みなさん、愛車のタイヤ交換をいつしましたか? 私、『&GP』の澤村は、恥ずかしながらタイヤを交換するという概念がすっぽり抜け落ちており、コロナ禍に購入した中古のクルマは、入手してからずっと履きっぱなしーー。
そんな折、自動車評論家の小川フミオさんが最近、愛車のタイヤを交換したという話を小耳に挟み、ちょうどいい機会なので、タイヤについてレクチャーしてもらうことにしました。
そもそも国内外の試乗会に参加する機会の多い自動車評論家が、自分の所有するクルマにどんなタイヤを選んだのか? 何を基準に選択したのか? そしてどんなタイミングで交換したのか? タイヤの基本的な役割とともに、タイヤ交換をした背景を探ります。
■「タイヤは、生命を乗せている」を、もう一度認識
本題に入る前に、問題。「クルマの中で、道路と接しているパーツは何種類?」間違えた人はいないと思いますが 「そんなの簡単!タイヤだけだから1種類でしょ」と答えた方、全員正解です。
買い物や送り迎え、仕事、レジャーと、用途が異なろうが、一般的なファミリーカーであろうが、ハイパワーなスポーツカーであろうが、はたまたオフロードを走破するクロスカントリー用四駆であろうが、車種が異なってもそれは変わりません。
ですが、普段クルマに乗っているときに、それを意識したことありますか?
唯一、地面に接しているタイヤの接地面積は1本あたり、だいたい手のひら1枚分。1台1トンから2トンの重量があるクルマを、手のひら4枚分で支えているということ。つまり、タイヤの上の“箱”に乗っている以上、『安全・安心』はタイヤにかかっているのです。そんなタイヤを、みなさんはちゃんと選んでいますか?
「タイヤは、生命を乗せている」ということを再認識したら、もっとちゃんとタイヤを選ぼうと思うはずです。
でも実際、タイヤの選び方は分からないし、本当に変わるのか? 愛車に合ったタイヤはあるのか? という疑問も残るところです。そんな疑問を解説していきましょう。
■そもそも、なぜタイヤ交換したのですか?
澤村:小川さんは試乗会で、国内外問わず何十台、何百台とクルマに乗ってらっしゃいますが、ご自身のクルマというのは、今の愛車はどうして選ばれたんですか?
小川: 去年、イギリスでジャガー・クラシックがレストアを手がけた1970年代のジャガーXJ12Cに乗る機会があったのだけど、エンジンのフィーリングも含め、そのゆったりした走りと乗り味に感動したんです。それがキッカケになって、古き良き時代の乗り味が残る、3代目XJシリーズ(X308)のユーズドカーをジャガーの専門店で手に入れたんです。
澤村:数ある中から小川さんが選ぶほどですから、スペシャルな1台だと思うんですが、購入直後にタイヤを交換したとおっしゃってましたよね。どんなタイヤを選んだか教えてください。
小川:選んだのはブリヂストンの「レグノGR-XII」です。
澤村:タイヤには詳しくはないですが、レグノは聞いたことがあります。でも、なぜレグノを選んだのですか?
小川:クルマを購入した専門店のオススメもレグノでしたし、個人的にも乗り心地の良さと静粛性に優れるレグノがXJにぴったりだと思ったんです。それに、ユーズドカーを買ったらタイヤを真っ先に交換するのがポリシーなので。
澤村:でも、タイヤでそんなに変わるものですか? それに、まだ使えそうなタイヤだったらもったいなくないですか?
小川:変わりますね〜。乗り心地もそうですが、何より“安心感”が違いますね。実は、今回購入したXJにもレグノを履いていたんですが、一見まだ使えそうに見えても、パンクを修理しているかもしれないですし、使用状況も分かりませんから。個人的には溝が減っていなくても、劣化を考慮して3年で交換するようにしています。
澤村:なるほど、そういう点も踏まえての安心感なんですね。そう聞くと、今さらですがタイヤの役割が気になってきます。
小川:まずは車両の重量を支え、衝撃を和らげるっていうのがあります。その上で、駆動力や制動力を伝え、進行方向に曲がるというのが基本的な役割になります。
澤村:車両の重量を支える、接地面積がタイヤ1本あたり手のひら1枚と聞くと、じゃあタイヤを大きくして面積を…と思うんですけど、それってダメですか?
