新たな年を迎え、日常生活にようやく体が順応してきたかと思えば、そろそろ新生活を意識しはじめる頃。今年こそはと意気込む人も多いだろうが、先の読めない昨今、何かと不安になることもあるだろう。
そこでおすすめしたいのが腕時計だ。毎日身につけるモノだからこそ、ふとしたときに持ち主の心の支えとなってくれるから。中でも、長く深い歴史を有し、信念のあるブランドの腕時計を選ぶとなお良し。たとえば、149年の歴史を誇るBULOVA(ブローバ)はいかがだろうか?
ブローバは、1875年にチェコスロバキアからニューヨークへ渡ったジョセフ・ブローバ氏が開いた宝飾店がはじまりとされている。1911年、従業員のひとりであるジョン・バラード氏の提案により、本格的に時計製造を開始。1912年には早くもスイスに工場を備え、「アキュトロン」に代表されるような、世界初の腕時計を数多く手掛けるブランドへと成長を遂げる。
リスクを恐れずに挑戦するブローバ氏の“チャレンジ精神”は、時代が変わった今なお、学ぶべきことは多い。
■新たな年の幕開けにブローバを。時代をリードしてきた傑作品が集結!
「量よりも品質、生産性よりも完璧さの追求」をモットーに掲げるブローバ。アメリカ国内の巨大な需要を満たしつつ、クオリティを維持し続けるのはそう簡単な話ではない。今回紹介する6本の腕時計は、そんな激動の時代の中で生み出された傑作ばかり。量か質か。ぜひ自身の目で確かめてほしい。
【INDEX】
【1本目】“悪魔”の異名を持つダイバーズ
【2本目】近未来的フォルムが新鮮な名作ウォッチ
【3本目】月へ降り立った歴史的な1本
【4本目】ユニークな顔立ちの本格クロノ
【5本目】市場に出回らなかった伝説のダイバーズ
【6本目】ブローバが誇る傑作ミリタリーウォッチ
【その他】復刻モデルキャンペーンについて
【1本目】なぜ“悪魔”?ダイバーズの常識を覆す防水性を実現した1本とは
腕時計は歴史的にみても、ツールとしてさまざまなシーンで活用されてきたことで知られている。時代によっては、軍用におけるポジションが非常に高かったのは想像に難くない。そしてダイバーズウォッチも、それらの文脈において必要不可欠なモノとして、あらゆるブランドが取り組んできたツールウォッチのひとつだ。
米軍との関わりの中で高性能な水中時計を手掛けてきたブローバは、写真のオリジナルモデルである「オーシャノグラファー」を、ダイビング用にデザインされたダイバーズウォッチとして1970年に発表した。
1970年代の水中時計は、90m防水が一般的。その中で約200mの防水性を手掛けたブローバの技術力には驚くばかりだ。
ちなみに、本モデルは“デビルダイバー”の愛称で呼ばれているのをご存じだろうか。その理由は、200m(正確には202m)をフィートに変換すると“666フィート”になるから。
「666」という数字は聖書の黙示録で「獣の数字」と呼ばれ、不吉な数字を意味することから、デビルの名を冠するユニークなダイバーズウォッチへと変貌を遂げた。
そんな、愛称があるほど高い人気を誇るデビルダイバーは、「アーカイブスシリーズ オーシャノグラファー “デビルダイバー” 96B343」として、2018年に復刻を遂げている。
「666ft」の表記や、視認性に優れる立体的なインデックス、蓄光塗料を塗布した太めの針など、細かなディテールはオリジナルモデルを忠実に再現。
ケース径については、オリジナルと同じ44mmのものと、ひと周りコンパクトな41mmの2タイプを用意(着用モデルは41mm)。日本人の細い腕とマッチするようにアップデートされているのもうれしいポイントだ。
【2本目】LEDをいち早く腕時計に採用。近未来的フォルムが物欲をくすぐる
1970年代、時針・分針・秒針で時刻を表す時計のあり方を一変させたデジタル時計が登場。それは時刻表示のみならず、腕時計のデザインフォーマットを変えた時計史における転換点のひとつだ。当然、ブローバはこの期を逃さなかった。それどころか、今なお新鮮に感じられるデザインの「コンピュートロン」を開発。
コンピュートロンのディスプレイに使用されているのは、我々の日常生活と密接な関わりのあるLED(発光ダイオード)だ。当時、ガラス製の筒を使ったニキシー管に変わるモノとして、電車内の行き先案内などに徐々に使われはじめた頃。
ブローバは、クォーツムーブメントとデジタル表示技術を組み合わせ、さらにLEDを活用するという、時代の一歩先を行く腕時計を開発したのである。
技術もさることながら、やはり注目するべきはこの斬新なデザインだろう。時刻表示部分を斜めにレイアウトした台形デザインは近未来的であり、自由で勢いのあった時代の息遣いを感じさせる。
