カメラバッグは千差万別。形状、大きさ、携行スタイル…カメラを入れるだけの単機能バッグにも関わらず、だ。なぜなら、そこには撮る人の思いやフォトワークに沿えるよう、細かく開発されているからにほかならない。
昨年生まれ変わったハクバ写真産業の本格カメラバッグのフラッグシップ「GW-PRO」は最新の素材と技術を取り入れ人気を博しているが、今回、その機能を継承しつつ、より手の届きやすいラインナップが登場した。
それが「GW-ADVANCE タンク」と「GW-STANDARD リッジ」だ。特にGW-ADVANCE タンクは、GW-PRO譲りの機能をブラッシュアップさせ、かつより普段使いに適した仕様になったシリーズに仕上がっている。
そこで今回は充実したフォトライフを送るのにぴったりな、26リットルのバックパックタイプ「GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック26」(3万2800円/ダイレクト販売価格)とショルダーバッグタイプ「GW-ADVANCE タンク ショルダーバッグ26」(2万7800円/ダイレクト販売価格)とを比較しながら、どんな使い勝手なのか、またそれぞれどんなフォトワークを送る時に便利なのかを、ロケからスタジオまで幅広いシーンで撮影することの多い、広告写真の世界で活躍するフォトグラファーの須田俊哉さんに使ってもらい考察した。
フォトグラファー・須田俊哉|2004年、ニューヨークにてフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。2008年に拠点を東京に移し、広告写真を中心に活動。ロケ撮影ではSony αのRシリーズを歴代使用。ポートレイトと風景を好み、高性能過ぎず描写に味のある単焦点レンズが好み。休日は山や渓流で遊ぶことが多い。現在、クライミング修行中
■容量は同じでも使い方の異なるバックパックとショルダーバッグ
収納できる容量は同じでも使い方の異なるバックパックとショルダーバッグ。今回、東京湾散歩で水上に持ち出したのは「GW-ADVANCE タンク」の中でも最大容量を誇る26リットルタイプで、一眼カメラ2台と大口径レンズを収納できるモデルだ。
「普段アウトドア用のバックパックを背負うので26リットルと聞いて、ちょうどいいサイズかなと思いましたが、数値からは想像できないほどの大容量サイズですね。何があっても対応できるほどの機材が全部入ります」
昨年記事でも紹介したGW-PROのマルチモードバックパックが20リットルなので、さらに大型のモデルといえる。
▼カメラ機材の収納力
比較すると、縦型、横型の違いはあるものの、当然ながらサイズはほぼ同等。バックパックの外寸が約W370×H540×D260mm、重量が約2460g。ショルダーバッグの外寸が約W570×H270×D310mm、重量が約2410gとなっている。
GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック26には、24-70mmを装着したミラーレス一眼と、70-200mmを装着したミラーレス一眼のほか交換レンズ2本に、クリップオンストロボ2台、予備のバッテリーや充電器を入れてもまだ余裕があるほど。
「小さい照明機器でも余裕を持って入れられます。容量が大きくて、何を入れたらすべてを埋められるか悩むほどです…」
と笑うほど、収納力は抜群。
「バックパックながら、ショルダーバッグのように大きく開口するので収納はしやすく、開き止めストラップが付いていて(写真では全体を見せるために外してます)、フタが全開にならないので使い勝手は良好。しかもノートPCを入れるスペースが独立しているため、メイン気室を開けずともPCにアクセスできるから、撮影の移動中などでPCを使うときに便利です」
ショルダーバッグにも同様の機材が入っているが、こちらはレンズを外した状態で収納。ディバイダーをアレンジすれば、70-200mmの大口径レンズをつけたまま収納もできる。また、レイアウト次第では動画撮影用のジンバルやドローンなど、さまざまな機材を収納できるのがショルダーバッグの特徴といえる。
「収納のしやすさは、やはりショルダーバッグの方に分があるかもしれません。こちらも天面パネルを任意の位置で固定できる開き止めストッパーが付いているので、狭いスペースでも荷物の整理がしやすいですね。しかも細かい点がいい! 例えばサイドに付けられたトップハンドルの位置。たまにファスナーを閉めずにハンドルを持った時、中から機材が落ちそうでヤバッってなることがありますが、これだと天面パネルを閉め忘れてハンドルを持っても中身が落ちることがありません。また、両サイドにキャリーハンドルがあるから、中身がぎっしり詰まって重くても積み下ろしの際に便利です」
▼機材の取り出しやすさ
収納力は同等でも大きく違うのが機材の取り出しやすさ。
「バックパックは、背負ったまま収納したカメラにアクセスできる、左右のサイドアクセス機構と、置いたときに天面からカメラを素早く取り出せるトップアクセス機構を備えているので、普通のバックバックよりも速写性は高くなっています。本体が大きいため、ストラップを若干緩めにすると回しやすくなりますよ。とはいえ、歩きながら被写体を探しているときはカメラを出している場合が多いので、頻繁に使うかはその人のスタイルによるかもしれません」
ちなみに4方向からの出し入れができるマルチアクセス仕様だが、グラスファイバー製のフレームを内蔵しているためバッグの剛性は高く、ゲートを開けた状態でもバックパックの形状を維持できるのだ。
バックパックの収納面における特徴が、フロントと両サイドに備わるデイジーチェーン。カラビナなどでポーチやアクセサリーを取り付けられ拡張性は高い。
