【オトナの社会科見学】シェアは実に約30%!人気“教習車”を手掛けるマツダE&Tってどんな会社?

アクセラ教習車の例から、E&T社はマツダ本体と緊密に連携しつつ、特装車両の開発・製造を行っていることがお分かりいただけたかと思います。ここからさらに、同社の技術力が発揮された注目モデルを2台、ご紹介しましょう。

まずは「アテンザ」のオープンカー。報道や情報番組などでご覧になったことがある人も多いかもしれませんが、この特別仕立ての1台は、広島東洋カープの優勝パレードや、東京消防庁の出初め式などにも登場したことのあるクルマ。

もちろん、パレード用という特別用途のクルマではありますが、ただ単にルーフを切ったり、貼ったりしてつくられたモデルではありません。例えば、リアシート前方のロールバーは、車両剛性の確保に有効なのはもちろん、後席に乗る人が立ち上がった状態で体を保持する際、手でしっかりとつかめるよう“くぼみ”が設けられているのです。

また、後席のフロア部はかさ上げされているほか、シートの座面も底上げされているので、後席に座る人の顔が沿道からしっかり見えるよう配慮されています。

フロアは、補強バーの採用などに加え、サイドシルに発泡剤を注入するなど、優雅な車体デザインを崩さないよう、できるだけ見えない部分で強度アップを図っています。もちろんパレード用ですから、長距離を走ることも、高速でコーナリングすることもありませんが、市販車と同様、クオリティが追求されていることがうかがえます。

実車を間近で見る機会はさほど多くないと思いますが、テレビ番組やパレードなどでアテンザのオープンカーを見掛けた際には、そのディテールに注目してみてはいかがでしょうか。

さて、E&T社が手掛ける特装車両の中でも、私たちが目にする、また、実物に触れる機会が多いモデルといえば「スロープ式車いす移動車」や「リフトアップシート車」などの福祉車両かもしれません。

現在は、1日当たり12台前後が生産されるE&T社の福祉車両ですが、工場では完成した市販車両をベースに、さまざまな福祉用装置を装着する作業が行われています。

中でも需要が多く、車体加工が必要となる軽自動車「フレア ワゴン」の車いす移動車には、専用のラインが用意されており、その作業工程はさながら、小さな自動車工場のよう。このラインは車両の分解、加工、部品の取り付け、仕上げなどの工程に分かれており、工程ごとに担当者が作業を行います。

注目すべきは、完成車の分解・加工のパート。車両後部の切断には、コンピューター制御のレーザー切断機が導入されていて、とりわけ難しく、手間のかかる車体加工が、正確無比、かつスピーディに行われていきます。

また、新たに装着するスロープ部分やフロア部分、専用のリア車軸などは、工作設備の整った専門の工程で製造されていて、こちらも量産車と変わらない品質が確保されています。

教習車と同様、販売に当たっては、自動車メーカー製の新車という扱いになりますから、高い安全性が求められますし、品質についても一切の妥協は許されないのも事実でしょう。E&T社では、こうした高い要求水準に応えるために、最新の工作機械など設備の充実にも力を注いでいるのです。

マツダE&Tが手掛けるクルマは、教習車、オープンカー、福祉車両……と多種多様。また、運転する人や乗る人、使用される状況も、一般的な市販車とは少々異なります。でも“楽しい”、“心地よい”というベーシックな魅力を備えているのはもちろん、教習車の“乗りやすく分かりやすい”や、福祉車両の“使いやすくて便利”といった、ユーザー本位のモノづくりが追求されている点は、マツダ車にも通じる魅力でしょう。

まさに、マツダE&Tが手掛ける車両は「クルマは単なる道具ではなく、かけがえのない存在である」という、マツダイズムの象徴なのかもしれません。

(文&写真/村田尚之)


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