色の流行を決めたり、予想できたりするもののひとつ目は、毎年12月に世界共通の色見本帳を作り、翌年の流行色を発表するパントン社のカラー・オブ・ザ・イヤー。
2017年のトレンドカラーとして発表されたのは、黄緑色の“Greenery(グリーナリー)”という色でした。実はそこには、しっかりとした理由があったのです。
Greeneryは「春の訪れを呼び起こすフレッシュで華やかな黄緑色」の色合い。「始まりや復活、新しさ」を感じさせる色であり、また、昨今の複雑な社会や政治情勢の中で「再び人々につながりをもたらす色」なのだとか。
ふたつ目は、日本の一般社団法人 日本流行色協会が、60年以上も調査・研究している色のトレンド。時代背景や社会、人々の意識などを考慮し、毎年11月16日の“いい色の日”に、流行色を発表しています。
ちなみに、同協会が2017年の流行色に選定しているのは“リーディングレッド”。この色は「現状を変えていこうとする強いエネルギーを感じさせる色」であり、「ロボット技術の進化によって改めて人間らしさを考える時代に来ていること」、そして「赤は日本文化の象徴でもあり融和を象徴する色」であるといった理由から選ばれたのだとか。
そしてクルマの世界においても、トレンドカラーなるものが存在します。
それが、ドイツに本社を置く世界最大の総合化学メーカーBASF社が、毎年、行っている自動車カラートレンド予測がそれ。とはいえ、クルマの開発には時間がかかるため、いろいろなことが決まるのは、実は発表の3~5年も前のこと。つまり、現在、発表されるカラートレンド予測は、実は3~5年後のクルマのトレンドカラーを、さまざまなデータを元に予測しているものなのです。
それによると、2017年から2018年のカラートレンドのテーマは「透明と不透明の間」(トランスルーシッド)。
昨今、人と世界の間には、スマホの画面などのように透明のガラスが存在し、それを介して双方はつながっています。このガラスは、時には不透明なフィルターになってしまい、情報を曇らせてしまうことも…。そのため人々は、この先、より実態を求めるようになるのだとか。こうした透明と不透明との間をスマートに行き来することで、よりよい方向へ向かっていくことが求められるのだそうです。
この概念を表したのが、65色の自動車カラー。デジタルシフトしている人間を、強いブルーと、暖かなベージュによる人の肌で表現しているのだとか。
ちなみに、地域によってもトレンドカラーは異なります。
ヨーロッパ、中東、アフリカは、古いものを新たにアップグレードすることを求められ、個性的なつや消しのクリアコーティングが施された「イエローグリーン」など、これまでのクルマには見られなかったカラーリングが来そうとの予測。
対する北米では、テクノロジーから離れ、より自然な世界に触れていたいとの願望から、神秘さを醸し出し、自己に立ち返ることを意味するダークネイビー「アンダーカレント・ブルー」がトレンドカラーになるそうです。
また、アジア太平洋地域では、アジア独特の精神を表す「パールホワイト」と、特に中国の若者の反抗心をクールに表現する、きらめくガラスフレークを散りばめた深みのある鮮やかな「赤」がトレンドカラーになるのだろか。
そして日本では、人々はしっかりした安定感や安心感を求め、「ネイビーブルー」、「ディープレッド」、「ダークグレー」といったクルマの基本色ともいうべき色が再び注目され、さらに、最新技術が深い透明感で表現されます。派手ではありませんが、高い質感と強いメッセージ性を感じ取れる色ですね。
また、ツートーンやスリートーンといったカラーコーディネートや、異素材のコーディネートも登場するとのこと。それを証明するかのように、2017年のアジア太平洋地域では、透明感の高い「ブルー」、グリーンからブルーのレイアーがかかった「パールホワイト」、奥行きのある層を感じる神秘的な「ライトグリーン」の3色が、2015年以降、継続して流行中。この3色は、ほかの色や素材とのコーディネートにも最適だといいます。
一般的には、赤や明るい色のクルマが流行る時は景気が良く、青やダーク系カラーが流行ると景気が悪いといわれています。ということは3年後、アジア太平洋地域はまあまあ景気が良く、ヨーロッパなどは停滞気味、ということでしょうか。
双方の要素が含まれる日本は、さてどうなることやら? 3年後の2020年は、東京オリンピックが開催される年。それまでは好調、でもその後は要注意、ということなのかもしれませんね。
(文/吉田由美 写真/吉田由美、フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
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