【ボルボ“D4”試乗】5モデル同時展開。一気にクリーンディーゼルの主役へ!

あれは、2006年のこと。ドイツで2台のレンタカーを借りました。ともに2リッターエンジンを積む同じ型のセダンだったのですが、1台にはガソリンエンジンが、そしてもう1台にはディーゼルターボエンジンが積まれていました。

1日1000kmを走る行程もある12日間の旅程でしたが、旅の後半になると仲間たちが皆、ディーゼルターボ仕様に乗りたい、といい出したのです。その理由は、運転していて疲れが少ないから。200km/h近辺で巡航するケースも多く、同じ速度でもエンジン回転数が低いディーゼルターボの方が快適にドライブできることを、我々は身をもって実感したのです。2006年当時、ヨーロッパで販売される新車の約半分は、すでにディーゼルエンジン搭載モデルでした。

そして、現在。“D4”と名付けられた最新のクリーンディーゼルは、ボルボが総力を挙げて開発したもの。D4のために、エンジンのラインナップを集約して一極集中したほどの気合いの入れよう。そんな新作エンジンですから、日本でもラインナップの中核に据えると宣言しました。

日本では、ようやく単月ベースでディーゼルエンジン搭載車の比率が10%を超えたばかりですが、インポーターであるボルボ・カー・ジャパンでは、この先、シェアがもっと伸びると以前から予測していたようです。その予測に従い、これまでも日本へディーゼルエンジン搭載車の導入を何度か試みたようですが、環境対策がユーロ5仕様であったため、窒素酸化物の排出量が日本の基準をクリアできなかったのだとか。最新のユーロ6仕様となり、日本の厳しい規制をクリアしたD4は、まさにインポーターにとっても待望のパワーユニットなのです。

それを単に「ふつう」にマルを付けられてしまったのですから、たまったものではありません。なのでここからは、ボルボD4の「ふつう」がどれほどすごいのか? をお伝えしたいと思います。

ハッチバックの「V40」から、それをベースにしたクロスオーバーSUVの「V40クロスカントリー」、ミドルセダンの「S60」、そのワゴンバージョンである「V60」、そしてSUVの「XC60」まで、D4搭載モデル5車種がズラリと並んだホテルの駐車場。

始動して今まさに出発しようとしているV40のエンジン音は、ディーゼルであることを決して隠してはいません。高級車のガソリンエンジンのように寡黙ではないんですが、他ブランドを含む最新クリーンディーゼルのごく一般的なレベルに感じます。もちろん、ボルボに興味を抱くような意識の高いドライバーは、駐車場でいつまでもエンジンをかけっぱなしにするなんてこと、するとは思えません。なのでディーゼル特有のエンジン音も、問題には感じないはず。

そして、厚いドアを閉めて車内に入ると印象は一変。巧みに遮音されていて、カラカラといったディーゼル特有の音が聞こえてくることもなければ、高周波の耳障りな音もありません。なんと、エンジンブロックの両側面を吸音材で覆っているのだとか。ノイズ対策も本気ですね。

D4エンジンは、スウェーデンのヨーテボリにあるボルボ・カーズの本拠で設計され、そこから北東に150kmほど離れたジェブデにある工場で組み立てられています。1968ccのDOHCターボで、ボア82.0mm×ストローク93.2mmのロングストロークエンジン。最高出力こそ190馬力(140kW)ですが、最大トルクの40.8kg-m(400N・m)をわずか1750回転で発生します。

ちなみに、高圧の燃料直噴システムとその制御は、ニッポンのデンソー製。さらにいえば、D4に組み合わされる8速ATもニッポンのアイシンAW製。ボルボがベストと考えるコンポーネントを、世界中から柔軟にセレクトした結果、日本の技術が多数導入されたといいます。

さて、出発です。電動パワーステアリング、アクセルペダル、そして、ブレーキペダルなど、操作時のタッチや重さが統一されていて、気持ち良く発進できました。

走り始めから余力を感じさせます。V40はもちろん、車両重量が1.8トン近いXC60にも搭載されるエンジンですから当然ですね。低速域からターボのタイムラグを感じさせず、モリモリとパワーを引き出せます。まるで大排気量エンジンのようなたたずまい。ターボであることを意識させません。D4は大小ふたつのターボチャージャーを積んでおり、低回転域では小さなターボを早々に効かせることで、ターボラグを抑えているのです。

幹線道路を抜け、高速道路に入っても印象は変わりません。太いトルクで低回転を保ちながら走れます。結果、車内はとっても静か。同乗者との会話も非常にラクです。そして、速度を上げていくに従って、ドッシリとした安定感が増すような気がします。間違いなく、長距離を走っても疲れないタイプのクルマです。

一番感心させられたといいますか、意外だったのは、その“レスポンスの良さ”。ほんの少しアクセルペダルを踏む力を変えてやると、エンジンが素直に反応するのがわかります。D4を含めたボルボの新パワートレイン群は“DRIVE-E(ドライブ・イー)”と呼ばれますが、これらによってもたらされるドライバーのメリットのひとつに“ピュアなドライビングプレジャー”が掲げられています。ボルボといえば、先進の安全性といったイメージが先行しているブランドですが、実はD4を含むDRIVE-Eでは運転する楽しさも本気で狙っている…、それをこのアクセルレスポンスから強く確信しました。

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そして、“経済性”。今回はV40に加え、XC60もドライブしました。D4を積んだXC60のトルクは、従来の3リッターガソリンターボに匹敵。JC08モードでの燃費はガソリンターボがリッター当たり9.0kmなのに対して、D4では同18.6kmになります。その差なんと2倍以上。しかもガソリンターボはハイオクガソリン指定なので、燃料コストはリッター当たり35円ほど、D4の方がお安くなる計算です。あくまでスペック上の話ですが。

今後も、これまでどおり“安全”イメージがボルボを牽引するのは間違いないと思います。そこへ、“ドライビングプレジャー”と“経済性”まで兼ね備えることになるのですから、ボルボのさらなる躍進、これはそのまま文字通り「ふつう」に疑いようのない話ではないでしょうか。

<SPECIFICATIONS>
☆V40 D4
ボディサイズ:L4370×W1800×H1440mm
駆動方式:FF
エンジン:1968cc 直4ディーゼルターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:190馬力/4250回転
最大トルク:40.8kg-m/1750〜2500回転
価格:349万円

(文&写真/ブンタ)

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