ホンダミーティング2017の目玉のひとつは“クラリティ3兄弟”のドライブでした。
クラリティ3兄弟とは、ホンダのFCV(水素燃料電池車)である「クラリティ」と、そのEV(電気自動車)版である「クラリティ エレクトリック」、そして、PHEV(プラグインハイブリッド)仕様の「クラリティ プラグインハイブリッド」のこと。EV案とPHEV板は、2017年4月のニューヨークモーターショーで世界初公開された、まさにほやほやの新型モデルです。
一見、3台とも同じように見えますが、エンジンルームはもちろん、ラゲッジスペースのレイアウトなどがそれぞれ少し違います。
また、動力源の異なるFCV、EV、PHEVを同じプラットフォームで展開するのは、世界初とのこと。ホンダは、2030年までに4輪車の販売台数に占める3分の2を、ハイブリッド車、PHEV、EV、FCVにしたいと考えています。
クラリティ プラグインハイブリッドは、EV走行のみで約64㎞走行可能で、エンジンと併せると航続距離は約530㎞に達します。そして、クラリティ エレクトリックは、25.5kWhのバッテリーを搭載していて、動力性能は161馬力と強力。航続距離は約130㎞をマークします。今回の試乗でも、その実力の一部を感じ取ることができました。
もうひとつの目玉は、まもなく日本で販売がスタートする「シビック タイプR」と、ナゾの黒いクルマ「ダイナミクススタディ」の試乗。
シビック タイプRというと、市販車開発の聖地であるニュルブルクリンクでFF車世界最速となる7分43秒80を記録したことからも分かるように「ガンガン走るスポーティなクルマ」というイメージが強いかと思います。
でも次期タイプRには、走行モードに「ノーマルモード」「+Rモード」に加え、「コンフォートモード」が設定されているほか、MTでありながらシフトダウン時にエンジンをちょうどいい回転数に合わせてくれるシンクロ機構が備わっているので、頑張らなくても楽に走りを楽しめます。私のような、ゆるゆるドライブ派でも、程良いドライビングプレジャーを味わえました。
とはいえ、ブレーキの剛性はしっかりしているし、セミバケットシートはしっかりと体をホールド。そして、ステリングやペダルなどの剛性も高いなど、随所でしっかりとタイプRであることを主張しています。
注目のもう1台、ダイナミクススタディは、日本で間もなく発売がスタートする「シビック」をベースに、8速のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を搭載したモデル。
エンジンは、次期シビックの4ドアにも搭載される1.5リッターの直列4気筒ターボ(174馬力)で、素直な走りがウリ。タイプRのようにマニアックにならず、誰でも乗りこなせるクルマを目指して研究が進む1台でした。
近年、クルマ業界における最大の注目といってもいい自動運転車”。今回のホンダミーティングでは、現在開発が進む“高速バージョン”と“公道バージョン”の2種類を体験することができました。
「レジェンド」をベースとした高速バージョンは、高速道路への車両の合流を支援し、その後はハンドルを操作しなくても車線内を自動で走行。
そして渋滞時は“ヒューマン・マシン・インターフェイス”により、ドライバーがシステムの作動状況や周辺の状況を把握しやすいよう、ドライバーに細かく情報を知らせ、現在の自車や周辺の環境をメーターパネルなどに表示します。
この高速バージョンでは、自動運転中、ドライバーは他のことをすることが可能なのだとか。つまり、例えば自動運転中にテレビ会議をすることも可能なわけです。あと個人的には「プライベートでのコミュニケーションツールとして活用できるかも」という可能性を感じました。でもその場合、自動運転モードからドライバーが運転しなければならない状態に切り替わると、せっかくのコミュニケーションが突然、遮断されてしまいそうなので、相手と険悪な状態になるかも…。これは余計な心配かもしれませんけどね(苦笑)。
一方、「アコード」をエースとした公道バージョンの方は、一般道における自動運転の実現に向けて、AI(人工知能)技術を活用。白線のない道路、停止位置、歩行者の存在を、夜間でも認識可能にしています。AIにより、運転中にヒヤリとしたり、ハッとしたりする危険性を軽減してくれるほか、運転時のリスクの予測もしてくれるのです。
ただし実用化に向けては、ドライバーとシステムの役割分担を明確にする必要があるのと、リスクを最小限にするアルゴリズムの確立が必要とのこと。この辺りは、今後の開発の進展を見守りたいと思います。
このほか、ホンダは2輪車を手掛けていることもあって、2輪車のライディングトレーナーや、2輪車用エアバックの体験もできた今回のホンダミーティング。“人間中心”の考えで、技術によって人々の役に立つ企業を目指すホンダの最新事情を、丸ごと体験できました。
(文/吉田由美 写真/吉田由美、本田技研工業)
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