もちろんルックスも、従来のカムリの印象を覆すもの。「ビューティフル モンスター」というキャッチフレーズからも分かるように、先代モデルから大変身を遂げたのは間違いありません。
1980年に登場したカムリは、日本での知名度こそそれなりですが、海外での認知度は抜群! 特にアメリカ市場では、15年連続で乗用車販売台数No.1を記録。100カ国以上の国や地域で販売され、世界累計販売台数は2016年12月時点で1800万台以上にものぼるのだとか。
それもあってか、これまでのカムリには“ホワイトブレッド(食パン)”と揶揄する評価があったように、「無いと困る足グルマ」的なポジションだったんです。でも、世界的に“セダン離れ”が進んでいる昨今。カッコいいセダンでなければ振り向いてはもらえません。だからカムリも、変身する必要があったんですね。
そんな大変身も、実は全世界で年間200万台以上を販売するカムリだからできたこと。新型は「性能、智能を突き詰めることで“官能”をもたらす、心揺さぶる上質セダン」をコンセプトに、トヨタが今、取り組んでいるクルマづくりの構造改革“TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)”の思想に基づき、プラットフォーム、パワーユニット、電子系メカなどの部品をすべてゼロから開発。そのおかげで、ワイド&ローのプロポーション、低いベルトライン、そして新世代トヨタの“キーンルックデザイン”で、押し出し感の強いルックスへと生まれ変わりました。
そしてドライブしてみても、新開発のプラットフォームの効果で走行中の車体の安定感がアップし、直進安定性も向上。ドライバーがクルマの中心近くに位置するようなレイアウトにすることで、運動性能が上がり、ねじり剛性もアップしています。
パワートレーンは、“2.5L ダイナミックフォースエンジン”と、新世代のハイブリッドシステム“THS Ⅱ:Toyota Hybrid System Ⅱ”の組み合わせで、カタログ値においては33.4km/Lという低燃費を実現。安全装備も“Toyota Safety Sense P”を全車標準するほか、後退時に左右後方から接近してくる車両を検知し、自動ブレーキ制御を行う“リアトラフィックオートブレーキ”をトヨタ車で初採用するなど、トピックいっぱいのモデルです。
ところでトヨタは、2016年から製品群ごとのカンパニー制を採用していますが、カムリが属するのは“ミッドサイズ・ビークル・カンパニー(MSカンパニー)。カムリのほか、「カローラ」、「RAV4」、「プリウス」と、まさに世界のトヨタを支える車種が勢ぞろい。そんなMSカンパニーのプレジデントを務める吉田守孝専務役員に、今回、お話をうかがうことができました。ちなみに吉田さんは、4世代目レクサス「LS」の開発主査を務められた方なのです。
−−レクサスのフラッグシップモデルであるLSから、トヨタのMSカンパニーを統括する立場に異動されるに当たって、頭の切り替えのようなものは必要でしたか?
吉田さん:レクサスは、トヨタの中のレクサス。なので、特にアタマの切り替えなどは必要としませんでした。新型カムリにも開発当初から関わっていましたしね。それに、パワートレーンやプラットフォ―ムなどはトヨタ車もレクサス車も共通。クラウンは「IS」、カムリは「ES」というように、ベースは同じとしています。でもレクサスの場合、そこに付加価値をプラスしているんです。静かさと燃費など、相反するものをより完璧に仕立てることで“AMAGING”なクルマにしなければなりませんからね。
−−トヨタにとってカムリとはどんなクルマなのですか?
吉田さん:カムリはトヨタにとって、販売のマスボリュームを占めるクルマのひとつです。しかし昨今、セダンの人気は世界的に見ても下降気味。だから新型は、機能的な価値だけではダメだと考えて開発しました。機能面はもちろん良化させましたが、見た時にカッコいいと感じ、ワクワクするクルマであることを第一に開発しました。その上で、走りのフィーリングもよくなければならないと考え、仕上げてきました。
−−2017年、トヨタはカムリのほかに、「C-HR」や「プリウス PHV」など、面白い車種を続々と登場させていますよね? それぞれのポイントを、ひと言ずつ解説していただけますか?
吉田さん:C-HRは、トヨタらしくとがったクルマ。例えるなら、恋愛に向くタイプです。新型カムリは、変わることを目指したクルマですが、恋愛にも結婚にも向くクルマ、という感じでしょうか。そしてプリウス PHVは、環境性能を突き詰めながら普通に走っている間も気持ちいい。ある意味、究極のアスリートなのかもしれません。
−−今回、新しいカムリはデザインのイメージを一新しましたが、デザインの方向性は最終的にはどなたが決定されるのですか?
吉田さん:デザインは好き嫌いが分かれますが、まずはコンセプトを考え、いくつかのデザイン案を出し合います。営業担当の意見や、ほかのクルマに対して得られたお客さまからの意見なども考慮しますが、必ずしも多数決ではありません。プロダクトアウトはターゲットとするマーケットなどの意見を聞きながら方向性を決定します。今は新興国が成長し、その結果、ユーザーの方の好みなどが先進国と似てきていますね。
“デザインファースト”であり“性能ファースト”でもある新型カムリは、トランプ大統領にも気に入ってもらえそうな“アメリカファースト”ならぬ“俺様ファースト”なクルマに仕上がったようです。
(文/吉田由美 写真/吉田由美、村田尚之)
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