さかのぼること1924年、CITIZEN(シチズン)の前身である尚工舎時計研究所は、懐中時計の第一号機を世に送り出し、1930年にシチズン時計株式会社を創立。以降、防水時計の原型といわれるパラウォーターをはじめ、太陽光で駆動するエコ・ドライブ、世界初の多局受信型の電波時計、アンテナ内蔵型のフルメタル電波時計など、時計史に残るモデルやテクノロジーを生み出してきた。
1924年に初めて“CITIZEN”という名前が付けられた時計を発売してから、今年で100年目を迎えたシチズンは、同社の技術力と美意識の集大成というべき限定コレクションをリリース。それは1世紀という“時の積み重ね”が表現されたタイムピースだ。
■デザインコンセプトは“LAYERS of TIME -ときの積層-”。これはシチズンの歩みそのものだ
今年の5月にリリースされる限定コレクションのデザインコンセプトは、「LAYERS of TIME-ときの積層-」。シチズンが100年の歴史の中で生み出してきた7本のモデルをキャンバスに、地球が悠久の時をかけてつくりあげた地層や鉱物が厳かに光輝くような、神秘的な美しさを描き出している。
いわば、“時間の積層”を余すことなく表現するのが、2023年にリリースされた「UNITE with BLUE」でも注目を集めたシチズン独自の技術である「構造色文字板」だ。
構造色文字板とは、特殊な構造色インクでカラーリングされた文字板のこと。一般的な色素による着色とは異なり、インク層内のミクロ構造に光が反射することで、さまざまな表情や色みが生み出される。
今回は、地層や鉱物を連想させるパターンがあしらわれた構造色フィルムを採用。そこにブラックのインクジェットをグラデーション状に重ねることで、いたるところに鉱物が煌めく洞窟のような情景を表現している。
見る角度や光によって表情を変える存在感のあるデザインは、スタイリングのアクセントに有用。また、幻想的な文字板を眺めながら、シチズンの歴史や地球の“時の積み重ね”に思いを馳せるのも一興だ。
■ブランドの垣根を超えた限定コレクション。全モデルのポテンシャルを検証
構造色文字板をあしらった限定コレクションは、「アテッサ」をはじめ、「エクシード」、「プロマスター」、「シチズンコレクション」、「クロスシー」、「シチズン エル」というシチズンの基幹をなす6ブランドから、全7モデルがリリース。それぞれのモデルの特徴と、存在感のあるデザインがスタイリングにもたらすメリットをチェックしていく。
【1本目】構造色文字板とサファイアベゼル、2つの輝きで彩られた唯一無二の「アテッサ」
1987年に、世界を舞台に活躍するビジネスパーソンをサポートする最先端の腕時計としてデビューした「アテッサ」。軽量でキズに強いシチズン独自のテクノロジーである、スーパーチタニウムを全面に打ち出したシチズンの技術を象徴するブランドのひとつ。
今回ラインナップされたクロノグラフの「CC4057-60E」は、闇の中に輝きが覗く、幻想的な地底の情景をイメージしたブラックの構造色文字板が見どころ。
アテッサでは初となる全面グラデーション蒸着サファイアベゼルは、ブルーからパープルへと変化する美麗な輝きが特徴。さらに黒で統一されたケースとバンドによって、構造色文字板とサファイアベゼルの輝きがいっそう映える。
デュラテクトDLCが施されたスーパーチタニウムのケースとバンド、GPS衛星電波時計のキャリバー“F950”など、シチズンが誇れるテクノロジー満載のスペックにも注目だ。
ビジネススタイルの新潮流となりつつあるセットアップスタイルとも相性良し。初夏らしいブルーグリーンのセットアップに、構造色文字板とサファイアベゼルが織りなす輝きがモダンなスパイスを効かせつつ、ブラックのバンドとケースが腕元を精悍に引き締める。
ジャケット 1万4990円、カットソー 5990円/ともにアンフィーロ(オンワード樫山)
【2本目】小径ながら存在感は抜群。スーツに似合うドレスウオッチ「エクシード」
ドレススタイルに合うシチズンの腕時計といえば、1977年にデビューした「エクシード」が筆頭。洗練されたエレガントなデザインは、ドレッシーなスーツスタイルとの相性はもちろん、普段着の格上げにもってこい。
こちらの「CB1146-64E」は、文字板に構造色インクで地層や鉱物を思わせるパターンをデザインした1本。さらにインクジェットによるグラデーションを組み合わせることで、奥行きのある表情に仕上げられている。
文字板のデザインはスリムなバーインデックスとローマ数字ですっきりと仕上げることで、構造色の持ち味をいっそう際立たせている。
ケースとバンドにはブラック色のデュラテクトDLCが施されたスーパーチタニウムを使用。ムーブメントには多局受信やダイレクトフライト機能を備えた新型の“H147”を搭載。
うっすらとシャドーチェックが配されたネイビースーツに合わせた着こなし。ブラック文字板がダークスーツの色みと調和しつつ、構造色の輝きが腕元にさりげない華やかさを演出している。
また、7.0mmという薄型ゆえ、装着感も申し分なし。38mmというサイズ感も収まりが良く、日本人の細い腕と抜群の相性を誇る。
スーツ 5万4890円、シャツ 6490円、ネクタイ 5390円/すべてユニバーサルランゲージ(スーツスクエア TOKYO 銀座店)
【3本目】精悍な漆黒ボディに構造色が艶やかに際立つ、もうひとつの「アテッサ」
シチズンの技術力の象徴というべきアテッサは、先に紹介した「CC4057-60E」に加え、こちらの「AT8286-65E」もラインナップ。
