クルマを運転中に楽しめることといえば、やはり音楽。自宅では味わえない、好きな音で満たされた空間を作れるのがクルマの魅力のひとつです。
ちなみに愛車の音質、満足してますか?
新車購入時に、有名ブランドのオーディオセットをオプションで付けたというこだわり派の人もいるでしょうが、例えば中古車を購入した場合、オーディオまわりは買った時そのままという人は多いのではないでしょうか。
それ、ちょっともったいないかも。
実はクルマのスピーカーって結構簡単に替えられるんです。しかも効果は絶大。そこで、どれだけ音が良くなるのかを体験させてもらうことにしました。
試すのは、パイオニアのカーナビ/カーオーディオブランド、カロッツェリアのスピーカー「Cシリーズ」。低音を担うウーファーと中高音を担うトゥイーターが別体となったセパレートタイプで、ハイレゾ対応モデルです。
この「Cシリーズ」を取り付けたパイオニアのデモカー2台(デリカD:5、ハスラー)を借りて、オーディオ・ビジュアル評論家の折原一也さんと&GP編集部の山口が実際に走行しながらさまざまな音楽を流してみました。

▲(右)折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。(左)山口健壱(ヤマケン)|&GP編集部アウトドア、動画担当。音楽は好きだけど、音質についてはよく分からないオーディオ初心者。愛車の軽バンで音楽を聴くのはほぼ諦めている
■「Cシリーズ」と取付工賃合わせて約5万円
――どうでしたか?
山口 めちゃめちゃ良かった。普段、軽バンに乗っていて、60km/hぐらい出すと「なんか音が鳴ってるな」ぐらいなんですよ(笑)。だからもう、違いすぎてビビりました。
折原 そもそもクルマの純正スピーカーは残念なものが多いんですよね。音がモゴモゴして聴こえなかったり籠もっていたり。これって単純に音量を上げても解消しないんです。だからこそ後付けスピーカーに替えるっていうのはかなり効果がある。
――とはいえ、スピーカーを替えられることを知らない人って多いかもしれません。実はカー用品店に行けばさくっと購入&交換ができるんですよね。ちなみに今回聴かせてもらったカロッツェリア「Cシリーズ」は実勢価格が3万7000円前後。そして気になる取り付け工賃は、調べてみたところカー用品店の場合、1~2万円ほどのようですね。

▲「めっちゃよかった~」(山口)
山口 デモカーに乗る前にそれを聞いて、トータルで5万円ぐらいか…って思ってたんですが、実際に聴いた今ならアリですね。
折原 替える価値は大アリだと思いますよ。運転中に得られるエンタメ体験って、耳で聴くコンテンツしかないじゃないですか。だからこそ音質をグレードアップするっていうのは、たまに乗る人でも大きな価値があると思います。
山口 たしかに。
折原 もし中古車を買うのであれば、購入のタイミングで一緒に出費しちゃえばいいんですよ。そうすればずっと幸せな気分でいられる。
――いいオーディオ積んでる中古車を探すって、色とかグレードとかの条件も合わせて考えるとかなり難しい。だったらオーディオはあえて考慮せずに探して、買う時にスピーカーを替えちゃえばいいわけですよね。

▲臨場感ある低音を響かせるウーファー
折原 購入時はクルマの価格を出費するわけなんで、プラス5万円って考えれば案外受け入れられる気がします。
■広い車内が音楽で満たされるデリカD:5のセッティング
――今回はデリカD:5とハスラーという2台のデモカーを運転したり後席に座ったりして「Cシリーズ」の音を体験してもらいましたが、まずはデリカD:5から感想を聞かせてください。

▲外装までこだわってアウトドア仕様にカスタムされたデリカD:5。ワイルド&スタイリッシュなカスタム内容を知りたい人はこちらをチェック! パイオニア「デリカD:5 車内カスタム計画」
折原 ボディが大きめのデリカD:5ですが、車内がしっかり音で満たされていて、さらに音のバランスが良かったのが印象的でした。洋楽のサウンドにすごくマッチしていて、低音のリズムのアタック部分も気持ち良く、臨場感ある聴こえ方や広がり方がいいなと思いましたね。
――ちなみに音で満たされるって立体オーディオとは違うんですか?
折原 違います。カーオーディオってちょっと特殊なんですよ。自宅でのオーディオってスピーカーは四角い箱じゃないですか。でもカーオーディオのスピーカーって箱がない状態のようなもので、ドアの裏側空間を使ってスピーカーボックスの効果を得るようにしていたりするんです。
山口 言われてみればそうだわ!
折原 しかも、スピーカーの配置だってベストではない。運転席って真ん中じゃないですよね。それにロードノイズもある。音楽のリスニング環境としては劣悪なんです。
山口 そう、ノイズがうるさいんですよ…。
折原 でも普通のオーディオとは違い、リスニングポジションが固定されるというメリットもあるんです。だから、バーチャル技術とかタイムアライメントコントロール(各スピーカーが出す音のタイミング調整)といったオーディオ的な技術が効いてくるんです。音を自分のクルマに合わせてカスタマイズするという余地がある。これって趣味性があっておもしろい。

