洗車の仕方は分かるけど、クルマをピカピカにするポリッシャーの使い方がわからないという人は多いのではないでしょうか?
そこで今回、クルマ磨きのマイスター、岸澤達也さんにポリッシャーの使い方について教えてもらいました。使用したのは、ビギナーでも手軽に扱えるKYOCERA「18V 充電式サンダポリッシャー BRSE-1800L1」。同社には、プロユーザーにも愛用者の多い「RSE-1250」という、100V電源のコード付きモデルがあるが、より手軽に扱えるようにと、充電式になった最新モデルだ。
使い方を教えてもらうのは、磨き初心者の『&GP』編集長澤村。このかた一度もポリッシャーを触ったことのないズブの素人です。果たして、問題なく磨くことができるのか? その工程を追いました!
磨きマイスター|Refine 岸澤達也/1998年埼玉県生まれ。高校卒業後、自動車関連の仕事に従事。Refine代表の会社設立を機に退職し、参画。練馬区石神井に店舗を構え、「研磨・コーティングに関して、いかなる状態であっても適切な処理・
磨きビギナー|&GP編集長 澤村尚徳/愛車は、30年落ちのゴルフ2 マディソン。クルマに乗るのは好きだが、洗車は苦手。専門店で洗車の仕方を学んだが、実際に洗車するのは半年に1度程度だ。今回初めてポリッシャーでの磨き体験をする。
■KYOCERAのポリッシャーの特徴は?
クルマのボディを磨く電動ポリッシャーには、いろいろなタイプがあります。その主な違いはバフの動き方にあり、「シングルアクション」「ギヤアクション」、そして「ダブルアクション」が一般的。
プロはこれらの動きをする電動ポリッシャーを、それぞれのキズの状態に合わせて駆使しますが、一般ユーザーには使いこなせない場合も。というのも、「シングルアクション」や「ギヤアクション」は磨きキズを残してしまうことがあり、かえって塗装面にダメージを残す場合があるためです。
その点、今回使用したKYOCERA「BRSE-1800L1」18V充電式ポリッシャーはダブルアクションを採用しており、バフの中心が楕円に動く偏芯運動をするため、ポリッシャー初心者でも扱いやすく、しかも仕上がりが美しいのが特徴。
また、サイズがコンパクトで、充電式(リチウムイオンバッテリー)を採用したコードレスタイプなので、電源のないカーポートなどでも気軽に使うことができるんです。
非常に扱いやすいサイズで、ウレタンのスポンジバフのほか、電池パック、充電器がセット。コンパクトに収納できる収納バッグも用意され、保管しやすいのも嬉しい。
バッテリーを充電器にセットすればすぐに充電が始まり、インジケーターランプがバッテリーの充電状態を教えてくれます。
用途に合わせて変えられる別売のオプションも用意されています。
本体から反時計回りで、状態の悪い塗装面を整えるのに適している羊毛バフ。低弾力性の外径150mmのスポンジバフは、磨きの仕上げ工程に使います。右上の布バフは、磨きの中間的な工程に使用。今回は、羊毛バフと、スポンジバフで済んでしまったため使いませんでした。
BRSE-1800L1のデザインは、扱いやすいだけでなく、作業中断時の置きやすさも考慮。手に取りやすいので磨き作業もスムーズに進められて、 バフにゴミなどが付着するのも防げる機能的なデザインといえます。
■STEP1:教えてマイスター基本的なこと!どう使ったらいい?
いよいよ磨き開始! 初めて電動ポリッシャーを使う澤村にとっては、そもそも電動ポッリシャーが何をするものなのかも分からないので、岸澤マイスターに基本的なことから教えてもらいました。
澤村:今日はよろしくお願いいたします!早速使い方を教えてほしいんですが、まずどうすればいいんですか?
岸澤:スポンジバフを、本体のマジック面にペタッと貼り付けてください。
澤村:こんな柔らかくて、磨けるんですか?
岸澤:クリア層の状態にもよりますが、初めて使う人であれば、この程度の柔らかさのバフの方が使いやすいと思います。プロは毛足の長い羊毛バフでがっつり削りますけど、初心者は付属のバフの方が失敗しないでしょう。
澤村:なんか武器みたいでかっこいいですね笑
岸澤:まあ、研磨の仕事においては一種の武器みたいなもんですから。
澤村:これダイヤルついているんですけど、なんですか?
