開発担当者に聞く!「GW」シリーズに登場した2つの新カテゴリーの魅力と誕生秘話

写真愛好家には古くからお馴染みの「ハクバ」。そしてその最高峰のカメラバッグが「GW-PRO」シリーズだ。2003年の誕生以来、常に最新の素材や技術でアップデートを続けている。

そのスピリットを継承しつつ、より手の届きやすいシリーズとして新たにデビューした「GW-ADVANCE」と「GW-STANDARD」の2ラインについて、実際の製品を前にその特徴を深掘りしていく。

ハクバ写真産業商品開発部 企画開発課 係長
藤田和生さん
2004年入社。長年、写真用品全般の企画開発に携わり、現在はキャンプ用品やカジュアルバッグ等の設計デザインも手掛ける。GW-ADVANCE タンクの企画開発を担当。「収納力にこだわりましたので、多彩な機材やアクセサリーを詰め込んで撮影に出かけていただきたいです」

 

ハクバ写真産業 商品開発部 企画開発課
鈴木歩さん
2022年入社以来、額縁、防湿庫、カメラバッグなど、幅広い写真関連製品の企画開発に携わってきた。GW-STANDARD リッジの企画開発を担当。「使い勝手が向上し、モデル数が増えた新リッジシリーズを体験してください」

 

フォトグラファー・須田俊哉|2004年、ニューヨークにてフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。2008年に拠点を東京に移し、広告写真を中心に活動。ロケ撮影ではSony αRシリーズを歴代使用。ポートレイトと風景を好み、高性能過ぎず描写に味のある単焦点レンズが好み。休日は山や渓流で遊ぶことが多い。現在、クライミング修行中

ライター・鈴木誠|カメラ専門ニュースサイトの編集記者として14年勤務し、2024年独立。新製品解説、機材レビュー、国内外のイベントレポートやインタビュー取材の経験をもとに、各メディアへの記事執筆やYouTube「鈴木誠のカメラ自由研究」で情報発信中。趣味は楽器演奏とドライブ

 

 

■GWシリーズとは?

GWシリーズの原点は、1981年に本格カメラバッグのシリーズとして誕生した「Godwin」(ゴッドウィン)シリーズ。そこから2003年によりプロフェッショナル向けのラインとして派生・発展したのが、現在まで続くGWシリーズだ。

▼GW-PRO

2023年に新登場したバッグは8製品。バックパックが4モデル、ショルダーバッグが2モデル、ローラーバッグが2モデルだ。いずれも過酷な自然環境下から街中まで快適に使える機能性と現代的なデザインを追求している。

特徴は、高性能素材の「X-Pac X50」をメイン生地に採用したこと。ヨットの帆でシェア世界一のDIMENSION-POLYANT社が開発した三層構造の生地で、強さ、軽さ、防水性を兼ね備える。機能面でも、マグネット式のバックルを採用したり、GWシリーズでは唯一となるローラータイプのバッグを揃えるなど、あらゆるプロフェッショナルの撮影シーンを見据えたモデル展開だ。

仕事に、遊びに!プロカメラマンが使って実感した高機能カメラバッグ「GW-PRO」の真摯なモノづくり

▼GW-ADVANCE

GW-PROの本格志向をそのままに、材料や部品の変更で価格を抑えているのがポイント。X-Pac生地やマグネット式のバックルといった、特にシビアな撮影環境で求められる装備を省き、より多くの人々に使いやすく買いやすいシリーズに仕上げている。今回取り上げる「GW-ADVANCE タンク」シリーズのラインナップはバックパック4モデル、ショルダーバッグ1モデル、レンズバックパック1モデル。

「バックパック」と「ショルダーバッグ」高機能カメラバッグを選ぶならどっち?新作の「GW-ADVANCE タンク」で比べてみた

▼GW-STANDARD

3シリーズの中でもっともコストパフォーマンスを意識したシリーズ。第一弾として、定番スタイルのショルダーバッグを含む「GW-STANDARD リッジ」を展開。シンプルかつエッセンシャルな装備が特徴で、軽やかな使い心地が魅力になっている。バックパック1モデル、レンズバックパック1モデル、ショルダーバッグ3モデルの展開だ。

