バッグとひと口に言っても多種多彩で、ビジネスバッグ、トラベルバッグ、アウトドアバッグ…求められる機能によってそれぞれ専門性がある。カメラバッグもそのひとつだ。
では、カメラバッグに求められる機能とは? 答えは明確。いかなる環境下においても携行するカメラを守り、快適に使用できる機能性を有すること。
まさにそれを具現化した本格カメラバッグブランドが「GW-PRO」。最新の素材と技術を取り入れ、常に時代のニーズに合わせて進化してきたハイエンドカメラバッグブランドだ。
とはいえ実際にカメラバッグとしての機能はどうなのか、そしてプロダクトとして魅力があるのか? 今回、広告写真の世界で活躍するフォトグラファーの須田俊哉さんに使ってもらい、GW-PROの使い勝手とその背景にあるモノづくりに迫った。
フォトグラファー・須田俊哉|1978年埼玉県生まれ。2004年、ニューヨークにてフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。2008年に拠点を東京に移し、広告写真を中心に活動。ロケ撮影ではSony αのRシリーズを歴代使用。ポートレイトと風景を好み、高性能過ぎず描写に味のある単焦点レンズが好み。休日は山や渓流で遊ぶことが多い。現在、クライミング修行中
■時代に即して進化した歴史あるカメラバッグブランド
「バッグ単体で持った瞬間、軽さに驚きましたね! カメラバッグ特有の野暮ったさがない上に、プロテクションは必要にして十分。無駄にオーバー過ぎないので嵩張らず、重くならず、取り回しはいいですね」
動き回るロケ撮影ではバックパック型のカメラバッグを使うという須田さんが、今回使ったのはGW-PROの中でも汎用性の高い「マルチモードバックパック20」(4万9800円/ダイレクト販売価格)。
「GW-PRO」とは、ハクバ写真産業が展開するハイエンドカメラバッグのブランド。その歴史は長く、1981年に元祖となる「Godwin」が誕生。2003年にリブランディングされ、フラッグシップカメラバッグ「GW-PRO」として生まれ変わって今に至る。常に時代のニーズに合わせ、最新の素材と技術を取り入れて進化しているのが特徴だ。
今回新しくなった「GW-PRO」は、あらゆる環境下で快適に使用できる機能性と、いい意味でカメラバッグらしくない現代的なデザインを追求。シンプルで、どんなファッションにも合わせやすくなっている。
■ちょうどいいサイズで、収納しやすく取り出しやすい構造
「スリムな見た目以上に入りますね。容量が20リットルということなので、撮影機材がちゃんと収まるか心配でしたが杞憂に終わりました。ロケでよく使う70-200mmのレンズにフードを使う状態で付けたまま、横向きで入れられるのは便利。しかも深さがちょうど良くて、望遠レンズ以外、手持ちのレンズは立てて入れられるから取り出しやすくていいですね」
収納したのは、24-70mmレンズと70-200mmを装着したミラーレス一眼を各1台ずつと、交換レンズ2本、スピードライト1台。これだけ入れても、レンズをもう1本、もしくは予備バッテリーやクリーニングアイテムを入れられる余裕があるほど。収納量としては申し分ない。
大型のカメラケースのように、背面がフルオープンになるので機材を入れやすく、取り出しやすいのもいい。背面フラップには、アクセサリー類の収納に便利なメッシュポケットを採用。見やすく区分けして入れられるのもメリットだ。
だだしマチはないので、記録メディアやレンズクリーナーといった、内部を圧迫しないものがいいだろう。
その背面フラップ内側には、15インチまでのノートPCが入るスリーブを備える。現場でクライアントに写真を見せたり、撮った写真を転送して保存したり、もはやノートPCも撮影機材のひとつ。カメラバッグにも、ノートPC用のスリーブは欠かせない装備といえる。
ちなみにワンサイズ上の「マルチモードバックパック30」(5万2800円/ダイレクト販売価格)は、16インチまでのノートPCを収納可能だ。
ところで「重いPCを入れたら、背面のファスナーが開いてしまうのでは?」という疑問を持つかもしれないが、もちろん対処済み。開口部トップにマグネットバックルを装備し、負荷が掛かってもファスナーが開かない仕様になっている。
■マルチモードバックパックの真価はクイックアクセスにあり!