岸澤:動きのトルクを調節するダイヤルです。1から6まで変えることができるんですよ。1が弱くて、6が強くなります
澤村:じゃあ、どれくらいの強さを選べばいいですか?
岸澤:いきなり強くすると動きについていけないと思いますし、クリア層がかなり薄くなってしまっているので、まずは様子を見ながら3くらいでやってみましょうか。
澤村:基本的なことですいません。コレはどうやって持ったらいいんですか?
岸澤:グリップを握り、動き始めた時にポリッシャーの動きをコントロールできるように、もう一方の手を軽く前の方に当てておきましょう! BRSE-1800L1は握りやすい形状になってるので、手がピッタリハマるところでいいと思いますよ。
澤村:なるほど、じゃあ早速やっていきますね!
岸澤:ちょっと待った! バフを塗装面に当てる時に注意点があります。
澤村:どうすればいいんですか?
岸澤:まずはポリッシャーを自然に置くような感じで、バフ面全体が均等に当たるようにします。バフが斜めに当たってしまうと、クリア層が偏って研磨される恐れがあるので気をつけてください。次に、バフが半分くらい凹む強さで、ボディにポリッシャーを押しつけます。あまり強く押しつけると磨きキズや研磨の偏りが出てしまいますので。
■STEP2:いよいよ実践!何からすればいい?
今回、BRSE-1800L1で磨くビギナー澤村の愛車は、30年落ちという超年代もの。ボディはところどころ塗装が薄くなっており、色も変わっています。
澤村:このクルマ、30年落ちなんですけど、大丈夫ですかね…?」
岸澤:場所によってはクリア層がかなり痩せてしまっているので、しっかりと残っているボンネットで試してみましょうか。クリア層が残っていない部分を磨いてしまうと、地金が出てしまいます。ツヤがまったくない部分は、研磨しない方がいいでしょう!
澤村:ドキドキしますが、お願いします。何から始めればいいですか?
岸澤:磨く前には、まずはしっかりと洗車を行います。できたら、鉄粉除去剤などを使って、塗装面に突き刺さったブレーキダストを除去しておくとベストです。今回は、体験ということですので、油膜の除去だけやっておきましょう。
岸澤:ちなみに研磨に使うコンパウンドは、「粗目」「中目」「細目」がありますが、磨き初心者の場合は中粗目から始めるのが無難です。
岸澤:バフにコンパウンドを適量付けて、それを磨くエリアにスタンプのように押しつけていきます。こうすると、コンパウンドを伸ばすのがラクです。磨くエリアはあまり広く設定せず、30cm四方くらいずつ磨いていきます」
澤村:こんな感じですか!
澤村:では、スイッチ入れます! おっ、最初はソフトで徐々に強く回転していくんですね。想像よりもスムーズに軽く動かすことができます。動かし方にコツってあるんですか?
岸澤:電動ポリシャーは、タテ→ヨコ→タテというように“井の字”形に動かしていくことで、磨きキズが残りにくくなります。コンパウンドはバフの熱によって乾いていきますので、磨いた後に確認したい場合は、少し水を吹き付ければ軽く拭き取ることができますよ。
■STEP3:オプションの羊毛バフで徹底研磨!
付属の標準スポンジバフで磨いてみたものの、さすがに30年モノの塗装面は手強い様子。
長年放置したせいで、かなり深い傷が残っていると判断した岸澤さんは、オプションの羊毛バフに交換して、研磨作業を続けることに。
澤村:このバフは、どういう効果があるんですか?
岸澤:羊毛バフは、毛足が長いので仕上げ磨き用と誤解されがちなのですが、実は深い傷を磨いたり、クリア層にあるシミなどを取るのに適したバフなんです! とはいえ、羊毛バフは粗く研磨するイメージなのでトルク(回転数)が高いと研磨時にボディがかなり熱を持つため、クリア層が飛んでしまうことがあります。そのため、3~4のダイヤルでゆっくりじっくり、広すぎない範囲で研磨することをオススメします。
バフを変えて、再び先ほどの工程を繰り返すことで、徐々に変化が現れ、テープで囲った磨き部分が、明らかに艶やかになり始めました。
岸澤:じゃあ、今度はオプションの方のスポンジバフに変えて、徐々にクリア層を整えていきます。こんな感じで澤村さんもやってみてください。
澤村:なんだか、慣れてきたら、電動ポリッシャーが楽しくなってきました笑
岸澤:スポンジバフでの研磨はトルク(回転数)が高いと、細かい小傷などがうまく磨けません。なので羊毛バフと同様に3~4でゆっくりじっくり、広すぎない範囲で研磨してくださいね。
数分間ほど研磨したところで、効果の確認。テープで囲った研磨した所を光に当ててみると…明らかに反射具合に差が! 研磨したクリア面に映る光源は、輪郭がクッキリしていることが分かります。
岸澤:まだ、ワックスもコーティングもしていませんが、どれくらい違うか、水をかけてみると分かりますよ。いかがですか?