カメラバッグの標準を底上げ!目的に応じて選べる「GW-STANDARD リッジ」3タイプの特性を探る

※  ※  ※

鈴木(誠):今回はハクバのGWシリーズが一新されたとのことで、お話を伺いたいと思います。カメラバッグは形状もいろいろ、価格帯もいろいろで迷ってしまいますが、シリーズごとのコンセプトやこだわりポイントから、読者の皆さんのカメラバッグ選びのヒントになればと思います。

須田:ほんと、これだけあると迷いますよね。カメラバッグって僕もこれまでたくさん買ってきていて、バッグ選び自体が「旅」だと思ってます。

藤田:「GW-ADVANCE」を担当している藤田です。今回の「タンク」シリーズの企画から設計、デザインまですべてを担当しました。自社製品も他社製品も研究して、機能満載です!

鈴木(歩):「GW-STANDARD リッジ」の企画、設計、デザインを担当した鈴木です。3ラインになったGWシリーズのそれぞれとの差別化を考えたりしながら、定番モデル「リッジ ショルダーバッグ」のリニューアルにも取り組みました。

■「GW-ADVANCE」のラインナップと魅力

藤田:まず「タンク」のバックパックから「リアゲートバックパック」の2サイズです。26リットルと17リットルを用意しました。

鈴木(誠):背中側がガバっと開くタイプですね。さらに側面から機材を出し入れできるサイドアクセスにも対応するとは、大充実ですね。

藤田:はい。両側からのサイドアクセスにも対応する欲張り仕様です。バッグの開口部が多いので、側面の骨格となる部分にグラスファイバーの棒を入れて、剛性を確保しています。

藤田:こちらは「フェイスゲートバックパック26」の内部です。同じくサイドの骨格部分にグラスファイバーの補強材を入れています。

須田:ほんとだ、芯がある!これならバッグを立てても、真ん中らへんの収納スペースがつぶれないですね。

▲フェイスゲート(左)とリアゲート(右)の開き方の違い

鈴木(誠):同じサイズで、「フェイスゲート」と「リアゲート」の開き方の違いを見てみましょう。どちらも収納部の仕切りがたっぷり付属していて、いいですねえ。

須田:僕は、バッグを地面に寝かせても背中側が汚れない「リアゲート」派かなあ。

▲リアゲートは背中側が開く構造

鈴木(誠):バッグを立てて置くと「フェイスゲート」のほうが背負いベルトが地面に触れにくそうで、これはこれでメリットありそうです。ラインナップをどちらか1タイプに絞れない理由がわかります。悩みますね〜。

藤田:メイン生地はPUコーティング、底面にはターポリンを素材を使っていますので、汚れに強いです。

鈴木(誠):さすが、入念ですね。バッグの底部に「脚」があるのは、まさしく日本のカメラバッグという感じがします。

▲GW-ADVANCE タンク ショルダーバッグ26の前ポケット。小物類を収めやすいよう適度なマチが設けられている

鈴木(誠):次は「ショルダーバッグ26」ですが、風景写真家がクルマに積んでいるイメージがありますね。天面のクリアポケットに地図とか、さっと取り出したいペーパー類を入れたら便利そう。内部にはパソコンが入るスペースもきちんと用意されています。

▲ショルダーバッグ26の深さは、70-200mmレンズが縦にちょうど収まる

藤田:収納部の高さは70-200mmレンズにぴったりです。GW-PROのショルダーバッグはメッセンジャースタイルでしたが、こちらはいわゆる“箱型”です。新しいところでは、外側のポケットにマチを設けました。自社製品・他社製品のユーザーレビューを研究していると、「最近のバッグはポケットにマチがなくて使いづらい」との声をよく見かけます。

須田:そう! 特にミラーレスカメラの時代になったら、交換レンズのマウントアダプターとか予備のバッテリーとか、小物が増えたんですよ! だからこれはありがたいです。

▲ショルダーバッグ26の側面には、取り外し可能なドローストリングポーチが付く

須田:横のポケットは着脱式なんですね。何を入れるためですか?