ケース右側のプッシュボタンを押すことで点灯させるギミックは、オリジナルモデルを踏襲。なお、現行の「アーカイブスシリーズ コンピュートロン 96C139」に使用されるLEDは最新素材に置き換わっており、当時の技術では難しかった青色のLEDを搭載している。
時刻はプッシュボタンを押さないことには表示されないので、もはやシルバーアクセサリーとして、着こなしのワンポイントに活用するのも大いにアリ。宝飾店からはじまったブローバとしては、ある意味正しい使い方といえるかもしれない。
ジャケット 2万1890円、ニット 7590円、スラックス 1万890円/すべてユニバーサルランゲージ(スーツスクエア TOKYO 銀座店)
【3本目】技術力の高さを裏付ける1本。人類の歴史的瞬間を経験した腕時計がある
ブローバの高度な時計開発技術はNASAからも注目され、1950年半ばから約20年に渡り、宇宙開発に携わった過去を持つ。
1969年、人類初の月面着陸を果たした際の宇宙船「アポロ11号」にはブローバ製計時装置が数多く積み込まれており、信頼と実績を獲得。そして1971年、「アポロ15号」の船長が月面で使用したのが、この「ルナ パイロット クロノグラフ」だった。
ペンケース 4400円、ミニウォレット 6050円/ともにシーカー×ユニバーサルランゲージ(スーツスクエア TOKYO 銀座店)、メガネ 12万9470円/ザ・スペクタル(グローブスペックス ストア)
そんな歴史的名品の復刻にあたる「アーカイブスシリーズ ルナ パイロット クロノグラフ 98K112」。旧ロゴの「BULOVA」の文字や、デイト表示のない文字盤は忠実にオリジナルモデルを再現している。
ムーブメントには、1/20秒で計測可能な独自の「ハイパフォーマンスクォーツ クロノグラフムーブメント(NP20)」を搭載。通常のクォーツの約8倍の振動数を誇り、月差±5秒の高精度を実現している。
流行り廃りのないデザインでありながら、中身は最新式。まさに良いとこどりな1本に仕上がっている。ゆえに、身につけるシーンも限定されることなく、幅広い着こなしに馴染んでくれるはず。
また、本モデルにはカーフレザーを使用したNATOストラップが付属されている。気分を変えたいときやコーディネートに合わせて、SS素材とはひと味違う表情を楽しんでみてはいかがだろうか。
スーツ 6万5890円、シャツ 5390円、ネクタイ 6490円/すべてユニバーサルランゲージ(スーツスクエア TOKYO 銀座店)、その他スタイリスト私物
【4本目】ユニークな顔立ちは健在。自動巻きクロノの黎明期を支えた本格派
愛称がその後のモデル名に影響することは少なくないが、ブローバは特別多いのではないだろうか。先の“デビルダイバー”に続き、この「アーカイブスシリーズ “パーキングメーター” 98B390」もそのひとつだ。
モデル名の由来は、その名の通り、1970年代当時のパーキングメーターとダイヤルのデザインが似ていたから。ちなみに、ブローバには米国旗に由来する「スターズ&ストライプス」や「サーフボード」といった愛称を持つ腕時計も存在している。
メガネ 12万9470円/ザ・スペクタル(グローブスペックス ストア)、その他スタイリスト私物
しかし、見た目や名前のユニークさとは裏腹に、この「パーキングメーター」はスターズ&ストライプスやサーフボードと並んでブローバのクロノグラフ黄金時代を支えた重要な存在。
なぜなら、パーキングメーターのオリジナルモデルである「31008-6W」は世界初の系譜を継ぐ“クロノマチック”ムーブメントを搭載していたから。プッシュボタンとリューズが対角に配置されたスタイリングは、クロノマチックを搭載するモデルに共通する特徴だ。
なお、復刻モデルはオリジナルとは異なり、クォーツムーブメントが搭載されているが「31008-6W」のデザインを忠実に再現するため、本来的には必要のない6時位置に、デュアルタイムリング操作用のリューズを新たに追加するというこだわりだ。
ユニークな顔立ちと、ブルーグレーのステッチを施した肉厚なレザーストラップからなるパーキングメーターは、シンプルなスタイリングの個性出しにうってつけ。白や黒といったモノトーンの着こなしが多い人にこそ試してほしい1本だ。
ニット 7590円、パンツ 1万4190円/ともにユニバーサルランゲージ(スーツスクエア TOKYO 銀座店)
【5本目】市販には至らなかったブローバの“隠れ名器”が満を持して登場!
