スマートフォンやタブレットを仕事のツールとしても使いこなしたいという人にとって、悩ましいのが「入力方法」だろう。そのひとつが「文字入力」であり、もうひとつが「手書き入力」だ。
スマートフォンの画面が小さくて、さらに指が太いというユーザーでもない限り、文字入力に困るという人はそうはいないはずだ。最近では筆者のように記事執筆を生業としているライターや記者の中にも、スマートフォンやファブレット(タブレットとスマートフォンの中間的な大型スマートフォン)にBluetoothキーボードを組み合わせて原稿書きをする人が増えてきた。
しかし、これはとてつもないスピードで文字を入力するための方法であり、メールの送信やSNSへの投稿程度であれば、わざわざキーボードを用意する必要はない。
一方の「手書き入力」は、多くの人が使いこなし切れていないのではないだろうか。文字入力ならソフトウエアキーボードをタッチするだけで済むが、手書き入力ともなると、繊細な操作が必要になる。せっかくタッチパネルが使えるというのに、手書き文字の入力もイラストの描画も、指先では満足に行うことができない。
そんな人には「スタイラス」、いわゆるタッチペンをお勧めしたい。スタイラスを使えば指先で画面が隠れることがないため、細かい描画が可能になる。手書きメモなどを残したい場合にとても便利だ。
先太ペン先が多い中で細部にこだわるAdonit「Jotシリーズ」
アップルのiPhoneシリーズの登場から、スタイラスに大きな変革が起きた。それは我々にとって、決して歓迎すべきことではなかった。例えばニンテンドーDSシリーズのスタイラスなどは細長いペン先になっており、誰でも手軽に手書き文字でもイラストでも描けるようになっていた。
しかしiPhoneシリーズやその後に登場したAndroidスマートフォン向けのスタイラスのほとんどはペン先がとても太く、画面の滑りが悪いものも多く、決してニンテンドーDSのように使いやすいものではなかった。
その大きな原因のひとつにタッチパネルの方式の違いが挙げられる。ニンテンドーDSなどのタッチパネルは「感圧式」と呼ばれるもので、圧力をかければいいため爪の先でも爪楊枝でも、何を使っても画面の操作ができる。一方で最近のスマートフォンやタブレットには「静電式(静電容量式)」などと呼ばれる方式が採用されている。
簡単に言うと静電気によってペン先の動きを検知するというもの。多くのスタイラスは本体からペン先まで金属など導電性を持つ素材が用いられており、画面側でそれを検知しているというわけだ。冬場に活躍する「スマホ手袋」なども、導電性のある素材を編み込むことで指先と手袋の先を電気的につないでいる。
人の指先から発せられるわずかな静電気を基にしているためか、従来のスタイラスは反応の悪いものが多かった。ペン先が細いほど細かい作業がしやすいのは当たり前だが、それをしてしまうと導電性が著しく落ちるのだろう。多くの“手書きファン”は、それらの中から我慢して少しでも使い勝手のいいものを選ぶしかなかった。
そんな中で登場したのが、電池を内蔵して自ら静電気を発するスタイラスだ。
今回紹介するAdonitの「Jot Script 2 Evernote Edition」は、静電容量方式のタッチパネルに対応するバッテリー内蔵のスタイラスで、細く丸いペン先を備えているのが大きな特徴となっている。同社のJotシリーズには、正確なドローイングが可能になるようにペン先に丸い透明なディスクが付属する「Jot Pro」などもある。Jot Script 2 Evernote Editionは、それに比べてより一般的なペンに近いデザインとなっている。
付属のUSB充電器を使って内蔵バッテリーに約45分で充電し、連続で最大20時間使用できる。USB充電器の上に立てて充電するスタイルはユニークだ。しかしパソコン以外のUSBハブやUSB充電器などを経由して充電する場合は、充電器の向きに注意しよう。
反応は上々! ペン先が細いため細かな描写がしやすい
Jot Script 2 Evernote Editionは「Jot Script Evernote Edition」の後継モデルという位置付けになる。その大きな違いは大きさと重さ、そしてバッテリーだ。
Jot Scriptは単4形乾電池を使用し、重さは約29gだったが、Jot Script 2は充電式のリチウムイオンバッテリーになり、重さは約18gとかなり軽量化した。Jot Scriptは単4形乾電池を入れるため上部が太くなっていたが、Jot Script 2ではすっきりとしたデザインに仕上がっている。
バッテリーは過放電によって使えなくなってしまう恐れがあり、不意の電池切れに対応しにくいというデメリットもある。しかし毎日のように使いたい人にとっては、手軽に充電して使えること、軽くて持ちやすいことなどメリットは大きいだろう。
実際に持ってみると、少しひんやりとしながら手にほどよい重さが感じられる。マットな質感も相まって、「高級感」と「使い勝手の良さ」をうまくバランスさせている印象を受ける。
使い方はとても簡単だ。Jot Script 2の中央付近にあるボタンを長押しすると電源がオンになり、それだけでスタイラスとして使えるようになる。
ペン先が細くなっており、ペンを当てている周辺がしっかりと見えるため、とても書きやすい。反応も上々だ。
Jot Script 2に対応するアプリなら、さらに高度な使い方ができる。例えばEvernoteのiPad向け手書きメモアプリ「Penultimate」(無料)の場合、Jot Script 2と連携することで本格的に「パームリジェクション」機能が使える。
パームリジェクションというのは、手のひらを画面上に載せた際に誤操作してしまうことを防ぐ機能のこと。一般的なスタイラスでも機能するのだが、誤操作してしまうことも少なくない。しかしJot Script 2をPenultimateに認識させると、指での描画が一切できなくなる(ペン先や色の選択、拡大ツールの呼び出しなどの操作は可能)。
ちなみに、同じAdonit社製の「Jot touch」は筆圧感知機能も備えているが、Jot Script 2には備えられていない。名称に「Script」(手書きや筆記体、文字などを表す)とあるように、「描画」というよりは「手書き」に特化したスタイラスと言える。
iPhoneシリーズやAndroidスマートフォン、タブレットでも一般的なスタイラスと同様に使えるので、利用シーンの幅は広い。さらに、Evernote プレミアムを6カ月無料で利用できるクーポンコードも付属している。Evernote プレミアムは年額4000円なので、2000円分お得だ。「必要なときにすぐに取り出して手書きメモができるスタイラスがほしい」という人には最適のモデルなのではないだろうか。
(文/安蔵靖志)