自動車メディアに関わっていて、「これは役得!」とうれしく思う瞬間があります。それは、一流プロフェッショナルドライバーの方に同乗させていただけること。2016年は、伊豆・修善寺にあるサイクルスポーツセンターで、ニスモのアンバサダーにしてレーシングドライバーの、ミハエル・クルム選手がドライブする日産「GT-R ニスモパーツ装着車」に乗せていたきました。
2017年の合同試乗会は会場を変え、群馬サイクルスポーツセンターで行われました。コースは、前回よりも幅が狭く、舗装は荒れ気味。「このコースで立派な体格のスーパースポーツカーをテストするのは…」と二の足を踏んでいたら、「同乗しますか?」とクルム選手の声。「もちろん!」とふたつ返事で、いそいそと助手席に乗り込みました。
群馬サイクルスポーツセンターのコースは、道幅が限られ、路面はバンピーです。両側からは立木が迫り、「ココで!?」と心配するような区間でも、クルム選手はGT-Rの4輪をスライドさせ、タイトコーナーをきれいにパスしていきます。腕利きドライバーの隣に座っているといつも感じるのですが、運転はスムーズでありながら、総じて緩急の差が激しい。いい換えると、メリハリの付け方にムリがない。うーん、当ったり前ですが、運転がウマい!
やたら気ばかり急いて、カーブのたびにアンダーステアを連発する自分のドライビングスタイル(!?)を思い出して赤面していると、クルム選手が2017年仕様のニスモチューンGT-Rについて話してくれました。「サーキットでタイムを削るような場合なら、前回のクルマの方がいいけれど、こうした荒れたコースでは、今回のクルマの方がいいね」
…またまた筆が先走ってしまいました。ちょっと過去を振り返りますと、前回の合同試乗会でニスモが用意したGT-Rは、2008年の初期型モデルに、2013年ベースの足まわり(+オーリンズの車高調整ダンパー)を与え、さらに機械式LSDを組み込んだ、かなり“攻撃的な”内容でした。
ひるがえって今回のGT-Rは、2017年仕様の純正サスペンションが基本になっています。「ストリートをターゲットシーンとして、扱いやすさを重視した」チューンが施されているのです。街乗り、ワインディング、そして高速道路での快適性を意識した設定ゆえ、群馬サイクルスポーツセンターのコースコンディション下でも、路面の凹凸をいなしながら、気分よく走れるのですね。
当然ながら、試乗車にはニスモの各種空力パーツが装着されていますが、オーナーの心境をおもんぱかって、顔つきが変わらない配慮がされました。それでいて、日産自動車のGT-R開発チームと協業し、ダウンフォースの増加を実現したパーツ群です。ベースのデザイン設計は、スーパーGTのGT500クラスを戦うマシンの空力デザイナーが担当したのだとか。
サスペンション、空力向上に加え、エンジンのチューニングメニュー「S1」や、エンジンとトランスミッションのオーバーホールを含むフルコンバージョンキットも、鋭意開発中です(11月発売予定)。
S1のメニューとしては、エンジンのオーバーホール、GT3マシン用のカムシャフト、スペシャルCPU、ブーストの立ち上がりが好ましい2011年モデルのターボチャージャーなどがメニューに挙がっています。まだ価格は発表されていませんが、あえて「オーナーの方は、いくらくらい用意しておけばいいでしょうか?」とニスモのスタッフの方にうかがったところ、「300万円〜400万円ほどでしょうか」との回答が。
「クルマがもう1台買える!」と驚く向きもあるかと思いますが、一方で「愛車のGT-Rが、フルリフレッシュされて返ってくる」と考えれば、意外とリーズナブル、なのかもしれません。何はともあれニッポンの名車ですから、末永く、大切に乗っていただきたいものです。オーナーの方が、ちょっとうらやましい…。
そして最後にドライブしたのは、2017年の6月にマイナーチェンジした日産「エクストレイル」。好調なSUV市場にあって、日産車中で有数の売れ筋モデルでもあります。
ニスモでも同車のモディファイを手掛けていて「パフォーマンス・パッケージ」を提供しています。
スポーティなエクステリアをさらに加速させるエアロキット(前後左右下部の空力パーツ:25万7040円)、ルーフスポイラー(5万9400円)、ダーククロームフロントグリルセンター(1万9440円)など、全身をNISMO色に染めるキットです。よりスタイリッシュに仕上がるだけでなく、NISMOのレーシングテクノロジーを駆使して、空力特性もアップさせます。具体的には、フロントのダウンフォース向上と空気抵抗の低減。その結果としての直進安定性アップも視野に入っています。
足まわりは「スポーツサスペンションキット」(10万8000円)により約30mmローダウン。精悍なフォルムが強調されます。ホイールには、19インチの専用アルミ(5万1840円/本)がおごられています。
アクティブな日産SUVが、ググッとアグレッシブな印象に。ひと味違うエクストレイルを求める人には、見逃せないキットです。
(文&写真/ダン・アオキ)
[関連記事]
【トヨタワークス“TRD”試乗】「86」もミニバンも空力&剛性アップで走りが変わる!
【試乗】5年分の進化は絶大!NISMO GT-Rの走りにプロも太鼓判
【日産 ノート e-POWER ニスモ試乗】EVなのにクルマ好き納得の楽しい走り!