■鏡面仕上げでつま先とかかとをピカピカに
今の状態でも、乳化性のクリームで色がのっているので十分きれいです。普段のメンテナンスはここまでで問題ないそう。物が映るくらい鏡のようにピカピカにする鏡面仕上げにしたい人はここからが本番です。
10.ワックスをつま先とかかとに馴染ませる
「靴の色に合わせて選んだワックスを、指でつま先とかかとにしっかり塗っていきます。鏡面をほどこしたいところ、つま先とかかとにしっかりと。つま先とかかとは歩いても曲がらないので、シワができません。ですので、ここはワックスをたくさんのせても問題ないんです」
11.水を使ってワックスをなめらかにする
「塗ったワックスを、水を潤滑剤にして円を描くように指を動かしながらなめらかにしていきます。このとき使う布は、綿100%のネル生地。つま先とかかとを集中的にやりつつ、全体もワックスと水で仕上げていきます。ひたすら水とワックスの繰り返し。ここが全体の中で一番時間がかかります」
12.履きジワのワックスを散らす
「全体にワックスをのせると履きジワにワックスが残ってしまうのできれいにします。鏡面仕上げのつま先とかかとには当たらないように気をつけて」
13.ヤギ毛ブラシで甲やサイドを整える
「とても毛が柔らかいヤギ毛ブラシを使って、甲やサイドの部分を整えます。鏡面仕上げ以外の部分を、少し水をつけて仕上げていきます」
14.水で鏡面を仕上げる
「布のきれいな面を使って、鏡面にしたところを水で整えます。ワックスを馴染ませている時は円を描くように指を動かしていましたが、ここは上下に直線的に。これでよりムラをなくし、光の粒を揃えてあげます」
15.ソールオイルを塗る
「最後にソール用のオイルをソールのレザーの部分に塗ります。レザーソールの箇所のみ。修理をしていてソールがラバーの場合は、この工程は必要ありません」
靴の状態によって変わりますが、靴磨きには通常45分~1時間程度かかるそう。それにしてもピカピカに仕上がりました。おしゃれをして素敵な場所に出かけたくなりますね。これは確かに履くとテンションが上がる!
■道具さえ揃えれば自宅でも靴磨きは可能
――靴磨きを一通り見せていただき、ありがとうございました。どのくらいの頻度で靴は磨いたらいいのでしょうか?
「8~10回履いたら一回、クリーナーとクリームでお手入れをするのがベストだと思います。同じ靴を毎日履くわけではないので、大体一週間に一回履けば二カ月ごとにお手入れ、というかんじですね。プロにまかせた方が安心ですが、道具さえ揃えれば自分でもできます。鏡面仕上げは難しいですが、お手入れまででも十分。クリームで補色できるので、色も補えます」
「靴磨きはこだわる方はこだわるので、アイテムを揃えている人は多いですよ。義務でやるというより、楽しみとしてやっている方が多いです」
なんと! 靴がきれいになるうえに、楽しいなんて最高ですね。自分で磨くと、きれいになっていく様がより実感できて、靴にも愛着が湧きそう。年に一度、半年に一度などはプロにお願いして、普段のメンテナンスは自分でするというのも手ですね。
今回伺った「ブリフトアッシュ青山」は、靴をきれいに仕上げるだけでなく、長く愛用できるようお手入れにも力を入れている、靴の魅力を最大限に引き出してくれるお店です。バーのようなカウンターで目の前で靴を輝かせてくれるカウンタースタイル(4320円*シニアクラス職人の北見さんにお願いする場合は+1080円)と、宅配でのデリバリースタイル(3日目以降は3560円、一週間以降は3132円)を行っています。
――お客さまはやはり男性が多いのですか?
「9割は男性のお客さまです。色落ちしたり味が出たりと、ものが変化していく様子を楽しむのは男性の方が多いですからね。靴も変化するものなので」
営業で身だしなみに気を遣っている人や、靴にこだわりを持っている人が多いそうですが、大切な商談やプレゼンの前などに来るお客さまもいるそうです。
――靴がきれいだとテンションが上がりますよね。
「履いている人にとっては、きれいな靴だと気持ちがいいです。気分が上がりますよね。靴にとっては長持ちするというメリットがあります」
なるほど。靴がきれいなことは、本人にも靴にとっても良いことなんですね。まさに、靴磨きをすることはいいことづくし!
何か幸せを運んできてくれそうな、縁起の良いきれいな靴。大切な仕事の前など、「ここぞ!」というときは気合を入れてピカピカの靴で挑みたいものです。
>> ブリフトアッシュ青山
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