いつかは手に入れたい、と思っていた憧れのグランドセイコー。その“いつか”がいよいよ訪れたならば、どうするだろうか。ムーブメントは、機能は、デザインは…と、見るべきポイントも多く、実に悩ましい。もちろん、悩む時間すら楽しいものだが、せっかくの機会を逃してしまっては本末転倒。
特にグランドセイコーともなれば、それらすべてが最高峰レベルに仕上がっているのは言うまでもない。ならばいっそのこと、“色”を軸に選んでみてはいかがだろうか。
■汎用性もクラス感も十分。ブルーのグランドセイコーが腕元を上品に彩る
赤は情熱や明るさ、黄色は幸運や希望といったイメージがあるように、色の持つパワーは計り知れない。腕時計ともなれば毎日身につけるモノだけに、特に気を配るべきポイントといえよう。そこでおすすめしたいのが”青”だ。
穏やか、信頼などのイメージを持つとされる青は、まさに働きざかりの男たちにうってつけ。そもそもブルーダイヤル自体、シーンや着こなしを選ばない万能カラー。グランドセイコーにおいても、多くのモデルに採用されていることから、その人気の高さが窺える。
定番こそ至高。末永く時を刻み、共に過ごす相棒だからこそ、“間違いない”カラーを選ぶのは必要不可欠といえるだろう。
■ブルーダイヤルの色味を正しく理解して、納得の1本を見つけよう
とはいえ、ひと口に“青”といっても、深海のような黒に近い青もあれば、雲ひとつない空のような爽やかな青もある。より具体的にいえば、上記の相関図が示すように「紫っぽい青」や「緑っぽい青」など、同じ青色の中でも幅があることが分かる。何を隠そう、この“幅”こそ、グランドセイコーが他のブランドと一線を画する深みと味わいを腕時計にもたらしているのだ。
そこで本稿では、ブルーダイヤルをあしらった選りすぐりの4モデルにフォーカス。1本のみを吟味するだけでは決して見えてこなかった、色の奥深き世界をご覧いただこう。
「SBGA439」:質実剛健。黒にほど近い“深みブルー”が腕元に品格をもたらす
1本目の「SBGA439」は、グランドセイコーが手掛けるブルーダイヤルの中で最も暗く・深みのある“ミッドナイトブルー”をあしらったモデルだ。月に照らされた夜空のように、限りなく黒に近い青色は、品格や貫禄、美しさを恣にするだろう。
ブルーも良いけどブラックも捨てがたい…と決めかねていた人にとっては、まさに一挙両得できるカラーともいえる。
また、本モデルはグランドセイコーの中でも最もバランスの取れた王道デザイン「ヘリテージコレクション」の1本であることも忘れてはならない。独自のデザイン文法“セイコースタイル”の系譜を引き継ぐ逸品だけに、完成度の高さは群を抜いている。また、ザラツ研磨による鏡面仕上げと筋目仕上げのメリハリが効いたケース面は、ダイヤルカラーの美しさを引き出すのに一役買っている。
なお、ムーブメントはグランドセイコーが誇る独自機構の自動巻スプリングドライブを採用。約72時間のパワーリザーブを備えるという実用面においても抜かりなし。「まずはグランドセイコーらしい1本を」と考えている人にとって、大本命になること請け合いだ。
スーツ5万3900円、シャツ5390円/ともにザ・スーツカンパニー、iPhoneケース1万1000円/グラマス、コインケース5000円/坂本ラヂヲ
「SBGP013」:トレンドに左右されないタイムレスなネイビーウオッチを探しているなら
腕時計は、今や時間を把握する道具ではなく、自分を表現するモノとしての意味合いが強い。それだけに、ついつい個性を出そうと過度にトレンドを求めてしまう傾向がある。それはそれで腕時計を楽しむひとつの手段ではあるが、大人たるもの、“型”となる1本を備えておきたいところ。
「SBGP013」はさきほどの「SBGA439」よりもやや明るいブルーフェイス。一般的にイメージする「ネイビー」に仕上がっており、その端正で上品な顔立ちは時代を超えて支持されるだろう。