機材を収納したら、ここからがマルチモードバックパックの本領発揮だ。
その名の通り、天面、両側面、背面の4方向からメインコンパートメントへマルチにアクセスでき、機材が取り出しやすくなっている。
使用頻度が一番高い天面(トップ)部分の使い勝手について、
「アクセス口が大きく開くから、取り出しやすくていいですね。カメラがファスナーに引っ掛かってストレスが溜まることもないし快適」
と須田さん。そして、こうも続ける。
「レンズを付けたまま、ハイエンド機や縦位置グリップを装着したカメラの出し入れができるのもいい。意外とレンズを外して収納しなきゃいけないカメラバッグが多いからポイントは高いですね」
大型のカメラを入れたらフラップが閉まらないなんて心配も無用。ファインダー部分にもゆとりがあって、フロントバックルを緩めれば収納容量を拡張できるエキスパンダブル仕様なので、難なく閉じられるのだ。
そして何といってもマルチモードバックパックにおける従来モデルからの進化点が、サイドからカメラを取り出せる“Lクイックアクセス”。
「バックパックを下ろさずにアクセスできる上、フードを付けた状態の70-200mmのレンズをそのまま取り出せるのはうれしい! カメラを取り出してからフードを装着するってわずかな時間ですが、撮影してる合間だと意外と面倒くさいんですよね」
以前はコの字型ファスナーで開閉する方式だったが、L字型のファスナーとマグネットフラップを組み合わせることで、クイックなアクションで中に素早くアクセスできるようになったのだ。
■機材を入れた状態で背負っても肩への負担が少ない
カメラバッグだから機材を衝撃から守るのは当然だが、それを背負う人のことも考えられていなければカメラバッグとしては不十分かもしれない。
「これは背負い心地良好! 機材をギッシリ入れると結構重いし、撮影ポイントを探しながら歩くと肩に負担がかかりますが、ショルダーハーネスは太くてクッション性が高く、肩に食い込む感じがないですね。別売りのウエストベルトを着けてしっかりと締めると、肩への負担がさらに軽減します」
それもそのはず。「マルチモードバックパック20」は、日本人の体型にフィットするエルゴノミクスカーブ形状のショルダーハーネスを採用。クッション性が高く、肩にかかる圧力を分散させ、痛みや疲労を軽減。硬さや厚み、形状の改良を行い、肩にかかる最大圧力を従来モデルから約24%抑え、背負い心地の快適性が向上したのだ。
須田さんも言っているが、別売りの「GW-PRO ウエストベルト」(3850円/ダイレクト販売価格)を装着すれば、よりフィット感が増し、加重が分散されて肩や背中への負担が減る。長時間背負うことが予想される人は、あらかじめ用意しておいた方が無難だろう。
「これも別売りですが、ショルダーハーネスには『くびの負担がZEROフック』をつけるためのループがあるので、カメラを出したまま長く歩く状況にも適しています」
■趣味の渓流釣りでも重宝するタフな機能
須田さんはプライベートでは、山と渓谷をこよなく愛するアウトドアズマン。時間を見つけては、渓流釣りにロッククライミングに自然と戯れる。
沢を歩いたり、山を下ったり、目的地に行くまで数時間かかることもある。そんな時に、背負い心地の良さが活きる。しかし、街中にしろアウトドアにしろ、荷物を背負って歩けば当然背面が蒸れる。
そんなことも想定済み。バッグ背面には、背中とバッグの間に空気の流れをつくるエアベンチレーションシステムを採用。汗や蒸れを抑え、長時間の装着でも快適な撮影をサポートするのだ。
「撮影の話になっちゃいますが、普段の撮影ではキャリー型のカメラバッグを使うことが多いんですよ。だから、背面にキャリーバッグのハンドルを貫通させられるスリーブがあるのはすごく便利! バックパックにサブの機材を入れたり、出張用の旅行道具を詰めたり、多様性のある使い方ができます」
そう。エアベンチレーションシステムとバッグの間には、キャリーバッグのハンドルを貫通させられるキャリーオンスリーブを装備。しかも、ハンドルからの抜き差しや積み下ろしの際に便利なよう、サイドハンドルも装備しているというから至れり尽くせり! 痒いところに手が届く仕様になっている。
歩行に関するサポート機能はほかにも充実。
バックパックを体にフィットさせ、安定感を増すチェストベルトは、マグネット式のバックルを採用。スライドさせれば簡単に外せ、近づければ瞬時にロックされるから、片手で着脱ができる。ちょっとしたことだが、両手を使うか、片手で済むかは、時に重要な役割をもたらすこともある。
しかも、不要な場合にはチェストベルトごとショルダーハーネスから取り外すことが可能。一見、そこまで必要? と思うほどのキメ細やかさは、長年、ユーザーに寄り添ってきたからこそ培われてきたノウハウといえるだろう。