このデイジーチェーンを利用して、センターにもサイドにも三脚を固定できる。
ショルダーベルトにも付属品を取り付けられ収納性がさらにアップ。相性抜群なのが、「プラスシェル ユーティリティショルダーポーチ」(3480円/ダイレクト販売価格)だ。フィルターやスマホを入れておけば、気軽に取り出せ便利に使える。
一方のショルダーバッグは、なんといってもひと目で収納機材を把握できる視認性の高さが魅力。
「ショルダーバッグは全面が開くので、出し入れがしやすく機材へのアクセスは抜群。カメラを頻繁に取り替える、レンズ交換の回数が多いといった場合は、ショルダーバッグの方が使いやすいですね。サイドの着脱式ポーチのほか、マチがあるフロントポケット、天面パネルの外側と内側に見やすいポケットが付いているので、十分かつ機能的にアクセサリー類を収納できます。PC用のポケットがあるのも◎。ディバイダーが厚く高さがあるので、取ってつけたポケットではなく PCがきっちりと守られている感じがするのもいいですね」
▼撮影場所まで背負い、肩掛けでの移動
「撮影場所での移動は、やはりバックパックの方が快適ですね。GW-PROでも感じましたが、ちゃんと背負って歩くことを考えているなと思います。特に26リットルと大型なので機材を詰め込むと重く、肩に負担がかかりますが、ショルダーハーネスの形状がいいのか背負って歩いても負担が軽減されますね」
人間工学に基づいたショルダーハーネスや背中の蒸れを防ぐエアベンチレーションシステムを備えているため、機材を収納しても背負い心地は快適だが、カメラを持ちながら歩くという意味では、オプションの「くびの負担がZEROフック」(2990円/ダイレクト販売価格)が活躍する。
「これはいいですね! カメラを首から下げていても重さがかからないから負担が少ないし、カメラの重さで前方向にバックパックが引っ張られるから、心なしか軽く感じます」
しかも、GW-ADVANCEでは「くびの負担がZEROフック」を縦だけでなく、横でも使えるため、カメラストラップを肩掛けしたときに滑り落ちないようにサポートしてくれるのだ。
「26リットルの容量にレンズを装着したカメラ2台と、レンズ2本、クリップオンストロボ、14インチのPCを入れて歩くとなると、肩に負担はかかります。とはいえ、クッション性の高い厚手のショルダーパッドが肩にフィットするため負担を軽減してくれます。大容量だけになんでも入ってしまうので、入れ過ぎには注意しましょう」
▼出張時などキャリーケースに装着しての移動
出張時に機材を持って行く際、キャリーケースにカメラバッグを乗せて行く場合が多いという須田さん。
「キャリーに乗せての移動は、ショルダーバッグの方が安定感はあります。とはいえバックパックも装着できるのは、移動の時に重宝します。大型のため、横での装着になりますが、キャリーオンホルダーもしっかりしているし、サイドハンドルもあり実用的です」
バックパックはフレームが内蔵されているため、横にしても本体の形状をキープしたまま装着可能。三脚はサイドに固定した方が、安定性は増す。
機材を入れた状態でキャリーケースの上に乗せられるので、安心感も高い。
バックパック、ショルダーバッグともに、背面にキャリーオンホルダーを装備する。
■使うシーンの幅が広がる大容量モデル
リュックとショルダーバッグは好みによるところもあるが、撮影スタイルや撮影場所、被写体によっても使い分けることも多い。今回、実際に使ってみてどうだったのか。
「大は小を兼ねるで、あらゆる機材が入る点はいいですね。撮影場所に持って行き拠点として使ったり、家でそのまま収納ケースにするという使い方はアリです。ただ、どうしても小さいサイズと比べると機動力が落ちるので、機動力を重視する場合、バックパックなら「GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック17」「GW-ADVANCE タンク リアゲートバックパック17」(各2万9800円/ダイレクト販売価格)がいいと思います。ショルダーバッグの場合、「GW-ADVANCE タンク」シリーズではこの26リットルが1サイズのみなので、「GW-STANDARD リッジ」の「ショルダーバッグ24」「ショルダーバッグ15」「ショルダーバッグ10」という選択肢もあるのではないかと」
これ1つあれば大半の機材が収納可能で、サブバッグではなく、あくまでもメインとしてのバッグ。バックパックとショルダーバッグ、どちらがいいということはなく、大容量モデルでこの選択肢があることが大事。選択肢という面では、今回扱ったバックパックには、実は後ろ開きのモデル「GW-ADVANCE タンク リアゲートバックパック26」もラインナップ。
「いや〜、前開きか後ろ開きか迷いますね。PCのポケットが独立している前開きもいいですが、背負う面を地面につけなくていいという意味では後ろ開きがいいですし…。立てた状態でのトップへのアクセスは微妙に違うので、こればっかりは実際触ってみて、自分の使いやすさと好みで選ぶしかないかと」
▼【番外編】これはいいアイデア!
今回登場した「GW-ADVANCE タンク」の隠れた進化ポイントが、レインカバー。
バックパックのレインカバーは、背負った時に背中とバッグの隙間に雨が入らないよう、本体だけでなくショルダーハーネスまでしっかりと覆うため、機材だけでなく背中も濡れにくくなっている。
ショルダーバッグは、天面から底面、サイドまでマルっと覆うタイプ。収納した機材をしっかりと覆い、底面から水が染み込むのも防いでくれる。
細かなところに開発者のこだわりが見て取れる「GW-ADVANCE タンク」のラインナップは全6モデル。自分のフォトライフに合わせて最適なモデルをチョイスしたい!
(写真/富山龍太郎、取材・文/澤村尚徳<&GP>)