用意したのはリーフに次ぐ電気自動車の日産「e-NV200」。e-NV200は最大1500Wまで電源供給でき、1000W給電を8時間できる実力を備えています。BARまわりの電源だけなら全然余裕。一晩遊んだにも関わらずe-NV200のメーター内にあるインジゲーターで2目盛り、残航続可能距離で16km分しか電気を使いませんでした(写真上が使用前、下が使用後になります)。
今回のキャンプで外部給電付きのクルマを使って感じたのは、単にキャンプが楽しく快適になるだけでなく、予期せぬ自然災害があったときにとても役立つかもしれないいうことです。ご存知の方もいると思いますが、トヨタ「エスティマハイブリッド」には早くから最大1500Wまで使えるAC100Vコンセントがついていました。そして東日本大震災発生時、この給電機能が大変役立ったと言います。
そこで“防災”という観点から外部給電機能付きのクルマがどう役立ちそうか、考えてみました。
電気自動車、ハイブリッド、プラグインハイブリッドの◎と△
1.排ガスを出さない【電気自動車】は災害時もメリットに
ご存知のように電気自動車は電気を車載リチウムイオン電池に蓄電し、その電力で走ります。走行中は回生ブレーキで発電するものの、停車中は自分で発電しないため、使える電気はリチウムイオン電池に貯まっている電気量により左右されます。
■ココが◎
そもそもエンジンがないので、外部給電する際に排気ガスを出さない。車両のパワースイッチがオフ状態でも電気を使える。
■ココが△
電気がなくなると走行不能になるため、満充電状態でも残電気量が気になる。
排気ガスを出さないというメリットは、防災の観点からもとても大きいと思います。災害が発生したときでもマフラーの向きを気にせず電気を使えますし、場合によっては緊急時の処置として屋内に車両を持ち込んで給電できる可能性もあります(メーカーは推奨しないでしょうが)。
また自宅にクルマを停めていた場合、電力供給システム“Leaf to Home”を設置していれば電力供給が寸断されてもクルマ自体をバックアップ電源として使い、住宅に電力供給することが可能です。
ちなみに電気を使いすぎて走行不能になることを回避するために、e-NV200には残電気量が設定以下になると外部給電を自動停止する機能がついています。
2.気軽に使え、電気切れの心配もほぼない【ハイブリッドカー】
自ら発電した電気を車載電池に蓄電。その電気とガソリンを併用して走るハイブリッドカー。外部給電機能があるクルマとしてはもっともポピュラーと言えそうです。
■ココが◎
クルマ自身が発電してくれるので、燃料がある限り、電気が使えなくなる心配をしなくていい。
■ココが△
外部給電を行うためにはハイブリッドシステムを起動させておく必要がある。
外部給電という観点から見た際、ハイブリッドカーは“移動可能なジェネレータ”というイメージです。電気自動車に比べると車載電池に貯められる電気量が少ないので、発電のためにエンジンを回転させながら使います(もちろんエンジンが停止する時間もありますよ)。
実は震災以前、ハイブリッドカーで最大1500Wの給電機能が備わっていたのはエスティマハイブリッドと初代アルファードハイブリッド(写真上)だけでした。他のハイブリッドカーにこの機能が採用されなかったのは、排ガスを出しながら電気を使うのが環境によくないからだったそうです。
ただ、災害時はそんなこと言ってられません。ユーザーからも給電機能搭載を熱望する声が上がり、現在はエスティマ、アルファード/ヴェルファイア、シエンタ、プリウスなどで標準装備またはオプションで選択できるようになっています。
3.【プラグインハイブリッド】は電気自動車とハイブリッドのいいとこ取り
ハイブリッドカーでありながら、直接外部電源から充電できるプラグインハイブリッドカー。大容量バッテリーを搭載しているため、エンジンを回さなくても電気を使える時間が長くなります。AC100VコンセントはプリウスPHVがメーカーオプション、アウトランダーPHEVは最上級グレードに標準装備、その他のグレードでメーカーオプションです。
■ココが◎
エンジンを始動しなくてもバッテリーの電気を取り出せる。バッテリーが空になってもエンジンで発電可能。
■ココが△
ハイブリッドカーに比べて高価。
アウトランダーPHEVのメーカー公表値を見ると、満充電状態ならバッテリーだけで一般家庭1日分の電気が給電でき、エンジン発電も組み合わせると最大一般家庭10日分の給電が可能とのこと。これは災害時にも心強いスペックです! 今回のキャンプでe-NV200を使い、給電時に排ガスを出さないことの快適さを痛感しました。EVとハイブリッドカー、両方のメリットを持つプラグインハイブリッドは、防災の観点からも究極のバッテリーと言えます。
クルマ以外の給電手段にも注目を!
外部給電はクルマ以外から。防災面ではこのような考え方もできます。それがジェネレータを使う方法。ただ、万が一の備えとしてガソリンを燃料に使うジェネレータを常備しておくのは現実的ではないかも。そこで、次の2モデルに注目しました。
■ホンダ「エネポ」EU9iGB 11万8800円
カセットコンロ用のガスボンベを燃料に発電できる発電機。燃料がホームセンターなどで簡単に手に入る上、取り扱いも簡単。カセットボンベ2本で最大2.2時間運転可能。AC100V用コンセントは2口ついています。乾燥重量:19.5kg。
エネポの全高は524mm。N-BOXのような軽自動車にもさくっと積めちゃうサイズです。
■オートモーティブエナジーサプライ「ポーチク」 25万9200円
日産リーフに搭載されるリチウムイオンバッテリーを使ったポータブル蓄電池で、容量は約1000Wh。満充電で消費電力30Wの冷蔵庫を最大約14時間、消費電力60Wの液晶テレビを最大約8時間動かせます。排ガスを出さないから屋内使用も可能。本体質量:18kg。
小型キャリーバッグを転がす感覚で持ち運べます。容量が約2000Whあるポーチクビッグ(45万3600円)もラインナップ。
防災グッズを用意する場合、大切なのは“常に使える”状態にしておくこと。“常に使える”とは、「道具として機能する状態にしておく」「緊急時でも落ち着いて使えるように使い方をマスターしておく」というふたつの意味があります。
今回紹介したものは、クルマを含めて普段使いできるものばかり。日常使用で使い方をマスターし、使い終わったらいざというときのために万全の状態にしておく。いざというときのために、きちんと備えておきましょう!
(文・写真/高橋 満<BRIDGE MAN>)
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