第二次世界大戦中、ブローバは米軍からの要請に応じて、MIL規格(※)に準拠した腕時計を数多く開発し、提供してきた。その関係性は大戦後も続き、1950年代には米海軍潜水実験隊が着用するための、頑丈な潜水士専用時計の開発がスタート。
ブローバはいくつかのプロトタイプを作り、最終的には392フィート(約119.5m)までの深度テストに成功している。米軍に待ち望まれた時計として、試作品は最終調整に入るものの、開発は途中でストップしてしまう。理由はいくつかあるだろうが、確証には至っていない。いずれにせよ「MIL-SHIPS-W-2181」潜水用プロトタイプは数本のみの製造にとどまり、市場に出回ることもなかった。
※アメリカ国防総省が、調達する物資に対して過酷な環境でも問題なく利用できるように定められている品質基準
そして、ある種伝説的なダイバーズウォッチとなった「MIL-SHIPS-W-2181」は、2021年に「アーカイブスシリーズ “ミルシップ” 98A266」として復活を遂げた。
最大の特徴は、6時位置にあしらわれた「モイスチャーインジゲーター」だろう。黄みがかったブラウンとホワイトの2色で構成された紙片は、オリジナルモデルを忠実に再現している。
機能としては、ケース内部に水分を検出すると、インジゲーターがブラウンからブルーへ変化するというもの。商品ではなく、あくまで実地用としての意味合いが強かった本モデルらしい機能といえるだろう。
ケース径はオリジナル同様41mm。ダイヤル、ベゼルともにブラックで構成されているがゆえに、40mmを超えてくるサイズ感ながらも、腕元にすんなりと馴染んでくれること請け合いだ。
また、ストラップには装着感に優れ、なおかつミリタリー感に拍車をかけるナイロン素材を採用している点も見逃せない。
【6本目】オリジナルの意匠はそのままに。現代風にアレンジを加えた傑作ミリタリーウォッチ
先程の「ミルシップ」に続き、「アーカイブスシリーズ ミリタリー 96A245」のオリジナルモデルである「A-15」も市販化には至らなかったモノ。1944年、つまり第二次世界大戦中に開発されたパイロットウォッチで、わずか500本しか生産されなかった幻のミリタリーウォッチだ。
メガネ 19万7890円/ザ・スペクタル(グローブスペックス ストア)、その他すべてスタイリスト私物
本モデルの最大の特徴は、2つの回転インナーリングを搭載していること。2時位置のリューズと4時位置のリューズを操作することで、経過時間を計測したり、異なるタイムゾーンを計測したりといった、パイロットに必要な情報を文字盤から得られるのだ。
現代において、実際にこの機能を駆使する機会はそうそうないはずなのに、パイロットウォッチというのは、なぜこうも男心をくすぐるのだろうか。
現代の「A-15」である「アーカイブスシリーズ ミリタリー 96A245」は、当時の風合いはそのままに、42時間のパワーリザーブを誇る自動巻きムーブメントや、風防にはサファイアガラスを採用するなど、全体の機能面においてスペックアップを果たしている。
なお、ケース径は42mmゆえ、存在感は抜群。季節が進むに従って、その質実剛健な佇まいに頼る日が増えることを考えると、検討する価値は大いにある。
■時計史に名を遺す逸品がズラり。ブローバのアーカイブスシリーズで2024年の好スタートを切ろう
今回は、ブローバ歴代の傑作時計を現代風にアップデートを施した「アーカイブスシリーズ」を中心に紹介してきた。それぞれに共通しているのは、新しい技術や発明をいち早く取り入れたこと。それは、失敗を恐れるのではなく、良い腕時計を作るために挑戦した姿勢そのものといえるだろう。
2024年はまだはじまったばかり。ブローバの“チャレンジ精神”溢れる腕時計を身につけて、好スタートを切ろうではないか。
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ブローバは現在、復刻モデルキャンペーンを開催中。期間中に対象店舗及び公式ECショップにてブローバの腕時計を購入すると、特典でオリジナル今治ハンドタオルをプレゼント。
さらに、東京と大阪にあるブローバの旗艦店、シチズン フラッグシップ ストアで対象モデルを購入すれば、折りたたみボストンバッグ or ウォッチケースも合わせてプレゼント。期間は2024年2月23日(金)〜2024年3月24日(日)まで。
<取材・文/若澤 創 写真/村本祥一(BYTHEWAY) スタイリング/宇田川 雄一>