サブダイヤルが縦方向に配置されたスポーティなイメージを生み出す縦目のクロノグラフは、スーパーチタニウム製のケース&バンド、そしてベゼルもブラックに。結果、幻想的な地底の情景を思わせる文字板の構造色が際立っている。
12時と6時位置のサブダイヤルを囲むリングをあえてクリアな素材にしているのもこだわり。加えて、リングに細やかなレコード挽きを施すことで下層の構造色の輝きを見せつつ、見る角度によって色や光が変化するという趣向を生み出している。ムーブメントにはシチズンを代表する電波キャリバー“H800”を搭載。
無地のネイビーのシャツに合わせたのは、ストレッチ感のある細身のパンツ。クリーンな大人カジュアルに、クロノグラフがスポーティなエッセンスを吹き込みつつ、構造色文字板の輝きがモダンなスパイスを効かせている。
また、40mmを超えるサイズ感ながらも、黒を基調としたカラーリングが奏功し、主張しすぎることなく、すんなり馴染んでいる。
シャツ 1万2980円、パンツ 9990円/ともにアンフィーロ(オンワード樫山)、その他スタイリスト私物
【4本目】構造色の輝きに彩られた本格パイロットウオッチ「プロマスター」
1989年に、陸、海、空で活動するプロフェッショナルのために誕生した「プロマスター」。「BY3005-56E」はブランドの誕生35周年というアニバーサリーイヤーにふさわしいタイムピース。
青と緑を基調とした構造色で彩られたダイヤルには、地中に眠る鉱物をモチーフにした柄が施されている。さらに、ダイヤルの裏面には黒のグラデーションを施すことで、表情に奥行き感を生み出すことに成功。
文字板と高低差のある6時位置のディスクをはじめ、操作性に優れた大型りゅうず、視認性に優れた太く長い時分針など、本格パイロットウオッチらしさ溢れるディテールが満載。ヘアライン仕上げのマットなケースには、ベゼルの斜面など一部をミラー仕上げにすることでメリハリが付けられている。
エコ・ドライブ電波時計でありながら、6時側のサブダイヤルにUTC時刻を表示する円板針が採用された新型のムーブメント“H864”を搭載。
ストレッチナイロンのプルオーバーにアウトドアシェル。そんなアーバンアウトドアのスタイリングには、ウエアに負けない存在感を持つ腕時計を合わせたいところ。
パイロットウオッチの本格ディテール満載の「プロマスター」は、構造色文字板や径46mmの大型ケースも手伝って、スタイリングの格好のアクセントに。
トップス 1万3200円/ポーラー(キャンバス)、その他スタイリスト私物
【5本目】機能、デザインともに完成形。プライスも魅力的な「シチズンコレクション」
シチズンのウオッチデザインの要素である“シンプルさ”や“精巧さ”をそのままに、エコ・ドライブや電波受信機能といったテクノロジーを搭載した「シチズンコレクション」。プライス設定もお手頃のため、エントリー機としてもうってつけ。
そんなブランドから登場した「CB5878-56E」は、人気モデルをベースにしたクロノグラフ。ソリッドなオールブラックの外装に、地球の壮大さを思わせる構造色の輝きが鮮やかに映える。
文字板外周に配された黒いグラデーションプリントにも注目。このプリントによって外装と文字板の一体感が生まれ、中央部の構造色がいっそう際立つ、という視覚効果が生まれているのだ。
ムーブメントにはエコ・ドライブやパーペチュアルカレンダー、世界4エリアの電波受信などを備えた“E660”を搭載。税込価格7万円台前半という手の届きやすい価格帯ながら、シチズンの実力を体感できる1本だ。
ブルーのシャツと白Tのレイヤード、そしてインディゴブルーのデニムというベーシックなカジュアルスタイルとコーディネート。
ともすると薄味になりがちな初夏のシャツスタイルだが、構造色文字板が輝く漆黒のクロノグラフが小気味良いアクセントとして腕元を美麗に彩るだろう。
■パートナーと共に楽しめるレディスモデル「クロスシー」、「シチズン エル」にも注目
限定コレクションにはレディスモデルのラインナップも。左のモデルは、1996年に誕生した女性向けの時計ブランド「クロスシー」。今回の「EE1008-56E」は構造色文字板に加え、12時位置とりゅうずにセッティングされたラボグロウン・ダイヤモンドがまばゆい輝きを放つ。
一方の右のモデルは、“地球のように美しいサステナブルウオッチ”をコンセプトに掲げる「シチズン エル」から登場した「EM1067-88E」。人気モデルの「ラウンドコレクション」のケースをベースにしたもので、クールなオールブラックの外装に構造色文字板と、4カ所のインデックスと3時位置のケースに配されたダイヤモンドの輝きがエレガントな趣を添えている。
■100年の積み重ねがここに凝縮。“質”と“実”を兼ね備えるシチズンの変わらないモノづくり
星の数ほどある腕時計から、一本を選ぶ際、何を重視するだろうか。精度や機能性、見た目の美しさ、ブランドのプレステージなど、さまざまな基準が存在するが、今回紹介したモデルたちは、あらゆる基準を高次元で満たす限定コレクション。
「時刻を知る」という時計本来の役目はもちろん、スタイリングのアクセントとしてもパフォーマンスを発揮すること請け合い。それに、シチズンの技術と美意識が息づくデザインを鑑賞することで、所有する悦びに浸ることもできるだろう。
まだまだ100年。記念すべき限定コレクションを身につけて、“次なる100年”をシチズンと共に歩もうではないか。
>> シチズン 「LAYERS of TIME」スペシャルサイト
<取材・文/押条良太 写真/村本祥一(BYTHEWAY) スタイリング/宇田川 雄一>