我々のワードローブとして欠かせない革靴。ビジネスマンにとっては、人となりをあらわすモノであると同時に、自分を奮い立たせてくれるモノでもある。もちろん、普段着においても有用なのはいうまでもない。つまるところ、革靴は単なるファッションアイテムの域を超え、暮らしに欠かせない存在なのだ。
折しも季節は春。何かとドレスアップするイベントやセレモニーの多い季節ゆえ、革靴を新調するにはこれ以上ないタイミングといえる。そこで注目してほしいのが、今年で46年目を迎えるSCOTCH GRAIN(スコッチグレイン)の存在。日本人の足を知り尽くす彼らが生み出す“逸足”は、一生を共にする価値がある。
■江戸の伝統息づく街、墨田発祥。スコッチグレインの真摯なモノづくり
1978年、ヒロカワ製靴のオリジナルブランドとして誕生したスコッチグレイン。靴の製造から管理まで一貫して墨田区の自社工場で行う、正真正銘のジャパンブランドだ。
そもそもヒロカワ製靴自体、今年で60年を迎える老舗。スコッチグレインを立ち上げるまでは、百貨店やアパレルブランドのOEMを通し、靴作りにおけるノウハウや実績を十数年に渡って地道に積み重ねてきた。
建築同様、モノづくりは基礎が命。そういう意味でも、スコッチグレインのシューズは、我々の信頼に足るブランドなのはいうまでもない。
「靴は生活の中の道具である」というのは、スコッチグレインが掲げる企業理念から抜粋したもの。特に革靴ともなれば、見た目の美しさやデザイン性に気を取られがちだが、それ自体が主役ではなく、あくまで身につける人こそが主役であると再認識させられる。
より具体的にいえば、常に“今の日本人”の足に合う靴作りを徹底して行っていることが挙げられるだろう。長年蓄積された膨大な顧客データをもとに、数多くのラスト(木型)を開発。「革靴は重くて痛い」という従来のイメージを覆す履き心地は、こうした努力の結晶なのだ。
そして、スコッチグレインを語る上で欠かせないのがグッドイヤーウェルト製法へのこだわりだ。履き心地や耐久性に優れるだけでなく、ソールの交換修理を可能にするこの製法。工程も複雑かつ技術が必要とされるため、多くのブランドは一部の靴にのみ使われるが、スコッチグレインは手掛けた靴すべてにグッドイヤーウェルト製法を用いている。
それに、これだけ手が込んでいるにも関わらず、価格は3万円〜5万円台で多くを占めている。これは、材料の仕入れから作業工程に至るまで、徹底的に効率化を図ることで実現したもの。本来、仕事道具にコストパフォーマンスを求めるのは野暮かもしれないが、物価高の時代に心強い味方となること請け合いだ。
まさに灯台下暗し。スコッチグレインのような“本当に良いモノ”を手掛けるブランドは、実は我々の身近に存在しているのかもしれない。
■「ぜひ一度、履いてみてください」革靴ブランドひしめく青山・表参道エリアに新店舗を出す理由
東京の青山・表参道といえば、数々のブランドやショップが軒を連ねる、カルチャーとファッションの発信地として知られるエリア。
3月15日にオープンした「スコッチグレイン表参道店」は青山通りに面しており、多くの人が行き交う場所に位置している。なぜ今、新店舗を出すにいたったのか。その理由を聞いてみた。
友光さん(以下敬称略) ここ数年のコロナ禍を経て、生活様式が一変。ビジネスシーンもよりカジュアル化しました。革靴の存在意義を含め、私達はこのままで良いのだろうかと改めて考えたんですね。
友光 私達はお客様の膨大なデータをもとに靴を製作しております。ゆえに、時代に即した靴をお届けしているという自負がありますが、流行の発信地であるこのエリアに出店し、そこで得たことをモノづくりに活かしていくことで、新たな一面をお見せできるのではないかと思っています。
スコッチグレインのショップは、銀座本店や表参道店をはじめとする直営店と、アウトレット店の合わせて9店舗。ほかの店舗にはない魅力のひとつとして、3月15日のオープンに合わせた表参道店限定のシューズが存在するそうだ。
友光 オープンを記念して、青山・表参道エリアをイメージした限定モデルを開発しました。今後、お客様との関わりの中で、どういう靴が求められているかをしっかりと見極め、企画に活かして参ります。既存モデルはもちろんですが、限定モデルにもご期待ください。
友光 実は、店舗周辺には国内外の紳士靴ブランドが数多く存在しています。ですので、買いまわりや履き比べなども大歓迎! ぜひ気軽に遊びに来てください。
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ひとたび足を踏み入れれば、店内いっぱいに広がった革の香りが鼻をくすぐる。新旧カルチャーが入り交じる青山・表参道エリアに、国産を貫く日本ブランドがあるのは実に誇らしい。
■定番から限定まで。新たな相棒に相応しい“逸足”をスコッチグレインで見つけた
さて、ここからはスコッチグレインが手掛ける珠玉の革靴を厳選してご紹介。ブランドを代表する定番品や店舗限定モデルなど、長く愛せる一足をチョイスした。
