【トヨタ ランクル プラド試乗】デザイン一新でより力強く!驚異の走破力に安全もプラス

■その道のプロが太鼓判を押すプラドの構造

「突然スキーに目覚めた」とか、「週末はカヌー三昧に」、はたまた、「荒野に分け入って冒険がしたい!」と一念発起。普通の乗用車や最近のSUVからプラドに乗り換えた人は、初めのうちは「なんとも古くさい運転感覚だな」と感じるかもしれません。ステアリングはなんだかダルで、上屋は時にユラユラし、路面の状態によってはお尻が左右に揺すられることも…。

これまでランクルファミリーを乗り継いできた方には「いわずもがな」ですが、実はそのフィールにこそ、プラドを購入する理由が隠されているのです。

昨今、名うてのオフローダー/SUVメーカーが、自社のクルマに次々と乗用車風のモノコックボディを採用する中、プラドは頑固にセパレートボディを守っています。強固なラダーフレームを骨格として、その上に5ドアボディを載せ、下には、フロント:ダブルウイッシュボーン、リア:リジッドのサスペンションを吊る。「クロカン4駆は、こうじゃなくっちゃ!」と、その道のプロが太鼓判を押す構造です。

例えば、岩場など極端な凹凸がある場面では、頑丈なラダーブレームが大事な“内蔵部分”を守ってくれます。左右の車輪をつないだリジッド式のリアサスペンションは、車体が左右に大きく傾く状況でも、しっかりと路面とのクリアランスを保ちつつ、強力なトラクションを伝え続けます。全くタフで、頼りがいのあるつくりです。ランクルファミリーが活躍している東南アジア、中東や北アフリカ、そして南米などでは、まだまだ、このシンプルで、打撃にも強いプラットフォームが求められているのです。

駆動方式は、トルセン式LSDを内蔵したセンターデフを持つ、いわゆるフルタイム4WD。通常は、前:後=4:6に駆動力を分配し、自然なコーナリング感覚を提供します。ちなみに、TZ-Gはリアにもトルセン式LSDが装備され、より確実なトラクション性能を実現しています。頼もしいですね。

さらに、本格派モデルらしく、プラドは副変速機を備えています。オンロード主体の日常では「H4」レンジに入れたまま。いざ、手強いオフロードを行く際には、センターコンソールのダイヤルを回して「L4」レンジにする。つまり、ギヤ比を低くして、力強くジリジリと進むことができます。どうしてもタイヤが滑ってしまう泥濘地などを行く時は、センターおよびリアのデフをロックすることも可能です。

こうした基本構造&機構を備えた上に、各種電子制御が搭載されます。例えば、副変速機切り替えダイヤルの上に設けられた“マルチテレインセレクト”ダイヤル。コレには「滑りやすい路面」、「土と石が混じった路面」、「岩石の多い路面」など、5種類の路面状況に応じた走行モードが用意されます。パワーの出方、トラクションコントロール、ブレーキなどの特性を状況に応じて変化させ、悪路での走破性を向上させる、いわばプロのノウハウが詰まった電子制御システムなのです。

冒頭で紹介したセーフティセンスPも、先進のテクノロジーです。主な機能としては、単眼カメラとミリ波レーダーで前方を監視し、他車や歩行者との衝突を、可能な限り回避したり(プリクラッシュセーフティシステム)、前走車との車間距離を保ちつつ走ったり(レーダークルーズコントロール ブレーキ制御付き)することができますし、車線からの逸脱を警告(レーンディパーチャーアラート)するほか、ヘッドランプのハイ/ロウを自動で切り替え(オートマチックハイビーム)てもくれます。運転支援、予防安全、そして衝突時の安全性を、セットで向上させてくれるわけです。

今回試乗したTZ-Gの運転席に「ヨイショ!」とよじ登ると、前方の視界が開けています。ボディサイズは、全長4825mm、全幅1885mm、全高1835mmと立派な体格ですが、意外と市街地でもなんとかなるものです。四角いボディで車両感覚がつかみやすい上、思いのほかステアリングが切れるので、むやみに切り返しを繰り返さないで済むのです。進むルートが限られる岩場で鍛えられたクルマだけのことはある!? と、想像を膨らませるのも楽しいかも。

フロントに積まれた2.8リッターのディーゼルターボは、最高出力177馬力、最大トルク45.9kg-mを発生。車重が2320kgもあるので、さすがに「機敏かつ軽快に走らせる」というわけにはいきませんが、必要十分以上の力強さでプラドをひっぱります。排ガス中の気になる微粒子は“DPR触媒”で絡め取り、NOx(窒素酸化物)は“尿素SCRシステム”で無害化する、クリーン化に配慮したディーゼルユニットです。

かつては、大流行していた三菱「パジェロ」との類似性を揶揄されることもあったプラドですが、代を重ね、今ではランクルの弟分として、たくましく成長しました。3列シートモデルなら、ファミリー向けのミニバンとは一線を画したピープルムーバーとしても活用できるランドクルーザー プラド。気持ちの上だけでも、荒野を目指してみてはいかがでしょう?

<SPECIFICATIONS>
☆TZ-G
ボディサイズ:L4825×W1855×H1835mm
車重:2320kg
駆動方式:4WD
エンジン:2754cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:177馬力/3400回転
最大トルク:45.9kg-m/1600〜2400回転
価格:536万3280円

(文&写真/ダン・アオキ)


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