藤田:ドローコードで絞るほうのポケットは、交換レンズの一時的な置き場や、ご要望の多いペットボトルの収納を想定しています。反対側のジッパー式ポケットはこれといって収納アイテムを定めていませんが、保護材のクッションも入れていますので、手回り品の収納にご活用いただければと思います。

須田:使いこなし甲斐がありそうです。ポケットが少ないカメラバッグでは手回り品をポーチにまとめてメイン収納部に入れていましたが、それだとバッグを開けてからポーチを取り出して開くので手間でした。こういうポケットだと気楽に使えて良さそうです。

▲GW-ADVANCE タンク レンズバックパック36

藤田:こちらは「レンズバックパック36」です。久々にレンズバックパックの新型が登場しました。600mm F4のレンズを装着した、縦位置グリップ付きのプロ用カメラを入れることを想定しています。レンズバックパックを他社製品より抑えめの価格帯でご提供することを目指しました。

鈴木(誠):これは2月のCP+2024で参考展示を見ましたが、ついに製品化ですか。600mm F4というと、使われるシーンは飛行機とか野鳥とか…?

須田:モータースポーツを撮る人も使いますね。この側面のポケット、内側に埋め込んでデッドスペースをなくしているわけですね。よく考えられてるなあ!

▲背負いベルトの付け根に別売の「くびの負担がZEROフック」(2990円/ダイレクト販売価格)の取り付け部がある

鈴木(誠):あと、もちろんハクバの「くびの負担がZEROフック」も付きますよね。みんな大好き“ZEROフック”。

藤田:はい。カメラストラップをここに引っかけていただいて、首の負担を減らすアイテムです。今回は横向きにも装着できるようになりまして、たとえばカメラストラップや三脚バッグを肩に掛ける際、ここにストラップを引っかけていただくと、肩から滑り落ちにくいようなサポートにもなります。これは社内からのアイデアでした。

須田:ああ〜いいですね!滑らないように肩に力を入れていると、それだけで疲れちゃうんですよね。服の生地によってはストラップが滑りやすかったりもするし。

▲背中とバッグの間に雨が入らない構造のレインカバー

鈴木(誠):このレインカバー、珍しい形状ですね。胸の前ぐらいまで引っ張ってきて固定するんですね。

藤田:はい。GW-ADVANCEバックパックのレインカバーはすべてこうなっています。これによってバッグと背中の隙間に雨が入りません。

須田:そうなの? すごいなあ! 自分で背負ってるから見えないけど(笑)。レインカバーが付いたことでの違和感はまったくないです。

藤田:GW-ADVANCEの細かい部分を見ていただくと、昨年リニューアルした最高峰のGW-PROよりも進んだ設計になっている部分があります。例えば三脚はGW-PROだとサイドにのみ取り付け可能でしたが、GW-ADVANCE タンクでは両サイドとセンターにも取り付けられます。「入れすぎかな?」というぐらい機能を入れましたので、ぜひ皆様にも店頭でご覧いただきたいです。

■「GW-STANDARD」のラインナップと魅力

▲GW-STANDARD リッジ ショルダーバッグ24

鈴木(歩):まずは「リッジ ショルダーバッグ24」です。従来の「プラスシェル リッジ」にはなかった大きなサイズを追加しました。内部はU字型の仕切りに乗せるような形で、300mm F2.8を装着したカメラがそのまま入ります。フード逆付けなら400mm F2.8もいけます。

須田:すごい! きれいに収まりますね。パソコンも14インチを入れてピッタリぐらいの高さだ。

▲リッジ ショルダーバッグ24の内部。装着レンズは300mm F2.8(フード逆付け)

鈴木(誠):こっちはGW-ADVANCE タンクと違って、側面のポケットが固定式ですね。シンプルにまとまってていいなあ。

須田:僕の使い方を考えると、GW-ADVANCEもいいけど、シンプルなGW-STANDARDでもいいかも。悩みます。

鈴木(誠):ベーシックな美しさがありますよね。それでいてU字型の仕切りとか、リッジの個性は完璧に踏襲されています。

鈴木(歩):1994年から続くロングセラーで愛用者も多くいらっしゃるため、大きく変えないことを意識しました。サイズも大型の24を今回新たに追加しましたが、10と15は今までのリッジのMとLと同等のサイズにしています。

▲リッジ ショルダーバッグはU字型のクッションが特徴

鈴木(歩):新しく、U字クッションの開口部を塞ぐような形の仕切りを追加しています。これにより収納機材や撮影スタイルに応じたカスタマイズ性が高まります。ショルダーストラップも着脱可能にしていて、お好みのものに交換したり、不要であれば取り外して手提げハンドルだけで使えるようになっています。

