【ベンツ GLA試乗】SUVらしさを増したルックスに似合わぬ、安定した走りが◎

現在、メルセデス・ベンツは、最上位モデルの「Gクラス」を頂点に、実に7種類のSUVをラインナップしていますが、GLAはその中で最もコンパクトなモデル。Aクラスをベースにした車体は、車高が1550mm以下に抑えられ、街中での使い勝手に優れているのが特徴です。

今回のマイナーチェンジで変更されたのは、まずエクステリア。メルセデス・ベンツのSUVに多く採用されている、左右に走るバーに穴の空いた“パンチドグリル”を採用。さらに、フロントフォグランプやアンダーガードを強調したデザインとなるなど、オフロードイメージをさらに強めています。

リアのコンビネーションランプには、同社の「Eクラス」にも採用される“クリスタルルック”を新採用。これは、先進のリフレクター技術によって後方からの被視認性を高めるほか、状況次第で発光量を調整し、眩惑を防ぐ装備です。

また“4マチック”と呼ばれる、可変トルク配分型の4輪駆動システムを搭載したモデルも導入。通常は前輪駆動で走行し、路面の状態に応じて後輪にもトルクを配分する仕組みにより、燃費や快適性と、オフロードでの走破力を両立しています。

4マチックを搭載する「GLA 220 4マチック」は、2017年9月以降の発売予定。同じく「GLA 250 4マチック」は受注生産となります。このほか、381馬力を誇るメルセデスAMG「GLA 45 4マチック」というマシンも用意されていますが、今回試乗したのは、4マチック“非搭載”の「GLA 180」です。

オフロードイメージを強調したルックスとはなりましたが、車高1505mmという車体は、近付いてみると想像以上にコンパクト。そして、シートに滑り込むと着座位置も低めで、いわゆるSUV的なドライビングポジションとは印象が異なります。

走り出すと、SUVらしいサスペンションストロークの長さを感じるものの、動きはよく制御されており、しっとりとしたフィーリング。ただし、後輪を突き上げるような挙動に対しては、少し敏感に反応する印象です。

とはいえ、そうした敏感さや動きの大きさが顔を出すのは、速度があまり出ていないシーンだけ。高速道路に乗ると、そんな挙動もなりを潜め、路面に張り付いているかのような接地感を味わえます。都市高速によくある路面の継ぎ目もしなやかにいなしてくれる感覚は、SUVというよりはスポーティカーのそれ。着座位置の低さもあって、SUVを運転しているということを忘れてしまうドライブフィールでした。

コーナーリングも、車高やサスペンションストロークの大きさを感じるようなシーンは皆無。ハンドルを切った分だけ鼻先が入ってくれる感覚は、リアオーバーハングの短さもあって、少し大き目のハッチバックに乗っているような感覚。特にエンジンは、トランスミッションやステアリングと併せてセッティングを統合制御する“ダイナミックセレクト”を「Sport」モードにすると、ステアリングへの反応がさらに俊敏になり、スポーティな乗り味に。

のんびり移動する際は、燃費や快適性を優先する「Comfort」を、ワインディングなど積極的にドライビングを楽しみたいシーンでは「Sport」をセレクトすれば、シーンに応じた走りを楽しむことができそうです。

SUVらしさを感じたのは、リアシートに座ってみた時。ドライバーズシートに比べると着座位置が少し高く、アイポイントも上がるので、SUVに乗っているという気分を味わえます。お尻の下でサスペンションが動いている感覚もあり、その辺もSUVっぽい乗り味につながっていました。

今回の試乗車には、オプションの“レーダーセーフティパッケージ”が装着されており、レーダーで前走車を認識し、車速に応じて車間を適切にキープして追従してくれる“ディスタンスパイロット・ディストロニック”や、ドアミラーの死角に車両がいる場合、インジケーターが点灯して知らせてくれる“ブラインドスポットアシスト”、そして、走行している車線を逸脱しようとすると、ハンドルの振動で警告する“レーンキーピングアシスト”などが使えます。

こうした機構は、どこまでドライバーの運転に介入するのか? というサジ加減がポイントとなりますが、メルセデス・ベンツはその辺りの加減が絶妙。レーンキーピングアシストも、不注意で車線を踏んでしまったようなシーンではハンドルが振動して知らせてくれますが、明確に意志をもってハンドルを切った場合は車線を越えても作動しません。ドライバーを信頼すべきところでは人間の意志を尊重し、それ以外のシーンではサポートする、という切り分けがきちんとなされています。

このほか、緊急時に自動ブレーキが作動し、衝突を回避、あるいは被害を軽減してくれる“アクティブ ブレーキアシスト”や、ドライバーの疲労や眠気を70以上にもおよぶパラメーターで検知して注意を促す“アテンションアシスト”は全グレードに標準装備。ドライビングの安心感を高めてくれています。

SUVらしいスタイリングと高い走破力を兼備しながら、街中や高速道路ではコンパクトで低めの車高を活かし、快適な乗り心地を実現。さらに、ドライビングの楽しさも味わえるGLA 180。休日にはアウトドアアクティビティを楽しみたいけれど、ドライビングの楽しさや快適性も妥協したくない。そんな欲張りなドライバーの希望にも、しっかり応えてくれそうな1台です。

<SPECIFICATIONS>
☆180
ボディサイズ:L4430×W1805×H1505mm
車重:950kg
駆動方式:FF
エンジン:1595cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速DCT
最高出力:122馬力/5000回転
最大トルク:20.4kg-m/1250〜4000回転
価格:398万円

(文/増谷茂樹 写真/&GP編集部)


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