこだわるのも、リーズナブルだけど高品質にこだわっているのがわかります」(篠田)
■視点4:細部にもこだわり抜いたカルレイモンの真摯なモノづくり
「ここまで話したように素材や仕上げなど、細かい部分もしっかりこだわっている時計だと思うのですが、新鋭ブランドは製造工場を見つけるのが大変だとよく聞きます。国内の工場は大手が押さえていることも多く、どうやってここまで作り込んでいるのかと考えると、それは情熱をもった交渉をしてきたんだろうなと。その努力が時計から垣間見えるのもカルレイモンの魅力だと思います」(篠田)
「ダイヤルカラーもよく見ると、ただのホワイトではなくニュアンスが効いている。価格を抑えるための努力と、高級感を見せる努力が随所に詰まっています」(篠田)
■視点5:価格もこなれている。ありそうでなかった完成度の高い1本
「クラウドファンディング発、というのは本当に新時代を感じさせる時計の在り方だと思います。すでに伝統ある高価な時計を手に入れるのではなく、ユーザーがブランドと一緒に成長していける楽しみがある」と篠田さんがいうように、マイクロブランドならではの物語性、真摯なモノづくり、そして変わらない時計の価値を追い求めるカルレイモン。6万円台で本格的なドレスウォッチが楽しめるという驚きの価値を提供する「CLASSIC 38」は、新たな時計のスタンダードになるかもしれません。
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さて、篠田さんと深掘りしたカルレイモン「CLASSIC 38」は、実際に手にとって見るとその価値に引き込まれるはず。取り扱い店舗である、最寄りの時計専門店「オンタイム/ムーヴ」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
<取材・文/三宅隆 写真/湯浅立志 スタイリング/宇田川雄一>