パナソニックのカーナビブランドである「ストラーダ」は2003年に誕生。今年で20周年を迎え、現在では誰もが知るトップブランドへと成長した。今回はそんなストラーダの軌跡をさまざまな視点から見てみよう。
パナソニックが初めて発売した市販カーナビは1993年の「プレステージナビ CN-V1000D(約60万円!)」。そこからは毎年のように改良が行われ、多機能化するとともに機種バリエーションも拡大。
10年後の2003年には「ストラーダ」が誕生する。それまで同社は「e-navi」「e-navi jr.」「P-navi」「デルNAVI」など機種ごとに愛称があり、これを統一してブランドを確立、さらに発展させようとしたわけだ。
初号機となったのは普及価格帯のDVDナビ、「CN-DV250D(オンダッシュモニター型)」と「CN-DV150D(インダッシュモニター型)」。翌年の2004年には上級のHDDナビが「ストラーダFクラス」も登場する。ちなみに〝F”はファーストクラスの意味だ。
そこから先の進化は写真を見てのとおりで、記録メディアはHDD→SD→メモリーへと移り変わり、ボディはモニター別体型→2DINサイズ・AV一体型→フローティングスタイル・AV一体型へと変化していった。
そしてデビューから20年を経た2023年6月現在、ストラーダの総販売台数は550万台を達成! 多くの人のカーライフを支える頼もしい存在となっている。
■独自の進化を遂げたストラーダ20年の軌跡
▼2003年 ストラーダ初号機誕生(CN-DV250D)
1DINサイズの本体にインダッシュタイプの7インチモニターを搭載したスタイリッシュモデル。独自の「SD覚えてルート」機能によってDVDビデオと地図を同時に使用できるようになる。
▼2004年 HDDカーナビ「F class」誕生(CN-HDS950MD)
高精細なWVGAディスプレイや大容量の30GB HDD、当時の人気メディアであるMDプレーヤーなどを搭載し、5.1chサラウンドシステムの構築にも対応。
▼2005年 簡単ツートップメニュー搭載(CN-HDS630RD)
HDDを搭載したAV一体型モデルで、現在も続くツートップメニューを初採用。バックカメラを付属しており、オプションには地デジチューナーを用意。
▼2006年 地デジチューナー標準搭載(CN-HDS960TD)
業界で初めてアナログテレビチューナーに加えて地デジチューナーを標準装備(別体ユニット付属)したストラーダFクラスのHDD機。SDカードを介してさまざまなデータを利用できるSD Link機能も搭載。
▼2007年 総販売台数100万台達成!(CN-HDS965TD)
地デジチューナーを4チューナー×4アンテナタイプとして受信感度が大幅に高められた。携帯電話でハンズフリー通話や音楽再生ができるStrada Linkも実現。
▼2008年 Strada Link/音の匠(CN-HX1000D)
Strada Linkにより携帯電話を介して自宅のエアコンや照明、DVDレコーダーを遠隔操作可能に。現在も人気機能のサウンドチューン「音の匠」を初搭載。
▼2009年 ハイビジョン対応ワイドXGA搭載(CN-HX3000D)
高精細なWXGAディスプレイを搭載し、地デジやブルーレイディスクの映像をハイビジョン画質で楽しめるように。立体音響が楽しめるSRS CS Auto Deluxeも内蔵。
▼2010年 ストラーダ ポケット(CN-MP700VD-K)
PNDブームに乗ってポータブル型のストラーダ「ストラーダポケット」も展開。7型ディスプレイ搭載で上質感にこだわったルックスやスペックを備える。
▼2011年 総販売台数200万台達成!(CN-H500WD)
200mmワイドサイズ対応ボディ。静電タッチパネルのモーションコントロール、手を近づけると現れるダイレクトランチャーなど使い勝手を高める機能を持つ。
▼2012年 電動開閉式オンダッシュナビ(CN-Z500D)
電動開閉式のオンダッシュ型モニターを付属し、専用リモコンでも操作できる独特のスタイル。加工作業を施すことで純正品のようにジャストフィットする。
▼2013年 みちびき(準天頂衛星)対応(CN-R300WD)
準天頂衛星「みちびき」に対応し、自車位置測位精度を向上。オプションにはフロントインフォディスプレイと呼ばれるヘッドアップディスプレイを用意。
▼2014年 ブルーレイディスクプレーヤー内蔵(CN-RX01WD)
現在も使われているゼンリン製の地図データベースを採用し、ナビエンジンを一新。さらにブルーレイディスクプレーヤーを初めて本体に内蔵した。