「そもそもカメラバッグをアウトドアで使ってもいいのか?」という疑問もあろうが、それはナンセンスな質問かもしれない。なぜなら、フォトグラファーの仕事はスタジオや街中のみならず、あらゆる場所が撮影領域。当然、タフな環境で使うことも想定されているから。
ちなみにGW-PROは、すべて日本でデザイン・設計をし、タクティカルな軍用バッグの開発、生産を行っているファクトリーで生産。だからこそ、作りに妥協はなく、“過酷な自然環境下から街中まであらゆる状況に調和し、快適に使用できる機能性”を持つと明言できるのだ。
作りだけでなく、それは素材選びにも通底している。
「表生地がしっかりと撥水するので汚れが付きにくく、付いてもすぐに落ちるからいいですね」
それもそのはず「マルチモードバックパック20」の本体素材には、アウトドアブランドのバッグパックでも使用されている「X-Pac X50」を使用。
X-Pac X50とは、セイルクロス(ヨットの帆)でシェア世界一を誇るDIMENSION-POLYANT社が開発した、表生地+X-PLY(ファイバー)+裏生地という3種類の素材を特殊な方法で貼り合わせた高性能素材。表面素材にはミルスペックの500Dコーデュラナイロンを使用し、強度・軽さ・防水性を兼ね備えているのだ。
渓流に入れば水がかかったり、岩場で擦れたりすることも想定されるが、いうまでもなく何の問題もない。
■行動範囲に合わせて自在にレイアウト変更ができる
渓谷に入る時に持っていく荷物は最小限。状況に合わせて、荷物を入れ替える。そんな時に威力を発揮するのが、自由度の高いディバイダーシステム。
仕切りは面ファスナーで簡単に移動できるので、収納物に応じて細かく位置を調整したり、着脱したりすることで、さまざまな種類の機材や収納物に対応可能だ。
上下2気室風にしたり、9分割にしたり、動画用の撮影機材を収納したり、ウエア類やアウトドア用品を入れたり…用途と収納物によって、自在にレイアウトできるのが魅力だ。
「渓流釣りに行く時はそんなに道具を持っていかないので、必要最小限のカメラ機材と沢でコーヒーを淹れるセットぐらい。この20リットルで余裕で入りますね」
■細部に渡って施された細かな配慮
本体の両サイドにはスリムなポケットを装備。今回は短いロッドを入れたが、撮影の時は三脚やストロボスタンドの携行も可能。脚をポケットに入れるだけでは落ちてしまうため、上部には固定用のベルトが格納され、しっかりとキープできるような工夫も施されている。
またマチが広がるので、ボトルを収納することも可能だ。中身を詰めすぎるとサイドポケットのスペースが狭くなり、ボトルが入らなくなるので注意が必要。サイドからアクセスする方法もあるので、もしボトルを携行する場合は、中に収納するという手もある。
ファスナーには信頼性の高いYKK社製の止水ファスナーを、引き手にはオリジナルのU字型プラーを採用。グローブ装着時でも指をかけやすく、スムーズな開閉をサポートしてくれる。
「慣れると素早く片手で開け閉めできる、マグネットバックルは便利ですね!」
メインフラップを開閉するためのバックルは、ドイツFIDLOCK社製のマグネットバックル“V-Buckle”を採用。プルタブを手前に引くだけでバックルがリリースされ、バックル同士を近づけるとお互いが吸い寄せられ瞬時に接続されるのだ。
アウトドアバックパック並みの機能を持ちながらより整然と使える「マルチモードバックパック」は、アクセスだけでなく、使い方もマルチモードといえるのだ。
■オンからオフまで、マルチに使えるカメラバッグ
「これカメラバッグですよね?」とツッコミたくなるほど、細部に至るまで考え抜かれた「マルチモードバックパック20」。背面に軽量ワイヤーフレームを内蔵し、多数の開口部を有しながらも、機材の重さに耐え型崩れしにくい構造になっている。
底面には防汚性と防水性に優れたターポリンを採用し、フットスタンドを装備。しっかりと自立し、底面が直接地面に接するのを防ぐ。14枚の中仕切りと、取り外し可能なチェストベルトが付属する。
なおGW-PROは、「マルチモードバックパック」2種類のほか、セキュリティ面を考慮した「リアゲートバックパック20」、機材の出し入れがよりしやすい「フェイスゲートバックパック20」、移動シーンにより2つの携行スタイルを選べる「フェイスゲートローラーBP」、大容量の機材の可搬性が高い「エアポートローラー」に、ショルダーバッグ2モデルの全8モデルを用意。
それぞれ特徴が異なるので、自分のスタイルに合わせてチョイスしたい。
(写真/富山龍太郎 文/澤村尚徳<&GP> )