■自動車メーカーは、クルマが持つ楽しさを忘れていないか!?
オートポリスに用意されていたのは、LUXGENのU6。サイズ的には日産エクストレイルの全高を低くしたものを想像してください(エクストレイルが1740mmなのに対し、U6は1620mm)。標準モデルとなるU6 GTと、スペシャルモデルのGT220がラインナップとなります。搭載エンジンは1.8Lツインスクロールターボで、最高出力と最大トルクははU6 GTが202ps/5200rpm、32.6kg-m/2000rpm、U6 GT220が222ps/5200rpm、33.6kg-m/2000rpm。駆動方式はFFのみの設定です。
U6は2013年にデビュー。2015年4月に最初のマイナーチェンジ、そして2017年に2度目のマイナーチェンジを行いました。水野氏は2015年のマイナーチェンジから関わっていますが、スケジュールを考えると本格的に関わっているのは今回のマイナーチェンジからと言えるでしょう。
水野氏は今回のマイナーチェンジで、フルモデルチェンジに匹敵する変更を行ったと言います。エンジン、トランスミッション、ブレーキ回り、シートやモニターなどを刷新。アクセルやサスペンションジオメトリーも大幅に変更されています。タイヤも今回、U6のために専用開発したものを履いています。なぜマイナーチェンジでここまでやるのか。水野氏は「楽しさ」を追い求めた結果だと話します。
「僕がこのクルマで追いかけているのは日本車ではない。欧州のトップブランドです。自動運転や環境問題に直面したとき、多くの人はクルマに面白さを感じなくなっている。クルマを単なる道具としか見ていない。でも僕はそれは違うと思う。クルマは自由に、時間や場所を楽しめる商品でなくてはならないし、本来はライフスタイルの中でエモーショナルな道具だったはず。それがいつのまにか冷たい道具になってしまった。僕はそこに危機感を抱いている。LUXGENで僕が追いかけるのは“楽しさ”。走る楽しさをどうやって作るか。自動運転や環境問題に取り組むのは当たり前。その上でどう楽しさを盛り込むか。U6でそれを表現しています」
そして走る楽しさを追求するため、水野氏が開発コースとして選んだのがオートポリスでした。裕隆グループでは台湾に日産と同規模のテストコースを所有しています。なのになぜオートポリスなのか。水野氏はオートポリスこそがテストではなく市販のSUVを開発する場所としてもっとも適しているからだと言います。
アップダウンが激しく、ヘアピンやブラインドコーナー、さらに荒れた路面や山岳路に近い道もあるオートポリスは、SUVの開発に適しているというのが理由です。LUXGENの開発チームはオートポリス内に部品の加工場やショックアブソーバーのチューニングラボを設置。フィードバックをすぐさま車体に反映できる体制でテストに臨んだそうです。「U6の開発体制はGT-Rのとき以上ですよ」と水野氏は胸を張ります。そしてこれらは来るべき自動運転社会にとっても欠かすことのできないもの。自動運転には多くのセンシング技術や使われますが、それらが協調してクルマを正しく制御するためには、クルマの高い限界性能が求められると言います。
「たとえばブレーキ。自動運転では機械が自動でブレーキをかけますが、もしブレーキがフェードしてしまったらどうするのか。クルマは人が命を預けるものです。だからこそ僕は機械に制御を頼れば頼るほど、限界域での運動性能が重要だと考えています」
開発には、鈴木利男選手や田中哲也選手など、全日本GT選手権で活躍したドライバーも参加しています。