小川:ダメです。接地面積は大きすぎても、小さすぎてもグリップ力が変化します。もちろん、変化するのはそれだけではないですから、クルマの重量や用途に合致する、適切なサイズを選ぶことが大事ですよ。

▲自動車評論家・小川フミオ/自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
■タイヤの種類は?
澤村:そういえば、タイヤに種類もいろいろありますよね。寒い地方だと、冬にスタッドレスタイヤに交換するのが当たり前ですし。
小川:そうですね。スタッドレスタイヤ、例えばブリヂストンの「BLIZZAK」に使われている発泡ゴムは低温でも硬化しにくく、凍った路面や雪の上で高いグリップ力を発揮します。それこそ、いちばん身近で『安心・安全』を担っているんだと感じられるタイヤかもしれませんね。
澤村:ほかにどんなタイヤがあるんですか?
小川:燃費がいいとか、乗り心地がいいとか。グリップ力が高いとか、タイヤによって特性が違うので、その辺りは乗っているクルマのキャラクターとの相性もありますし、オーナーの好みもあるかなと思います。

▲左からレース・スポーツタイヤのPOTENZA、プレミアムコンフォートタイヤのREGNO、SUV専用設計タイヤのALENZA。用途によってパターンに違いがあることが見てとれる
澤村:車種や用途によっても選ぶタイヤも大きく異なるんですね。そういえば、レース用のタイヤは溝がないですが、普通のクルマ用には溝が切られていますね。そんな違いもあるんですか?
小川:そうですね。レース用のスリックタイヤは、路面との接地面積を最大化することで高いグリップ力を発揮する設計なので、そもそも街乗りの乗用車には適しません。そして、溝にはちゃんと意味があって、タイヤと路面の水を除去するだけでなく、操縦安定性や駆動力にも影響します。ちなみに、ブリヂストンでは同じ商品ブランドでも出荷する国の道路状況にあったゴムの配合にするなど、使用する環境と大きな関わりがあるんです。
澤村:そうなんですね。そういえば、溝の深さを計測する機器もありますが、一度も測ったことなくて…。目で見て”減ってるかな?””空気入ってるかな”くらいは点検してましたが、タイヤって想像より繊細なんですね。
小川:何はともあれ、ちょっと澤村さんのタイヤを見てみましょうよ。
澤村:恥ずかしいですね。ちゃんとお手入れしてないのがバレてしまう。
小川:これはちょっとマズイかもしれませんね。溝もそろそろ限界ですが、劣化してヒビも見えますし、安全のためにも変えたほうがいいですよ!
■タイヤはどう選べばいいですか?
澤村:ちょうど車検だったので、いい機会でしたが危ないところでした。ところで装着するタイヤは、どう選んだらいいですか?
小川:すべてのタイヤのサイドにサイズ表示があるので、サイズに関してはそこを見ればいいと思いますが、まずは車種によっても最適なタイヤがあるので、どう選ぶかは車種ごとに変わります。また、基準になるのは新車時のタイヤで、加えて普段どのようにクルマを使うのか、その用途に合わせて選ぶという感じですね。
澤村:私のクルマも古くて、タイヤも4年は交換してないし…。オイル交換はよくするのですが、タイヤって日々の変化も分かりづらいので“このタイミングで交換!”という意識もあまりなかったんです。でも、さっきの安心・安全の話を聞いたら交換しようかなと思いました。
小川:ちなみに、そういう人が多いんでしょうね。友人・知人からタイヤ交換の相談を受けると、まず現在装着しているタイヤの不満やこうなれば良いなという意見を聞いてからアドバイスをしますが、そもそも不満が明確でないという人も多いと思います。
澤村:確かにそうですね。自分も含めて変化や劣化に気づかない人って多いかもしれませんね。ただ古いということもありますが、もうちょっと乗り心地が良ければなあ、とか静かだったらなあ、と思うことはあります。
小川:そういう人にはブリヂストンのwebサイトにある『タイヤ選びのAI診断サービス』が便利ですよ。シンプルな質問に答えるだけで、AIが自分のクルマに適切なタイヤを選んでくれますから。
澤村:それはいいですね。私のクルマもタイヤを変えたかったので、早速やってみましょう。えっと、クルマに乗る頻度と用途、メンテナンス頻度に…と項目は多いですが、分かりやすいですね。
小川:どうですか?
