仲間や家族とレジャーや旅行に出掛ける時「ミニバンだったら便利だし、楽しそうだ」と思ったことがある人、多いのではないでしょうか?
いきなり個人的な話で恐縮ですが、私も年に数回、スキーへ出掛けたり、秘境温泉を訪ねたりしますし、風景写真を撮るのが好きなので “ミニバンっていいなぁ” と思うこともしばしば。一方、スキー場や温泉、景勝地へのアクセスを考えると、雪道やラフロードに遭遇することもあり、SUVじゃないと不安だなという場合もあります。
そんな時、ふと思い出すのは、年間を通じて日本各地を駆け巡るカメラマンが語った「デリカじゃないとダメなんだよね」というひと言。大量の撮影機材とキャンプ道具を積み込み、冬でも雪山や林道へ出掛ける彼らしい選択だとは思いますが、デリカのどんな部分が彼を魅了しているのだろう…、と思うのです。
デリカといえば、先々代、先代ともに、本格的なクロスカントリー4WDに迫る走破性を備えたミニバンとして人気を博しました。そして、2007年にデビューした現行型「デリカ D:5」も、その流れを継承するアウトドア&レジャー向けモデルとして、根強い人気を誇っています。
そんな折『今秋もデリカ D:5にふたつの特別仕様車が登場』とのニュースが。ベースモデルは、人気のクリーンディーゼルエンジン搭載車。これは興味津々、ここぞとばかり、その魅力を確かめてきました!
■3.5〜4リッター級の力強さを誇るクリーンディーゼル
去る2016年11月に発売された特別仕様車の1台は、毎年冬を前に発売され好評の「シャモニー」。そしてもう1台は、上質さとスポーティさを追求した「ローデスト ロイヤルツーリング」です。
搭載されるエンジンは、ともに、ミニバンとしては唯一となる2.2リッターのクリーンディーゼル。そして駆動方式は、2台ともSUV顔負けの電子制御4WDシステムです。とくれば、スキーやマリンレジャー、アウトドアレジャー好きにとって、がぜん気になる存在なのではないでしょうか。
はやる気持ちを抑えつつ運転席に座り、エンジンをかけると “ルルルル…” とディーゼルらしい心地良いビートを伴った音が聞こえてきますが、音量は控えめ。街中を走行中も、セカンドシートやサードシートのパッセンジャーと普通に会話できる、十分な静粛性が確保されています。
デリカ D:5に搭載される2.2リッターのクリーンディーゼルは、2013年のマイナーチェンジの際に追加設定されたもの。厳しい規制で知られる欧州向けSUV用として新開発されたもので、最先端の排出ガス浄化システムにより、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)を大幅に低減しています。
また、日本国内の規制にも適合するよう最適化を図っており、ポスト新長期規制や平成27年度燃費基準+10%(JC08モード)のクリアに加え、走行性能や静粛性も高次元でバランスさせているのが特徴です。
気になる最高出力は、同クラスとしては標準的な148psですが、最大トルクは36.7kg-mと、3.5〜4リッタークラスのガソリン車に匹敵する値を発揮します。
そう聞くと、スタートダッシュからグイグイと加速する! と思われるかもしれませんが、動き出しは控えめな印象。アクセル開度が大きくなるのに合わせて、ググッと速度が乗ってゆく感じでしょうか。しかし、この穏やかな加速フィールも、デリカ D:5ならではの魅力なのです。
最大トルクは、1500〜2750回転というワイドな領域で発揮しますが、アイドリングからちょっと上の低回転域では、ドライバーの意図を汲むかのように、トルクをおだやかに、じわりとタイヤへと伝えるのです。
例えば、雪道や砂地といった繊細なアクセルコントロールが必要とされるシーンでは、エンジンが敏感に反応すると扱いづらく感じるものですが、デリカ D:5はこうしたシチュエーションをしっかり考慮したかのようなセッティング。この扱いやすさは“ブウン! ドスン!!”となりがちな、コインパーキングのロック板を乗り越える時などでも十分実感できるのではないでしょうか。
では、パワー感はあまりないの? と聞かれれば、答えはノーです。
高速道路を90〜100km/hほどで巡航していると、6速ATを搭載することもあり、エンジン回転数は1600〜1800回転ほどに抑えられています。しかし、追い越しの際などは、軽く右足に力を込めれば、2000回転を超えた辺りから、4リッター級サルーンもかくやという、滑らかでパワフルな加速を味わうことができます。
ちなみに、ストップ&ゴーの多い市街地での燃費は、9~10km/Lほどで、高速道路をメインとした区間では12~13km/Lほど。いずれも車載燃費計による表示ではありますが、2トン弱という車重を考えれば、なかなか良好。長距離のドライブ旅行にも迷うことなく連れ出せます。クリーンディーゼル、侮りがたし!