須田:3サイズあるけど、どれもアリだなあ。カメラ機材だけなら小さいのでも十分いけそうだし、でも大きいサイズなら上着を丸めて入れたりする余裕がありそうで、それはそれで使いやすい。

鈴木(誠):どれかは買うことが確定しましたね。

▲リッジ バックパック27の収納例。両側面がサイドアクセスに対応

鈴木(歩):こちらは「バックパック27」です。フロントパネルと両サイドが開きます。今まで中が1気室になったタイプの大きなバックパックが現行モデルではGW-PROにしかなかったので企画しました。収納力がありつつ、大きく見えないように外観のスタイリングを工夫しています。

須田:これも仕切りがたくさん付属してますね。こんなにたっぷり入ると、また中判カメラを使いたくなっちゃうかも?

▲バッグのセンターに三脚取り付け部を備える。写真はリッジ レンズバックパック19

須田:GW-STANDARDのバックパックも、センターに三脚が付きますか?

鈴木(歩):はい。下からレッグポケットが出てきて、上部には三脚をくくりつけるストラップが備わっています。

鈴木(誠):センターに付けると左右の重量バランスがいいし、体の横に三脚がはみ出ないので街中でも邪魔になりにくいですもんね。

▲リッジ レンズバックパック19の内部。レンズ固定ストラップを備える

鈴木(歩):こちらはGW-STANDARDのレンズバックパックです。先ほどのGW-ADVANCEと見比べていただくと、シリーズの違いがわかると思います。

鈴木(誠):細部はシンプルになってますが、基本的なバッグの構造は同じですね。レンズを固定するストラップもあるし。サイズの点では、GW-ADVANCEが600mm F4、GW-STANDARDが300mm F2.8用という感じですね。

▲レンズバックパックのサイズを比較。GW-ADVANCE(左)とGW-STANDARD(右)

鈴木(歩):リッジは今までショルダーバッグのみの展開でしたが、今回のリニューアルをきっかけにバックパックタイプも追加しました。このGW-STANDARDシリーズのコストパフォーマンスの良さや進化点を、ぜひ皆さんに知っていただきたいです。

■GWシリーズ全ラインナップ

【GW-PRO】
GW-PRO マルチモード バックパック 30(52800/ダイレクト販売価格)
GW-PRO マルチモード バックパック 20(4万9800円/ダイレクト販売価格)
GW-PRO リアゲートバックパック20(4万4800円/ダイレクト販売価格)
GW-PRO フェイスゲートバックパック20(4万1800円/ダイレクト販売価格)
GW-PRO マルチモード ショルダーバッグ15(3万9800円/ダイレクト販売価格)
GW-PRO フェイスゲートローラーBP(5万5800円/ダイレクト販売価格)
GW-PRO エアポートローラー(5万9800円/ダイレクト販売価格)
GW-PRO ウエストベルト(3850円/ダイレクト販売価格)

【GW-ADVANCE タンク】
GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック26(3万2800円/ダイレクト販売価格)
GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック17(2万9800円/ダイレクト販売価格)
GW-ADVANCE タンク リアゲートバックパック26(3万2800円/ダイレクト販売価格)
GW-ADVANCE タンク リアゲートバックパック17(2万9800円/ダイレクト販売価格)
GW-ADVANCE タンク ショルダーバッグ26(2万7800円/ダイレクト販売価格)
GW-ADVANCE タンク レンズバックパック36(3万4800円/ダイレクト販売価格)

【GW-STANDARD リッジ】
GW-STANDARD リッジ バックパック27(2万4800円/ダイレクト販売価格)
GW-STANDARD リッジ レンズバックパック19(2万4800円/ダイレクト販売価格)
GW-STANDARD リッジ ショルダーバッグ24(1万9800円/ダイレクト販売価格)
GW-STANDARD リッジ ショルダーバッグ15(1万5800円/ダイレクト販売価格)
GW-STANDARD リッジ ショルダーバッグ10(1万3800円/ダイレクト販売価格)

>>>>ハクバ写真産業(GWシリーズ)

(取材・文/鈴木誠、写真/富山龍太郎)

この記事のタイトルとURLをコピーする