▼2015年 VICS WIDE標準搭載(CN-RX02WD)
CN-RX01WDとほぼ同じスペックを持つが、詳細な渋滞情報を得られる「VICS WIDE」の受信に対応。オプションを接続せずに高い回避ルート探索を実現。
▼2016年 9型フローティング大画面誕生(CN-F1D)
フローティングスタイルのDYNABIGディスプレイ初採用モデル。9型大画面のAV一体型ナビでありながら優れた汎用性を実現した画期的な1台だ。
▼2017年 総販売台数300万台達成!(CN-F1XD)
DYNABIGディスプレイが左右角度の調整もできるDYNABIGスイングディスプレイへと進化。画面の視認性が一段と向上した。
▼2018年 ブリリアントブラックビジョン搭載(CN-F1XVD)
新たにブリリアントブラックビジョンを採用して、さらなる高画質を実現。しかも解像度は大幅に高められた(800×480→1280×720)。
▼2019年 10型フローティング大画面(CN-F1X10BD)
狭額縁化によって10型を実現。さらに大画面化。全モデルにDYNABIGスイングディスプレイを搭載。
▼2020年 有機EL×ブルーレイ(CN-F1X10BLD)
汎用性の高さを確保しつつも10型有機ELディスプレイ搭載で大画面&超高画質化を実現。
▼2021年 高画質HD地図(CN-F1X10BHD)
HD解像度に合わせて開発したHD美次元マップを採用。リアルで緻密な表現となっている。
▼2022年〜最新モデル(CN-F1X10BGD)
最新モデルとなる現行型。スマホを介して自宅のレコーダーを操作し、リモートで映像再生ができる「レコーダーリンク機能」を備えている
■開発者に聞く!インタビューで分かった開発の裏側
初号機「CN-DV250D」の誕生から20年間、開発現場でストラーダの成長を見届けてきた荻島さんと近年のモデルで開発を担当している徳倉さん。今回、製品開発の裏側で起こった苦労をうかがった。
建物をリアルに描く「スーパーライブビュー」の開発に苦戦!
ーまず、ストラーダが生まれた経緯について教えていただけますか?
荻島 それまでは「〇〇ナビ」といった名前をそれぞれの機種ごとに使っていたのですが、一貫したブランドの商品づくりをしていこうという思いの基に「ストラーダ」というブランドを立ち上げました。イタリア語で「道」という意味があります。
ーストラーダというブランドはどんなところを大切にしているのですか?
荻島 目的地への適切なルートを探索して、分かりやすく案内をするという基本機能を磨くことで、安心してドライブをしていただくことがベースにあります。その上で、車の中でも多彩なメディアで楽しめるなどクルマでの移動を安心で安全、そして楽しいものにしていきたいですね。20年以上経っても、まだ改良、改善の余地はあると考えています。また、新しいメディアにもいち早くキャッチアップしていきたいです。
ーストラーダは使いやすさを追求してきたというイメージがあるのですが。
荻島 わかりやすさ、操作のしやすさというのはずっとこだわっていることです。高機能に進化してきたこともあって使いやすさを高めるために2005年からはナビ機能とオーディオ機能を画面の左右で分けた簡単ツートップメニューを採用しています。
ー初代機はDVDナビでありながらSDを利用することでDVD再生とルート案内が同時にできるのが特徴でしたね。
荻島 DVDを再生するとナビ機能が使えない、という課題があり、必要なエリアの地図だけSDに収録して、DVDの再生とナビゲーションの両立を図るという苦肉の策でした。
ーその後のストラーダの進化で大きかったのはどんなところですか?
荻島 2004年のFクラスでメディアがHDDになり、地図表現やルート案内など機能が大きく広がりました。
ーFクラスという上級シリーズが新しくできたのは、ニーズを感じられたからですか?
荻島 当時は最新メディアを搭載した高機能モデルのニーズが高く、ユーザーの満足度を高めるラグジュアリーなブランドとしてFクラスが誕生しました。
ーすると地デジを展開する場合にはFクラスが向いているということになりますね。
荻島 はい。その後2006年にFクラスに地デジを標準装備ました。このときは地デジチューナーを内蔵できず別体のものを付属したのですが、それでも当時は他社に先駆けた思い切った試みでした。開発にはかなりの時間と労力がかかり、家庭用のテレビを手がけているAVC事業部と開発を進めました。
ーストラーダといえば地図の見やすさも特徴ですが?
