■操作方法
操作方法も三者三様です。
▼「MT2A」
MT2Aはこの中では一番複雑かもしれません。ヘッドパーツをボディに締め込んだ状態と、やや緩めた状態で操作が変わります。締め込んだ状態ではターボモードオンリー。半押しで点灯するフォワードクリックスイッチと合わせ、シングルモードのフラッシュライトのように、短時間での点灯消灯を繰り返す、本格的なタクティカル操作が可能です。ヘッドを緩めると、一瞬の点灯を挟んで再点灯することでHIGH→MED→LOW→ストロボ→SOS→…と繰り返し変化します。多彩なモードを使用できる反面、煩わしさもあります。個人的には、モードメモリなしか、ストロボ・SOSなしでよかったと思いますけどね。タクティカル=ストロボというユーザーや、SOSがついていると心強いというユーザーが多いのでしょう。
▼「MT22A」
「MT22A」は、点灯後に一瞬の消灯を挟んで再点灯すると次のモードに移るオーソドックスなシステム。HIGH→MED→LOW→ストロボ→…の4モード。モードメモリはなく、しばらく放置した後は必ずHIGHからのスタートになります。モードメモリは毎回同じ明るさでしか使わないユーザーには便利ですが、前に使った明るさを覚えていないと不便に感じることもあります。好み次第ですが、モードメモリはない方がいい人も多いかと。
▼「P6X」
LEDLENSERも操作自体は「MT22A」と同じ。一瞬の消灯を挟んでの再点灯でモードが変わります。先述の通り、HIGHスタートとLOWスタートを切り替えることができ、これも便利な機能です。やはりモードメモリはなく、常にHIGHからのスタートになります。ただし「MT22A」と違い、スイッチはフォワードクリッキー。消灯時に半押しすると点灯する、タクティカルな仕様です。
■ランタイム
今回は、比較的ライトユーザーが多い…ライトユーザーといっても、軽いという意味のライトです…。単三電池仕様ということで、ランタイムをテストしてみました。いずれも、最も明るいモードでの勝負です。意外とそれぞれの個性が際立つ結果になりましたよ。
各ライト一斉にスタート(当然ですね)。かなり白とびしている設定で、取り直しが効かないので心配していましたが、結果的にはまずまずでした。
最初の変化は早くも2分後に訪れます。
LEDLENSER「P6X」がさっさと戦線離脱。目視ではMEDモード程度でしょうか。HIGHモードといってもキープされるのは1~2分程度ということで、HIGHモード自体がそういう割り切りなのか、TURBOモード付きHIGHモードという扱いなのかはわかりません…。
この状態のまま、20分以上変化しません。「MT22A」のヘッドの熱さはかなりのもの。火傷するんじゃないの!? と思うような熱さになりますが、さすがにボディは樹脂製なので人肌程度の温もり。一方「MT2A」はヘッド・ボディ共にかなり熱いものの、なんとかじっと触れる程度には止まります。先に明るさを放棄しました「P6X」は、やや暖かい、といった程度でしょうか。
30分の経過で「MT2A」が光量を落とします。光量を落としたもののヘッドの熱さは20分の時とほとんど変わらないように感じます。回路ないし電池が頑張っている感じ。電圧低下時に却って熱くなる現象はさまざまなライトで見られます。
60分時点までは光量を維持していた「MT22A」が、70分時点で光量が落ちてきました。数値で測ればまた違うかもしれませんが、写真を比較する限りでは2分時点とほとんど変わらない明るさを60分まで維持したのは立派だと思います。ヘッドが極端に熱くなり、しかしボディが熱くならない仕様の評価は分かれそう。「MT2A」ほど発熱するとも思わないので、全アルミボディであればもっとぬるい発熱で済んだかもしれません。さっさとMEDモードに移行した「P6X」はこの時点でも平然と光量を維持しています。当然と言えば当然ですが…。
90分時点。「P6X」はマイペースに光量を維持しています。「MT2A」もまだかろうじて点灯はしています。「MT22A」もかなり光量低下。これ以上の逆転はないと思いますので、この時点で観察終了です。
まとめると、
「MT2A」
→345ルーメンのハイパワーを可能な限り維持(20~30分程度?)
「MT22A」
→260ルーメンと控えめながら、1時間維持可能
「P6X」
→ランタイム勝負をする気は無し。長く使うならMEDで。
ということになりそうです。
「MT22A」はこの中で最も新しいので、HIGHモードの設定の違いはあるものの、「MT2A」よりも新しさを感じるランタイムの推移でした。「P6X」は完全に独自路線。HIGHモード400ルーメンを公称時間通り使えると思うと大間違いではあるものの、一般的なユーザーには最も馴染みやすい経過かなという気がしました。「MT2A」はさすがに設計の古さを隠せない感じもします。
単純な優劣ではなく、その時代の流行を反映しているようで面白い。「MT2A」の頃には、初期光量を落とすことなくフラットに維持する仕様がマニアには人気でした。一方で現在では、ANSI規格表示が主流になり「P6X」の仕様はこれに合わせてランタイム表記を稼ぎつつ、仕様時の違和感を軽減する目的に沿ったものかと思われます。
いずれにせよ、この手のランタイム計測は環境や電池の仕様の違いで大きく結果が異なります。メーカーの公称値は、あまり一般的では無いほどの大容量ニッケル水素電池を想定していたり、ANSI規格(10%までの低下時間)や1ルーメンまでなど、独自の下限を設定している場合もあります。ユーザーとしては残念ではあるものの、調べる楽しみもあるかもしれません。とにかく、持続時間は条件を揃えにくく、判断・再現しにくいスペックのひとつということです。
* * *
三者三様に違いすぎて、なかなか優劣をつけにくい感じがします。
「P6X」はちょっとだけ高価なこともあり、また一般受けするフォーカス付きで、誰かにプレゼントにするには一番の候補。質感も非常にいいですし、レンズ部分の赤や、LED周りに描かれたロゴマークなどデザイン的なギミックも充実していて所有欲を満たしてくれます。
「MT2A」は複雑な操作系が気になりますが、ザ・タクティカルライトというオーソドックスな姿やオペレーションは魅力です。マニアが買い足すならオススメできるモデル。
「MT22A」は目新しさが最大の魅力でしょうか。並列配置の単三電池2本は、コンパクト感があり、ホールド感がよく、悪く無いですよ。HIGHモードの連続点灯でもよく維持してくれましたし、ハイルーメン領域での使い勝手は最も良いかと思います。
対決企画なんだから、勝者を決めろよ! という声が聞こえてきそう(笑)。一長一短で決められない、ということはよくありますが、今回はそれぞれの特徴が違いぎて、コレ!と言い切ることができません。ただ、用途やお値段である程度決まってくる部分もあるかな。個人的には「MT22A」が非常に面白いと思いました。(アカリセンター価格:「P6X」5560円/「MT2A」3791円/「MT22A」3402円)
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(文・写真/アカリセンター・HATTA)
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