岡崎五朗の眼☆夢の内燃機関“スカイアクティブ-X”で、マツダはクルマ好きに新たな夢を見せる!

とはいえスカイアクティブ-Xの魅力は、省燃費やクリーンな排気ガスだけにとどまらない。低燃費&クリーン性能と、気持ちの良い走りとの両立こそが、このエンジン最大のメリットだと強調しておきたい。

実は今回、走り始めてすぐに感じたのは「うわ、これ気持ちいい!」という思いだった。スカイアクティブ-Xは厚い低速トルクもさることながら、高回転域まで軽快に、かつ気持ち良く回るという美点を持つ。6000回転付近まで回してもトルクの落ち込みは小さく、滑らかさを保ったまま、小気味良い「フォーーン」というサウンドを聴かせながら回ってくれる。

最近のガソリンエンジンは、残念なことに、燃費を追求するあまり、回転フィールがカサカサしているものが目立つ。ファットフリーのアイスクリームやヨーグルトなど、カロリー控えめの食べ物がもの足りなく感じるのと同様、燃費を追求したエンジンは、回転フィールの艶っぽさがスポイルされ、エンジン自体の楽しさ、気持ち良さを感じにくい。ポルシェやフェラーリといったスーパーカーでさえも、最新ラインナップが積むターボエンジンより、かつての大排気量・自然吸気エンジンの方が、どうしても魅力的に映ってしまう。

その点、スカイアクティブ-Xは、省燃費と優れたクリーン性能、そして気持ちの良いドライブフィールを兼備してきたところに、大いなる可能性を感じさせる。今後、燃費規制がますます厳しくなる中で、自動車エンジンのフィーリングはどんどんつまらなくなってしまうのでは、と危惧していたが、SPCCIはガソリンエンジン本来の“気持ち良さ”を武器に、ひと筋の光明を見せてくれた。

燃費を追求するには、ハイブリッドやディーゼルエンジンなど、HCCIのほかにもすでに技術が確立された選択肢がある。逆に、まだまだ改善の余地を残すHCCIは、コストや生産性などの面で、この先、省燃費という価値をアピールしにくくなる可能性さえ考えられる。しかしスカイアクティブ-Xは、燃費を大幅に向上させながら、ガソリンエンジン本来の楽しさをも兼備できるという新たな可能性を示してくれた。夢の内燃機関スカイアクティブ-Xは、クルマ好きに新たな夢を見させてくれるエンジンでもあるのだ。

(文/岡崎五朗 写真/マツダ)


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