■好みや趣味に合わせて選べる2台の特別仕様車
高ぶる気持ちをちょっと落ち着かせ、新たに登場した2台の特別仕様車をチェックしてみましょう。
ローデスト ロイヤルツーリングは、エアロバンパーやサイドガーニッシュといったエアロパーツが備わるグレード「ローデスト D-パワー パッケージ」をベース車としています。
エクステリアでは、美しい輝きを放つスパッタリング仕様のホイールを装備。ボディカラーは、ウォームホワイトパール、ダイヤモンドブラックマイカの2色が設定されています。
一方、ブラックを基調色としてまとめられたインテリアは、セカンドシートを左右独立タイプのキャプテンシート仕様として7人乗りとしています。
このほか、7インチメモリーナビ “MMSC” に後席9インチワイド液晶ディスプレイ、ロックフォードフォズゲートプレミアムサウンドシステムなども装備(非装着車も設定)するなど、上質かつラグジュアリー志向のモデルに仕上がっています。
さらに、ラゲッジスペースの使い勝手を高める “エレクトリックテールゲート” を装備しており、デザインだけでなく機能性も追求しています。
一方のシャモニーは、人気グレード「D-パワー パッケージ」がベース。ドアハンドルやドアミラーカバーを、フロントグリルと同じメッキ仕上げとし、上質感たっぷりのエクステリアに仕立てています。
さらに室内も、本木目&本革巻きステアリングや木目調パネルを装備するなど、高級感を感じさせる仕上がり。また、運転席パワーシートの採用や、7インチメモリーナビ(非装着車も設定)など、利便性の向上や装備の充実を図っています。
このほか、フロントシート後方の天井部には、ホワイトの照明をビルトインした “ルーフビームガーニッシュ” を装備。夜間のドライブ時には、間接照明の柔らかい光が車内を照らします。
■広くて使い勝手のいい3列シート&ラゲッジスペース
ローデスト ロイヤルツーリングとシャモニー、どちらを選ぶかは好みによりますが、いずれも室内空間は十分なスペースが確保されており、セカンドシート、サードシートともに足元スペースはたっぷり。シートは全席ともたっぷりとしたサイズで、座り心地は良好です。
ラゲッジスペースは、左右跳ね上げ式のサードシートを格納した状態で、荷室長1200mm、セカンドシートまで畳むと同1610mmと、スキー板、自転車といった長尺のレジャー用品や旅行用スーツケースも楽々と積み込めます。
そして「これは、ありがたいな」と感じたのは、ドライバースシートからの視界の良さでしょう。
大きなフロントウインドウに加え、左右のフロントピラー部にも “デルタウィンドウ” と呼ばれる大きな三角窓が備わることも理由ではありますが、運転席の着座位置がやや高めに設定されていることで、前方や左右の視界が広く「あと数cm、左側に寄せたいな」というような狭い路地でも、取り回しに困るようなシーンは少ないはずです。
本格クロスカントリー4WDである三菱「パジェロ」は、路面や車両周囲の状況を把握できるよう、シートポジションに考慮した設計が施されていますが、デリカ D:5もこうした思想をしっかりと受け継いでいるようです。
デリカ D:5は、ラフロードでの走破力とオンロードでの安定性を両立すべく、AWC(オールホイールコントロール)と呼ばれる思想に基づいて開発されました。高剛性ボディや重量配分の最適化はもちろん、ASC(スタビリティコントロール機能)、ASC(トラクションコントロール機能)といった、最新の電子デバイスももちろん搭載しています。
電子制御4WDシステムは、走行中も2WD、4WDの切り替えが可能で、燃費が気になる市街地では2WD、路面状況が悪くなれば駆動力を適切に配分する4WD…といった具合に、ダイヤル式のセレクターを操作するだけ。悪路走行や雪道など滑りやすい路面でも、優れた走破力を発揮する “4WDロック” モードも搭載しています。
「アウトドア趣味のアシに持ってこいだな」と感じながらドライブを続けますが、感心したのはこうした最新デバイスだけではありませんでした。
低速でひたひたと悪路を進まなければならない時でもドライバーに緊張感を強いることがない、扱いやすさをはじめ、クリーンディーゼルならではのトルク感と良好な燃費、そして、疲れにくいシートと広い視界…。ミニバンではあるものの、クロスカントリーSUVのDNAを感じる素性の良さこそデリカ D:5の魅力であり、並み居るライバルに対する大きなアドバンテージといえるでしょう。
スキーや自転車、アウトドア、そして、温泉旅行や撮影紀行といった趣味の世界において、本来の目的を楽しめるのは現地に着いてから。デリカ D:5には、ちょっとくらい天気が悪くても、距離が遠くても、気にすることなくどこまででも走っていけそうな“安心感”がありました。
「デリカじゃないとダメなんだよね」という友人の評価も、そうした意味だったのかもしれません。家族旅行にはもちろん、ちょっとハードなアウトドアレジャーにも使える信頼できる相棒をお探しなら、ぜひ一度お試しを。できるなら、ちょっと長めの試乗をオススメします。
■デリカ D:5 ローデスト ロイヤルツーリング 公式サイトはコチラ
■デリカ D:5 シャモニー 公式サイトはこちら
<SPECIFICATIONS>
☆ローデスト ロイヤルツーリング[試乗車:ブラック]
ボディサイズ:L4730×W1795×H1870mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2267cc
トランスミッション:6速AT
最高出力:148馬力/3500回転
最大トルク:36.7kg-m/1500~2750回転
価格:429万8400円
<SPECIFICATIONS>
☆シャモニー[試乗車:ホワイト]
ボディサイズ:L4730×W1795×H1870mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2267cc
トランスミッション:6速AT
最高出力:148馬力/3500回転
最大トルク:36.7kg-m/1500~2750回転
価格:378万8640円
(文/村田尚之 写真/柏田芳敬)