「トレンドに左右されないモノ」は、ともすれば“無難なモノ”と言い換えることもできるが、「SBGP013」にいたっては当てはまらない。ムーブメントはグランドセイコー専用クオーツキャリバー「9F85」を搭載。年差±10秒という驚異的な精度に加えて、時針のみを動かして時差を修正する「時針単独時差修正機能」を有するなど、海外への移動も視野に入れた充実っぷり。
また、「SBGP013」は1本目同様、ヘリテージコレクションの中のひとつ。本質的なモノの良さを秘めた逸品として、あらゆるシーンで大いに活躍してくれるだろう。
スーツ5万3900円、シャツ5390円、ネクタイ6490円/すべてザ・スーツカンパニー
「SBGE255」:スポーティなGMTモデルに色鮮やかなブルーで爽やかさを加味
1本目、2本目と、グランドセイコーの真髄であるヘリテージコレクションが続いたが、一転してスポーティな1本がお目見え。昨今、ビジネスシーンのカジュアル化に伴い、スポーツウオッチが盛り上がりを見せている。とはいえ、大人世代が着けるにはそれなりにハードルも高く、センスが問われるジャンルでもある。そこで紹介したいのが、「SBGE255」だ。
程良くツヤのあるセラミックスベゼルと色鮮やかなブルーダイヤルのコンビネーションで統一感を出しつつ、コバルトブルーのGMT針がひとさじの遊び心をプラス。構成要素が多いGMTウオッチも、グランドセイコーの手にかかればこれ程までにスタイリッシュに仕上がるのだ。
なお、本モデルは幅広いシーンで活躍する「スポーツコレクション」のひとつに含まれており、実用面においても見逃せないポイントがある。ひとつは、ベゼルの素材だ。ただのセラミックスではなく、ジルコニア・セラミックスという圧倒的な強度と靭性を持つ素材を採用している。なぜなら、最も傷付きやすいのがベゼル部分だから。使用感のあるグランドセイコーもグッとくるものの、素材本来の美しさを永く楽しめるというのはやはり魅力的だ。
もうひとつはりゅうずの位置。4時位置にあしらうことで、アクティブなシーンでも手首の動きを妨げず、煩わしさは皆無だ。
実用的かつスマートな1本、まさに美味しいとこ取りな「SBGE255」を手に入れるときが来た。
「SBGX265」:紳士的かつ美麗なブルーダイヤルが腕元を品良く主張
最後に紹介する「SBGX265」は、現行のラインナップの中では最も明るいブルーダイヤルを採用したモデルだ。とはいえ、若々しすぎたり、浮いてしまったり…なんてことにはならないのが、セイコースタイル所以。
あくまで紳士的かつ美麗な輝きを放つ色彩豊かなブルーは、あらゆるシーンや着こなしに馴染むこと請け合いだ。装飾性を最小限に抑えた潔さも心地良く、時代が変わろうとも、普遍的な価値を持ち続けるだろう。
今回ラインナップされた4本のうち、ケース径が最も小さい「SBGX265」。他のモデルが軒並み40mm台なのに対し、本モデルはなんと37.0mm。日本人の細い手首に馴染みやすく、それでいて品良く主張してくれる小径ウオッチは、時計業界全体でトレンド真っ盛り。
当然、流行り廃りは繰り返すものではあるが、「SBGX265」に限ってはそれには該当しない。セイコースタイルに則った“完成形”ともいえる意匠は、時が流れても廃れることがないからだ。
■違いの分かる男たちへ贈る、4つの“青い”グランドセイコー
奥深き“色”の世界。これまで誤差程度に感じられた色の変化も、今やその違いがはっきりと分かるはず。これは、腕時計と極限まで向き合ってきたグランドセイコーのクラフトマンシップそのものといえるだろう。
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今回ピックアップした4モデルにあしらわれたブルーダイヤルは、いずれもグランドセイコーで人気のカラー。そのため、同じブルーダイヤルを使用したモデルが他に存在している場合もある。気になる人は、グランドセイコーが認定する2つのオンラインストア「neel セレクトショップ」と「腕時計のななぷれ」にて公開中の特設ページを覗いてみてほしい。
さて、どの“青”を選ぼうか。
>> 腕時計のななぷれ
<取材・文/若澤創 写真/江藤義典 スタイリング/宇田川雄一>