荻島 2004年の初代Fクラスでは高速道路で周囲の建物がリアルに描かれるハイウェイスーパーライブビューをすごく苦労して作った覚えがあります。実写を基にビルのテクスチャや看板などを再現しており、このような地図を各社競合していたのです。
ーそういえばストラーダは途中で地図がガラッと変わったことがありましたね。
荻島 サンヨーとパナソニックが一緒になった2014年のタイミングでプラットフォームを一新し、ゼンリン製地図に切り替わりました。それまでは各社の地図データをベースに、パナソニックが作成したオリジナルのものでしたが、ゼンリンさんと安全運転に役立つ機能を共同開発していこうという判断で変更しました。結果、市街地図のエリアも広がり、安全・安心運転サポート機能が誕生しました。
ーやはり地図や案内図の見せ方というのは時代とともに変わってきたのですか?
荻島 昔は紙地図を使っていたお客様が多かったので、紙地図に対して違和感のないものにするという点に気を遣っていましたが、最近はそれがスマホに変わってきました。いずれにしてもお客様の使いやすさを意識しています。
ー最近のストラーダの地図は色味が変わっていて国道が赤ではないですよね?
徳倉 2021年のHD美次元マップの開発時に、地図デザインも刷新してトレンドに合わせることにしました。デザインさんと細部までこだわり開発してきたので、新しいストラーダの地図色として良いものにできたのではないでしょうか。ストラーダチューン機能で地図色を「クラシック」に設定いただければ、過去のデザインを踏襲した国道が赤で、高速道路が青という色味に変えられます。
ー3D市街地図などは作るのが大変ではないですか?
徳倉 非常に大変でした。3Dにすると描画範囲が増え、ビルなどの描画物が多くなり、そのまま描画するとスクロールが遅くなります。使い勝手を確保しつつ、精細な描画の調整に苦労しました。プラットフォームを一新した際、3D描画ができるようになり、3Dゲームと同等の描画手法を取り入れています。
ー2021年に地図のプラットフォームを作り直したのはどんな理由ですか?
徳倉 HD解像度の地図描画をはじめ、新しく追加する機能や改善したい機能を考えると、以前の地図プラットフォームでは拡張できませんでしたので一新することにしました。
ー最近のストラーダはレスポンスも良くなっていますよね。
荻島 やはりスマホの地図アプリを皆さん日頃から使われていますので、操作感やレスポンスなど、違和感が出ないようにしています。また、スマホのナビアプリに負けないように、鮮度の高い、新しいデータをインターネットから取り入れるようなことも考えていきたいですね。
ーこれまでの製品に搭載した機能で思ったほど人気が出なかったものはありますか?
荻島 携帯電話を使って家のエアコンを動かしたり鍵を閉めたりできるストラーダリンク機能を苦労して立ち上げました。今ならマッチしたかもしれませんが、2008年では時代に対して早すぎました。また、ルート案内などを映せるダッシュボード取り付け型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)も2013年に発売して話題にはなりましたが、大きな販売には結び付きませんでした。その後、フロントウィンドウに投影する純正装着品が一般的になりましたね。
大ヒットしたフローティングモデルは革新的で社内でも賛否両論
ー逆に思った以上にヒットしたものもあるんですよね?
荻島 初代F1Dを出したときに他社の大画面ナビはすべてインパネ埋め込みのジャストフィットタイプだったので、出っ張っているフローティングは…という声が多くて社内でも賛否両論でした。それが今では一つのジャンルになるほど広がりました。
ー最後に未来のストラーダについて教えてください。
徳倉 Apple CarPlayやAndroid Autoも含め、スマホナビアプリが増えてきているのですが、これまでの日本オリジナルナビもまだまだ求めている方が多いと思います。それらをハイブリッド化してオンラインで新しい情報を取り込めると良いですね。
荻島 カーナビはテレビもビデオもラジオも、リビングにあるAV機器がすべて入っているすごいモノではあるのですが、そこからさらに発展してクルマとドライバーの仲立ちになるような存在になると良いと思います。
■最新モデルでは2024年度版地図(※)を搭載!
パナソニック ストラーダ
CN-F1X10BGD
実勢価格:26万円前後
ストラーダの最新・最上級モデル。業界トップレベルの高画質を誇る10型有機ELディスプレイを装備するうえ、フローティングスタイルのDYNBIGスイングディスプレイによって500車種以上の国産車に取り付けが可能だ。11月メーカー出荷分より2024年度版の地図データを搭載
※11月メーカー出荷分より。一部を除き2023年4月現在の情報
<取材・文/浜先秀彰 撮影/澤田和久>