【日産 スカイライン試乗】姿や走りは大人になっても、新技術への挑戦は不変

R30 スカイライン

私は“スーパーシルエット”と呼ばれるレーシングカーに憧れた世代なので、手に入れるなら絶対にR30型、と思っていました。しかし、2世代目“S54型”による日本グランプリでの活躍、3世代目“PGC10/KPGC10型”のレース50勝など、往年のスカイラインはその走り良さを武器に数々の伝説を築き上げていますから、憧れたモデルも世代によって異なるもの。“スカイライン党”たちにしてみれば、そうした好みや互いのこだわりもまた、ハナシの種になるものなのです。

R30 スカイライン スーパーシルエット仕様

KPGC10 スカイライン レース仕様

そんな日本が誇る名車=スカイラインが、2017年で誕生60周年を迎えました。かつての恋人を思い出す…、というワケではありませんが、あの頃憧れの存在だったスカイラインがどのような成長を遂げているのか、ふと気になったのです。そこで、最新型の13世代目“V37型”でドライブに出掛けてきました。

現行型スカイラインが日本デビューを飾ったのは2013年の末。販売がスタートしたのは2014年2月のこと。近年、乗用車のモデルチェンジサイクルは5年前後ですから、モデルライフの半ばを過ぎたところでしょうか。

現在のラインナップ、およびメカニズムを簡単に説明すると…、

・3.5リッターV6ガソリンエンジン(最高出力306馬力)に電気モーター(68馬力)を組み合わせ、システム最高出力364馬力を誇る「350GTハイブリッド」系モデル。
・2リッター直4ガソリンエンジンにターボを組み合わせることで、最高出力211馬力を発生する「200GT-t」系モデル。

という、ふたつのパワーユニットが用意されており、駆動方式は350GTハイブリッドは4WDと2WDを用意する一方、250GT-tはFRのみの設定となっています。また、トランスミッションはいずれも、マニュアルモードが備わる7速ATとなっています。

グレード展開はというと、装備の違いにより「標準グレード」、「タイプP」、「タイプSP」が用意されるほか、タイプPとSPには専用内外装が与えられる「クールエクスクルーシブ」を設定。さらに、60周年を記念した特別仕様車「60thリミテッド」も、9月末までの期間限定で用意されています。

話を戻して、今回、ドライブに連れ出したのは、350GTハイブリッドの装備充実グレード、タイプSPの2WDモデル。エクステリアは、ひと目でスカイラインと分かる丸型テールランプ…というアイコンこそもはやありませんが、凛々しい顔立ち、抑揚の利いたサイドのラインも個人的には好ましく思いました。

しかし、ディテールをじっくりに観察すると、目尻の上がったヘッドライト、テールに向かって持ち上がるリアフェンダーのプレスラインなど、“ハコスカ”や“ケンメリ”を思わせる意匠も盛り込まれているようです。この辺りは、同窓会で「変わったね、いや、変わってないね…」という感覚にも似ているような気がしますが、ともあれサルーンとしては、破綻のない美しいプロポーションであるのは間違いないでしょう。

インテリアはというと、ドアを開けると8インチと7インチのツインディスプレイが備わるセンターコンソールが目に飛び込んできます。上段はナビや車両情報、下段はエアコンやオーディオを中心としたコントロールになりますが、スマホ世代でなく物理スイッチに頼りがちな私でも、操作に困るようなことはありませんでした。また、ダッシュボードの質感やデザインも落ち着いたテイストで、気恥ずかしくなるほど凝りに凝った意匠のダッシュボードが備わる高級車に比べれば、むしろ好意的に感じる方も多いのではないでしょうか。

ドライバーズシートに収まると、程良い包まれ感がありますが、室内空間そのものは必要十分なスペースが確保されています。しっとりとしたタッチのレザーシートは前後席ともゆったりとしたサイズで、掛け心地も良好。フォーマルな用途のサルーンとしても使えるだけのクオリティを実現しています。

という具合に、エクステリアもインテリアもなんだか落ち着いたしまったな、すっかり大人になって分別がついちゃったんじゃない? というのが、第一印象であります。では、現行型V37は名ばかりのスカイラインなのかといえば、そんなことはありません。

スカイラインといえば、黎明期のモデルが採用したレーシングカー譲りのエンジン、7世代目“R31型”の4輪独立操舵システム“HICAS(ハイキャス)”や、8世代目“R32型”のフルタイム4WDシステム“ATTESA(アテーサ)E-TS”といった電子制御など、最新・最強の技術を積極的に搭載してきました。こうした最新技術への挑戦に、スカイラインの真価や真髄を見出すならば、13世代目の現行モデルはどうなのかといえば、実は正当な進化形だと思うのです。

その理由は大きくふたつ。ひとつ目は、パワフルな走りを実現したハイブリッドシステム、そしてもうひとつは、ステアリング操作を電気信号に変換してタイヤの方向を換える“DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)”です。

ハイブリッドと聞くと、どうしてもエコ最優先というイメージがありますが、スカイラインはモーターとエンジンの連携も実に秀逸で、音質やフィーリングの変化など、走りの高揚感を邪魔するような無粋な振る舞いを見せることはありません。また、シームレスかつ強力、抑揚の効いた加速感も、草食系のサルーンとは一線を画すスポーティさを感じさせます。

また、DASもスカイラインらしい挑戦だと思えば、十分に受け入れたくなるテクノロジーだと思います。通常モードでは“バイ・ワイヤ”です、といわれなければ気づかないステアリングフィールにも感心しますが、ドライブモードセレクターをスポーツに切り換えれば明らかにクイックな反応を体感できるのも、DASならではといえるでしょう。何より、このDASは、設定した速度をキープしながら先行車との車間距離を保つ“インテリジェントクルーズコントロール”、高速走行時の直進性を向上させる“アクティブレーンコントロール”と併用することで、わだちの多い高速道路でも自働的に制御され、ドライバーの負担を大きく軽減してくれます。つまり、グランドツアラーとしての本質に磨きを掛けようという、開発陣の意図が最も現れている装備かもしれません。

ともあれ、装いも仕草もすっかり大人になったかつての恋人ですが、個人的には久しぶりの再会を存分に楽しむことができました。クチの悪い友人の「直6じゃなきゃ」、「テールランプがちょっと」というコメントは、きっと、V37型スカイラインの本質が見えてないから。確かに容姿は大人になりましたが、挑戦することを忘れない、ちょっと熱いハートを内に秘めているのは間違いありません。再会を望むなら、ヤケドにはご注意を。

<SPECIFICATIONS>
☆350GT ハイブリッド タイプSP(2WD)
ボディサイズ:L4800×W1820×H1440mm
車重:1800kg
駆動方式:FR
エンジン:3498cc V型6気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:7速AT
エンジン最高出力:306馬力/6800回転
モーター最高出力:68馬力
システム最高出力:364馬力
エンジン最大トルク:35.7kg-m/5000回転
モーター最大トルク:29.6kg-m(モーター)
価格:554万9040円

(文&写真/村田尚之)


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