▲デリカD:5は「サイバーナビ」を装備
――クルマって外からのノイズを減らすことを懸命にやってるわけじゃないですか。吸音する内装とかもそうだし。と考えると、オーディオ視点では最悪の環境かも、って思ったんですよね。
折原 他にも、ウーファーが下に付いていることとか、車種によって環境が異なったりとか、いろいろオーディオには厳しかったりしますよね。だからこそ、スピーカーを替えて良い音にする意味って大きい。
――それに好きな音楽を大きな音で聴ける空間って貴重ですしね。
折原 そうなんです!
――だからやっぱり替えるのはオススメだなって気がします。
山口 約5万円って大きいけど、それ以上の効果があると思いますよ。運転席だけでなく後部座席でも聴いてみましたが、「おー、ちゃんと音浴びれるぜ!」みたいな感覚ありましたから。
■J-POPをライブのように楽しめるセッティングのハスラー
――ちなみにハスラーはどうでしたか?
折原 デリカD:5とは全然違いましたね。
――あ、そうなんですか?
山口 そうなんですよ。本当に違った。
折原 トゥイーターがダッシュボード上の前寄りにセットしてあるんです。その効果だと思うんですが、フロントガラスのあたりにアーティストがいるようなサウンドイメージになっていました。ハスラーは軽自動車なので車内空間は広くないわけですが、それを逆手に取って眼の前にサウンドステージが存在するといった作り方をしているのかなと。デリカD:5は全体が包みこまれるイメージだったのですが、ハスラーはハスラーでおもしろいなと。
――トゥイーターの効果だけでそんなに変わるんですね!
折原 そうなんです。ちなみにハスラーのセッティングだと、J-POPがいい感じでしたね。ボーカルが目の前に浮かび上がるような感じです。
――ライブ感があるわけですね。眼の前でアーティストが演奏したり歌ったりしているような。

▲ハスラーのメインユニットはディスプレイオーディオ
山口 マジで全然違いました。こんなにも違うのかって驚いたもん。セッティングであんなに変えられるものなんですね。
折原 デリカD:5はイコライザーでしっかり追い込んでいて、空間指向かつフラットな音質を目指していたような感じですね。一方のハスラーは、人の声をはっきり聴かせたいというセッティングでした。そう考えると、どちらの方向性にも対応できるスピーカーなんですね。
山口 自分の好きな音楽やよく聴く音楽に合わせてセッティングできるって楽しすぎる。
折原 あと、先ほどヤマケンさんが話していた「走っていると音が聴こえなくなる」という場合も、ハスラーのセッティングのように正面から音がダイレクトにくるようにすれば、かなり効果は高いと思いますよ。
山口 たしかに、走行中もロードノイズに負けずにちゃんと音楽が聴こえる感覚はあったかも。
折原 ハスラーの場合は、そもそもスピーカーまでの距離が近くて、わりとはっきりした音を、音像も作ってしっかり聴かせてくれるセッティング。実はこの方向性って、純正スピーカーだと得にくいんですよ。J-POPのボーカルをしっかり聴かせる音楽とか、他にもラジオやポッドキャストとかなら、空間に響かせるデリカD:5のセッティングよりハスラーのほうが聴きやすいかもしれません。
山口 知れば知るほど、替える価値大アリだなって感じてます。
折原 クルマ通勤の人だけじゃなく、週末しか乗らない人も、約5万円で愛車の音が大幅グレードアップできるわけですからね。大アリですよ。
* * *
そもそもクルマのスピーカーを替えるという発想がなかった人にとっては、目からウロコな話かもしれないですが、本当に簡単に交換できちゃうんです。DIY好きなら自分で交換という手もありますし(ドラレコなどと違い配線がさほど大変じゃないのがポイント)。
好きな音楽で満たされた空間って、考えただけで幸せになりますよね。

▲専用取り付けキットで固定されたデリカD:5のトゥイーター
現在、カロッツェリアの車載スピーカー「Cシリーズ」には、ハイエース、デリカD:5、デリカミニ用のインナーバッフル(ドア内固定ユニット)とトゥイーター取付キットも用意されています(今後対応車種拡大予定)。さらにトヨタ 23車種、日産 8車種、ホンダ 26車種、三菱 12車種、スバル 6車種、スズキ 13車種の純正トゥイーター位置に取り付け可能なブラケットも同梱されているなど、適合車種はかなり幅広くなっています。
愛車のスピーカー音質や音量に不満という人は、検討の価値大アリですよ。
<取材・文/円道秀和(&GP) 写真/湯浅立志(Y2)>