澤村:おお! 水玉ができるじゃないですか! ワックスもかけてないのに…。
岸澤:本来のクリア層は表面がなだらかで、その上に目に見えない小さな凹凸面があるんです。そこに汚れが溜まったり、傷がつくことで、水が付着するとベタっとした状態になってしまいます。でも表面を研磨するとクリア層の表面が整い、キメが細かくなって水を自然と弾くんですよ。
■STEP4:ポリッシャーをかける上での注意点は?
澤村:BRSE-1800L1が使いやすいということもあって、思ったほどポリッシャーを使った研磨が難しくない気がしてきました。でも、注意しなければいけないこともあるんですよね?
岸澤:そうですね、いくつか注意しなければいけないことはあります。まず、クルマのボディにはアクセントラインという凹凸があるのですが、こういう部分はポリッシャーを当てないようにしてください。
澤村:じゃあ、どうやって磨くんですか?
岸澤:スポンジにコンパウンドを付けて、手で磨いていきましょう。同様に、ボディの角の部分も電動ポリッシャーでは均一に磨けないので、手で磨いてやります。
澤村:こういう無塗装の樹脂バンパーやフェンダーはOKですか?
岸澤:無塗装の樹脂パーツは、まずコンパウンド自体がNGです。ここにコンパウンドが付いてしまうと、白く残って落とすのが大変です。樹脂パーツ用のクリーナーやコーティング剤があるので、それを使ってください。ちなみに、これらの周辺を電動ポリッシャーで磨く場合は、塗装マスキングテープを貼っておけば、コンパウンドが付くことがありませんよ。
■初めてのポリッシャー体験を終えて
ということで、磨きマイスターに教えてもらいながら、KYOCERA「BRSE-1800L1」でボディの研磨をやってみました。
澤村:電動工具を使うので、ビギナーでは塗装が削れてしまうのではないか…という心配もありましたが、コツさえ覚えればそれも杞憂でした。
岸澤:ポリッシャー本体自体は重くなく、使いやすい重量感。にもかかわらず、重いポリッシャーではないのに安定感があり、ヘッド部分が研磨の際に暴れないため安心して使えました。またこれまでのコードレスのポリッシャーは研磨時のトルクが物足りない印象がありましたが、一切感じることがなかったです。一般のユーザーの方が使っても、プロに近い研磨が出来るポリッシャーだと感じました。
バッテリーはフル充電・ダイヤル4の状態で約14分持ちますが、例えばボンネット1枚を研磨するのに、14分間連続して使うことは稀。初めての方は、ボンネットやドアなど一度にすべてを研磨するのではなく、それぞれのパーツごとに丁寧にポリッシングすることをオススメします。
澤村:BRSE-1800L1は、大きさがジャストサイズということもありますが、握りやすく手に馴染んで、自然とボディ表面を磨けました。さらに動きがプロのようにスムーズではないビギナーには、コード付きよりも充電式がもってこいじゃないでしょうか。コードが絡むこともなく、初めて使っても軽快に取り回せましたし。またトルク調節ができるので、一気に磨き過ぎるという心配もなく、作業の慣れ具合や塗装の状態に合わせて、使うことができそうです。
愛車を電動ポリッシャーで磨くのは敷居が高そう…と思っている人が多いと思いますが、実際にやってみると、手で磨くよりもスピーディな上に、しかも作業後の効果は期待以上。愛車をいつまでも美しく保ちたいという人は、KYOCERA「BRSE-1800L1」が1台あれば重宝しそうです!
(取材・文/山崎友貴 写真/村田尚之 協力/英国車専門店ダビデ)