澤村:私は『レグノGR-XIII』になりました。この診断は面白いですし、クルマに詳しくなくても使いやすいですね。じゃあ早速、近所でイチバン安いところを探して…。
小川:ちょっと待ってください。タイヤ選びでもうひとつ、大事なことがあるんです。それは信頼できるお店で交換すること。これもとっても重要なんですよ。

▲今回タイヤを交換したのは、東京都豊洲エリアにあるタイヤ・ホイールなどを中心に扱うカー用品専門店「コクピット豊洲」。信頼できるプロが、さまざまなタイヤの悩みに答えてくれる
澤村:でも製品は同じですよね?
小川:私がクルマを手に入れてすぐにタイヤ交換をした理由に、「使用状況が分からないから」と話しましたよね。タイヤって保管状態が悪いと劣化するんです。例えば、直射日光の当たる場所でずっと駐車されていると劣化は進みます。新品タイヤも同様で、日の当たるところで展示されているなど、適正保管していないケースだと、ゴムの柔軟性を保つ油分や成分が抜けてしまったりすることもあるんです。これらは極端な例ですし、しっかり保管しているお店もありますが、私が専門店でタイヤ交換を行ったのは、せっかくなら新しいタイヤで本来の性能を味わいたいというのも理由のひとつだからなんですよ。
澤村:保管中の劣化までは考えませんでした。AI診断で最適なタイヤを選んだあとは、信頼のおけるショップを選ぶ、ということですね。
小川:そうですね。ちなみに、ブリヂストンではコクピットやタイヤ館というタイヤショップを展開しています。コクピットは澤村さんのVWゴルフIIのように、ちょっとマニアックなクルマでもアドバイスに乗ってくれますし、タイヤ館は気軽で身近なタイヤ専門店というイメージでしょうか。ちなみに、私が交換した「パドック246」はタイヤ館ですが、タイヤ交換後の100km点検も無料ですし、窒素ガスの充てんや補充もしてくれます。
澤村:窒素ガスですか?それって効果あるんですか?
小川:窒素ガスはゴムへの透過率が低いので空気圧の自然低下が少ないですし、熱による体積の変化も少ないので空気圧が一定に保てるといったメリットがあるんですよ。そういうアドバイスも含めて、専門店での交換がオススメですね。
澤村:タイヤって想像以上に奥が深いですね。そう聞いてAI診断やホームページを見ると、新たな気づきも多いですね。あ、ブリヂストンって専門店での取付作業費込みのネット購入(ブリヂストンタイヤオンラインストア)やタイヤのサブスクサービス「mobox」なんていうのもあるんですね。タイヤの重要さにも改めて気づきましたし、勉強になりました。
小川:澤村さんのゴルフIIは名車ですから、『安心・安全』のためにもタイヤを交換すべきですし、きっと乗り味もよくなりますよ。
澤村:タイヤを交換するとクルマの足元が引き締まって見えますね。驚いたのは、走っているときにハンドルやフロアに伝わってきていたザラザラした感触がグッと抑えられたこと、そして”ゴー”とか”ザー”っていうノイズも減ったと思います。
そろそろ車検だという方はもちろん、何年前にタイヤ交換をしたのか分からない方は、まず愛車のタイヤに目を向けてみてください。信頼できるタイヤを履くと安心感が違いますし、走行安定性や快適性も格段にアップ! この記事をきっかけに自分にピッタリなタイヤを選んでみてはいかがでしょうか。
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(取材・文/村田尚之、写真/五十嵐真)