【1足目】履くたび、溢れる高揚感。上質なカーフレザーを贅沢に使用した表参道限定モデル「OS-2412 BL」
本作は、スコッチグレイン表参道店のオープンに合わせて企画した限定モデル。革靴の顔ともいえるアッパーには、フランスの名門タンナー“アノネイ社”が手掛ける高級カーフレザー、ボカルーを使用。そこに、“モルトドレッシング”というスコッチグレイン独自の艶出し技法を組み合わせることで、高級感に拍車をかけている。
素材選びから加工までこだわり抜いたレザーの存在感を最大限活かすために、ツーピースモデルを採用。
また、S字を描く特徴的なステッチは通称“スワンネック”と呼ばれ、シンプルなデザインの中にひとさじの遊び心が加えられている。
ゆえに、スーツに代表されるビズスタイルと特に相性が良く、我々の足元をエレガントに彩ってくれるだろう。
なお、足が直接触れる裏革にはフランスのデュプイ社産のレザーを使用し、アウトソールには琥珀をイメージしたアンバーソールをあしらっている。見えない部分にも決して手を抜かず真摯に取り組む姿勢は、ジャパンブランドとしての矜持が垣間見える。
ジャケット 1万9800円、スラックス 1万890円/ともにオリヒカ(オリヒカ 池袋東口店)、その他スタイリスト私物
【2足目】パーティーシーンにも有用。足元を華やかに彩るセミブローグシューズ「オデッサⅡ 920DBR」
モデル名に「Ⅱ」とあるように、「オデッサ」はスコッチグレインの中でも定番と称される看板シリーズだ。その理由のひとつとして有力なのが、「T20‐E」というブランド独自の木型にある。
細身ながらも日本人の足に合うように設計されているため、窮屈感は皆無。若干ロングノーズにすることで、バランスの取れたスタイリッシュなシルエットに仕上がっているのだ。
多くのファンを獲得したオデッサ。ゆえに、同様の木型を用いた新たなシューズが期待されたのは想像に難くない。「オデッサⅡ」は、そうした声に応えるような形で誕生したモデルだ。
ストレートチップの品行方正なオデッサに対し、オデッサⅡは、つま先のメダリオンと縫合線のブローギングが目を引く華やかなセミグローブシューズへと生まれ変わっている。
ベージュのセットアップに白のニットで抜け感を意識した軽快な装いに、オデッサⅡのエレガントな佇まいがマッチしている。
なお、つま先のメダリオンの形状は“ラムズボーン”と呼ばれる伝統的なものを採用。ブローギングについても、場所によって穴の構成を変えるなど、細部にもこだわりが感じられる一足だ。
ジャケット 2万1890円、ニット 6490円、スラックス 1万890円/すべてユニバーサルランゲージ(スーツスクエア TOKYO 銀座店)、その他スタイリスト私物
【3足目】オン・オフ活躍する万能シューズ。着こなしの格上げにもひと役買う「ウェールズ 89BL」
前述の通り、コロナ禍を経てビジネススタイルのカジュアル化が加速。足元もそれに合わせて、より気軽に履けるデザインのモノが人気を博している。具体的にいえば、「ウェールズ」のような、オンもオフも活躍するシューズだ。
Uチップシューズにカテゴライズされる本作。狩猟靴やカントリーシューズ、あるいはゴルフシューズなど、革靴でありながらもアクティブなシーンで活躍してきた歴史を有する。ゆえに、本来的にはフォーマルというよりはカジュアル向けのシューズだが、前述の通り、現代のトレンドを鑑みればビジネスシーンでの活用も大いにアリだ。
アッパーに使われているのは、英国の老舗タンナー、チャールズ・F・ステッド社が製造するリージェンシーカーフ。いわゆるオイルドレザーで、風合いが良く、使い込むほどに味わい深い変化を楽しめるだろう。
なお、アウトソールにはコルクチップを混ぜたオリジナルソールを使用。グリップ力の高さと返りの良さが特徴で、歩きやすさに定評がある。
カジュアルにもビジネスにも対応できる懐の深さがあるウェールズ。ゆえに、ブレザーにオリーブのチノパンを合わせた小気味良いアメトラスタイルとも相性抜群だ。
ほかにも、デニムやスラックス、ミリタリーパンツなど、ボトムスを選ばない汎用性に優れるデザインに仕上がっているので、1足あれば何かと重宝するだろう。
ジャケット 4万3890円、スラックス 1万4190円/ともにユニバーサルランゲージ(スーツスクエア TOKYO 銀座店)、ニット 5390円/オリヒカ(オリヒカ 池袋東口店)、その他スタイリスト私物
■この春、スコッチグレインとともに新たな一歩を踏み出そう
正直、革靴選びは難しい。デザイン、品格、信頼性など、求めればキリがない。しかし、我々にはスコッチグレインがある。“メイド・イン墨田”を貫き、日本人に似合う革靴を熟練の職人が一足ずつ丁寧に仕上げている。その完成度の高さたるや、もはやいうに及ばず。
とはいえ、スコッチグレインの真骨頂は履いてこそ。ぜひ、スコッチグレイン表参道店に足を運んでいただき、その履き心地を実感してほしい。
>> スコッチグレイン
<取材・文/若澤 創 写真/村本祥一(BYTHEWAY) スタイリング/宇田川 雄一>