昼夜を問わず、空を見上げる機会がめっきり減った。スマホが普及してからは特に、太陽の位置や月の満ち欠けを気にするわけもなく、まして星ともなれば数年見ていない(そもそも見えない)という人も少なくないのではないだろうか。
そこで注目してほしいのが、三大流星群のひとつ“ペルセウス座流星群”をダイヤルに宿すオリエントスター「M34」コレクションの存在。中でも「M34 F8 DATE」は、国産ブランドらしい技術の粋を集めた新たなフラッグシップモデルだ。
思わず見惚れてしまう完成度を誇る1本。忙しい日々を送る現代人にとって、「空を見上げること」のような“心のゆとり”を持つ重要性は、決して無視できない。
■悠久の時を紡いできた星の如く、長きにわたって愛せる「Mコレクションズ」とは
オリエントスターの歴史は、1950年に遡る。当時、多摩計器株式会社として腕時計の製造を開始すると、翌年にはオリエント時計株式会社へと社名を変更。「輝ける星」をイメージした時計ブランド、オリエントスターが誕生する。2017年にはセイコーエプソンと統合し、シリコン製がんぎ車を使用した独自のムーブメントを開発するなど、ユニークな腕時計を数多く手掛けてきた。
そして2023年、オリエントスターはこれまでのラインナップを見直し、コレクション体系を再編。ワンランク上の高品質な腕時計を求める人々に向けて誕生したのが、「Mコレクションズ」だ。
“M”とは、フランスの天文学者シャルル・メシエが作成した星雲、星団、銀河のカタログの頭文字から取ったもの。悠久の時を紡いできた星のように、“不変であり普遍”の価値を届けたいというオリエントスターの想いが込められている。
■随所に感じられるフラッグシップモデルとしての矜持。「M34 F8 デイト」の共通項
Mコレクションズは「M45」、「M34」、「M42」という3つのコレクションで構成されている。今回フィーチャーするのは、ペルセウスの名を冠する「M34」コレクション。基本のデザインに忠実ながらも、色、素材、仕上げといった、オリエントスターが誇る技術力を惜しみなく搭載した自由なスタイルが特徴だ。
2024年の新作である「M34 F8 デイト」は、いわばそれらの集大成として誕生したもの。ダイヤルの色違いで2本ラインナップされており、まずはそれらの共通点を紹介する。
1.ダイヤルにあしらわれた流星群のダイナミズムを“手彫り”で再現
しぶんぎ座流星群、ふたご座流星群と並ぶ“三大流星群”と謳われるペルセウス座流星群。毎年7月から8月にかけて出現する星団で、活動が安定していることから人気も高い。
ダイヤル全面にあしらわれた立体的な模様により、ペルセウス座流星群のダイナミズムを余すことなく再現されている。それに、金型は職人による手彫り。画一的ではないからこその絶妙な光の陰影が、高級感に拍車をかけている。
2.高い精度とタフなパワーリザーブを実現する新ムーブメントを搭載
腕時計の心臓部には、新たに開発した自動巻きムーブメント「F8N64」を搭載。従来より長い分針が回せるようになったことで、視認性アップにも貢献。こうした、腕時計の本分を違えずにしっかりと追求している姿勢は、オリエントスターが誇るモノづくりの精神そのものだ。
なお、今回ラインナップする2本の腕時計は、ともにシースルーバック仕様。新ムーブメントの駆動を堪能してほしい。
3.細部の仕上げにも一切妥協しないオリエントの真摯なモノづくり
パッと見のデザインが良くても、細部の仕上げがおざなりであれば、高級腕時計とはいえない。しかし、本モデルであれば杞憂に終わるだろう。なぜなら、文字板にあしらわれたパーツひとつひとつが、「時の匠工房」で製造しているから。
時の匠工房は、時計業界では知らない人はいないほどの、国内屈指の技術力を誇るマニュファクチュール。丁寧に仕上げ分けされた時分針や、ダイヤカットを施したカレンダー枠など、彼らの職人芸が存分に味わえるのも、本モデルの楽しみのひとつといえるだろう。
■夜空と夜明け。表情の異なる流星群を宿した2本の「M34 F8 デイト」
M34コレクションに加わった2本の「M34 F8 デイト」。青文字板と白文字板の2種類が存在しているが、実は単なる“色違い”ではない。オリエントスターの並々ならぬこだわりを知ることで、我々が普段何気なく見ている景色もまた、単純なものではないと気付かされる。
【1本目】白々明けに降り注ぐペルセウス流星群を再現した200本限定モデル
年齢を重ねるにつれて、身につけるモノは洗練されてくる。特に腕時計ともなれば、シーン問わず身につけられるシンプルな顔立ちに惹かれるのは当然のこと。たとえば、本モデルのような3針デザインならなおさらだ。
とはいえ、「多少の個性を出したい」という欲求があるのも事実。そういうときこそ、改めて「M34 F8 デイト」をおすすめしたい。
前述の通り、ダイヤルは職人の手彫りで仕上げた金型を使用。まるで白々明けに降り注ぐ流星のような、非日常感を巧みに表現している。
さらに、時分針や略字については、筋目と鏡面に仕上げ分けを施すことで立体感を生み出し、燦然と輝く星のような印象を加えている。なお、着こなしのさりげないアクセントとしても有用な青い秒針は、雲の合間から見える夜空をイメージ。
モノづくりに対するストイックな姿勢を見せつつも、こうした遊び心を忘れないところが、多くのファンを獲得し続ける所以なのかもしれない。
ペルセウスといえば、元々はギリシャ神話に登場する英雄を指す。部位によって鏡面仕上げや筋目仕上げを施されたシャープで精悍なケースデザインは、まさに英雄ペルセウスを想起させる。
ケースサイズは40mmと、小さすぎず大きすぎずなベストバランス。手元の馴染が良く、ビジネスからプライベートまで違和感なく溶け込むだろう。
【2本目】宇宙の深淵を“光学多層膜技術”で実現したロマン溢れる1本
「さて、このダイヤルは何色?」と問われたとき、ほぼすべての人が「青」と答えるはず。もちろん青色で正しいのだが、“青く塗装されたものではない”と聞くと、謎は深まる一方だ。
実は“光学多層膜”という技術を用いており、透明な膜を何層にも重ね合わせることで光の見え方をコントロールし、青く“見せている”のだ。
膜自体は非常に薄いため、「M34 F8 デイト」の要であるダイヤルの模様も潰れることなく、多彩な色表現を可能にしている。つまり、今回は青色を表現しているが、膜厚をコントロールすることで、赤にも黄色にも見せることもできるのだ。特に、今回のケースのような自然をモチーフにした複雑な色を再現するには欠かせない技術といえる。
さまざまな腕時計を手掛けるオリエントスター。今後、同様の技術が用いられた腕時計が開発されることも大いに期待したい。
先ほどの「RK-BX0001S」との違いは、基本的に文字板の色味のみ。細部の仕上げや素材感などに差はない。
ブルーフェイスの腕時計は、白や黒に次ぐ定番色。シーンや着こなしを選ばずに着けこなせるため、白か青か、どちらを選ぶかは困難を極める。
■腕元で輝く小宇宙。伝統と革新の融合が生み出すオリエントスターの最高峰に触れてほしい
異なるシチュエーションの流星を、手仕事と最新技術をもって余すところなく表現した「M34 F8 デイト」。夜空に浮かぶ星のように、末永く寄り添ってくれるだろう。
>> オリエントスター
<取材・文/若澤 創>